第38話 どろんこ遊び
燐火ちゃんの元に戻ってから二日が経過した。
十分休憩出来たから元気いっぱいだ!
今日は燐火ちゃんと一緒にお出かけしたいなぁ。
「燐火ちゃん、お出かけしようよ」
「今日はもともとお出かけする予定だよ」
「魔法少女としての使命に目覚めたの?」
「それはないよ。わたしは大魔導士なので!」
「残念……それなら、誰かと遊びに行くの?」
「陽翔お兄さんに誘われているの。健斗君と翔太君も一緒だよ」
陽翔お兄さん?!
この前リップリアに操られていたけど、いつ戻って来たのだろう?
無事に返却されたなら良いのだけど、まだ操られていたりしないよね?
「陽翔お兄さん達と何をする予定なの?」
「どろんこ遊びだよ! 楽しそうだよね!」
燐火ちゃんがはしゃいでいる。
どろんこ遊び?
燐火ちゃんはどろんこ遊びするんだ。
陽翔お兄さんが誘ったのが意外だなぁ。
大人でもどろんこ遊び誘うんだね。
どろんこ遊びなら僕にも出来そうだな。
そうだ!
魔法王国アニマ・レグヌムのお城を作ろう!
今まで僕のおうちの事を教えた事はなかったからね。
作るのはちょっと難しいけど頑張ってみよう!
僕は燐火ちゃんに連れられて紅鳶町の体育館に向かったーー
シュイーン、キュイーン……
体育館内では甲高いモーター音が鳴り響いていた。
僕の眼前で飛び回る物体は……ドローンだよね?
燐火ちゃんが言ってたどろんこってドローンの事だったの?
どろんこ遊びではしゃぐなんて可愛いなぁなんて思っていたのにね……
公園の砂場に向かわなかった時点で気付くべきだったよね。
「さぁ、今日は僕のドロン子ちゃんを貸してあげるからね」
陽翔お兄さんが燐火ちゃん達に小型のドローンを配って操縦方法を教え始めた。
何で紛らわしい呼び方するんだよ!
ドローンの事をドロン子ちゃんなんて呼ばないでよ!
でもドローンで遊ぶなら、僕の出番はないかな。
ドローンの操縦は出来ないからね。
燐火ちゃん達が操縦に慣れた所で、陽翔お兄さんがコースの説明を始めた。
どうやら、この後レースをするようだ。
楽しみだな、誰が勝つのかな?
「しっかりコース説明を聞いてね。テプちゃんも頑張るんだから」
何故か燐火ちゃんにコース説明を聞くように言われた。
僕のアドバイスが必要なのかな?
燐火ちゃんはどうしても勝ちたいんだね?
それなら頑張らないと!
陽翔お兄さんがコース説明を終えた後、4人分のドローンをスタートラインに置いた。
そして……燐火ちゃんが僕を抱えてスタートラインに置いた。
何故かドローンと並ばされた僕……えっ?!
「スタート!」
陽翔お兄さんの号令と共にレースが始まった。
良く分からないけど、僕も慌てて走り出した
なんなのおおおおおお!
出遅れたので、今のところ僕が最下位だ。
一人づつ追い抜く必要がある。
僕の前で蛇行している青のドローンは翔太君の機体。
「先ずは一人! 完走目指して頑張れ!」
「何でだ?! 真っすぐ飛んでくれぇー。ビリは嫌だー」
僕は翔太君の機体の下を走り抜けた。
翔太君のビリは確定だろう。
可哀そうだが勝負は非情なものなのだよ。
最初のコーナーを曲がった後の直線で燐火ちゃんの赤い機体に追いついた。
「テプちゃん速いね。追いつかれるとは思わなかったよ」
「勝負だよ燐火ちゃん」
「私を追い抜けるかな?」
燐火ちゃんが僕に抜かれない様にブロックを始めた。
そんな妨害に負けるか!
僕は反復横跳びで左右に動いて揺さぶりをかけた。
燐火ちゃんも頑張ったが、空中で反転するドローンより、地面に足をつけて動く僕の方が機敏に動ける。
左右に動いて失速した燐火ちゃんの機体をサクッと追い抜いた。
「ああああっ! テプちゃんに追い抜かれた!!」
「僕を参加させたのが間違いだったね。僕は魔法王国アニマ・レグヌム最速の妖精なんだよ!」
「くやしいいいいい」
燐火ちゃんが悔しがっているが、もう遅い!
次は……健斗君か!
「追いついてきたか! でもここでレース終了だ! この先はリング区間だからな!」
健斗君の白いドローンが空中に設置されたリングを潜り抜けていった。
陽翔お兄さんが説明していたな。
この先は空中のリングを次々にくぐって進む区間。
飛行出来ないと先に進む事は出来ないからレース終了だと思うよね。
それは甘い考えだよ健斗君。
僕は魔法の力で飛行し、リングを次々に通過していった。
「ウサギが飛んだ?! あっ!!」
驚いた健斗君がミスをしてリングを潜り抜けられなかった。
慌てて後退してリングをくぐろうとしているが、僕に追いつく事は出来ないだろう。
「ただのウサギじゃないから! 僕は魔法王国最速の妖精だもん!」
「そんなの聞いてないよおおおおお!」
悔しがっている健斗君の機体を置き去りにしてゴールを目指す。
あとは……陽翔お兄さんだけだ!
「テプちゃん速いね。でも僕は追い抜けないよ」
陽翔お兄さんの紫の機体が連続するコーナーを次々に抜けていく。
ブロックなどせず、純粋に最速のラインを通過している。
速さに自信があるって事か?
でも、僕も負けない!
普段は魔法力を温存して飛行しないけど、今日は全力だ!
直線の速度は僕の方が上なんだよ!
僕は徐々に差を詰めて陽翔お兄さんの機体の真後ろにピッタリくっついた。
「追い抜かれそうだな。でも、ここから先は簡単じゃないよ」
「それでも負けないから!」
障害物ゾーンに突入した途端、陽翔お兄さんの機体との差が開いていった。
リングをくぐるだけなら簡単だったけど、複雑な形状の障害物を避けるのは難しい。
だけど、陽翔お兄さんはコースを熟知しているからなのか、スムーズに攻略している。
ゴール前最後の直線。
ここで追い上げないと!
「ぬ~ん!!」
僕は全力で飛んだが、後少しの所で負けてしまった。
悔しいな……
「テプちゃん速い! 凄かったよ!!」
燐火ちゃんが僕を抱えて喜んだ。
陽翔お兄さんに負けて悔しかったけど、燐火ちゃんが喜んでくれたから良いかな。
最初の想像とは違ったけど、これはこれで良かったかな。
楽しく過ごせたからね!




