表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/149

第24話 魔力に込められた想い

 今日はしず子さんに会う為に、一人でしず子さんの自宅まで来た。

 この前の詩音さんの件とか、色々聞きたい事があったからだ。


「いらっしゃい~」

「まぁ、そこに座れや」


 しず子さんとオハコが出迎えてくれたので、座布団に座った。


「俺様は昼寝をするから」

「オハコは話をしないのかい?」

「そういうの苦手だって知ってるだろ? 俺様は敵を倒してスカッとするのが好きなんだよ」


 オハコがぷいっと反対を向いて座布団に寝ころんだ。


「はいっ、テプちゃんはジュース飲めるかなぁ~」

「大丈夫です」


 僕はしず子さんが飲みやすいようにお皿で出してくれたジュースを舐めた。


「今日は何を聞きたいのかな~?」

「この前の詩音さんはどうなったのですか?」

「昔と同じでただのパシリだったわよ~」


 パシリ?

 しず子さんが言うと違和感が凄いな。


「えっと……結局犯人だったのですか?」

「そうよ。でも利用されていただけね~。あの小悪党に呪具を扱う才能はないですからね~」

「それなら真犯人は捕まっていないのですか?」

「手がかりはないですね~」


 そろそろ本題に入ろうかな。

 しず子さんの魔力に込められていた想いについてだ。

 エジプト展の事件も気になる事だったが、魔法王国の妖精としては、魔法の事の方が重要なのだ。


「しず子さんの魔法は……何でそんなに必死なんですか?」

「必死ですか? ケガが治って欲しいからですよ」

「言いづらいけど、しず子さんの魔力に殺伐とした感情がこもっているのを感じた。悲壮感すら感じる程の必死さは何でなのかなと思って……」

「そいうのも分かっちゃうんだ……」

「僕は魔法王国の妖精だから。そういうのを感じ取る力があるんだ」

「必死なのは誰も死なせたくないからよ。私達は昔、蒼真(そうま)の両親を死なせてしまったから……」


 しず子さんが昔の事を教えてくれた。

 幼馴染だったしず子さん、陽翔(はると)お兄さん、纏蝶(てんちょう)さんの三人の学生時代に起きた事件の事を。

 しず子さん達は纏蝶(てんちょう)さんの実家が魔の物を集める収魔師(しゅうまし)である事を知っていた。

 ある時、しず子さんは纏蝶(てんちょう)さんから聞いた魔道具の回収を手伝おうと提案した。

 纏蝶(てんちょう)さんは(おび)えて嫌がったが、しず子さんと陽翔(はると)お兄さんの二人が押し切った。

 しず子さんは腕っぷしに自信があったし、陽翔(はると)お兄さんは頭が良いので問題が起きても解決出来ると思っていたからだ。

 だが、回収に向かった魔道具が生み出した魔獣は学生三人の手に負える物ではなかった。

 結局、駆けつけた纏蝶(てんちょう)さんの両親に助けてもらったのだ。

 二人の命と引き換えに……


「今ので分かったかしら? 私が魔法に込めた思い。私は自分の甘さが許せないの。だから殺意を込めてしまう……(いや)しの魔法なのにね。必死になるのを抑えられないのよ、目の前で親しい人が死んでいく姿を目の当たりにした時から……」

「ごめんなさい。辛い思い出を話させてしまって……しず子さんは強いのですね」

「弱いわよ。私は何もしてこなかったから。魔法少女に選んでくれなかったら、今も何もせずに生きていたと思うわよ」

「本当は纏蝶(てんちょう)さんの手伝いをしたいのでは?」

「手伝えないわよ。蒼真(そうま)は本当に強くなった。昔は私より華奢(きゃしゃ)だったのにね。今は筋肉モリモリで強そうでしょ?」

纏蝶(てんちょう)さんが強いから手伝えないのですか? 陽翔(はると)お兄さんは手伝っていましたけど」

陽翔(はると)は図太いからよ。私には出来ない。蒼真(そうま)の姿を見たでしょ」

「……凄い姿ですよね」

蒼真(そうま)はね、お母さんの真似をしているのよ。立派な収魔師(しゅうまし)だったからね。それが私には辛くてね。私が死なせた蒼真(そうま)の大切な人の姿だから」

「そうだったんですね。初めて会った時は服装と話し方が独特でビックリしました」

「お母さんの真似なんてしなくて良いのにね」

「真面目な人なんですね、纏蝶(てんちょう)さん」

「そうなのよ。だから私は彼の人生を歪めてしまった自分が許せないの」


 僕には返せる言葉が無かった。

 しず子さんに思い詰めて欲しくはなかった。

 纏蝶(てんちょう)さんが必死に頑張っているなら、しず子さんが支えてあげれば良いと思っている。

 でも、部外者の僕が言っても伝わらないだろうなぁ……


「ごめんなさいね~。こんな話をしてもテプちゃんが困るだけよね~」

「大丈夫です。困ってはいないです。今日は色々聞かせてくれて、ありがとうございました!」

「どういたしまして~」


 しず子さんの魔法が、奇跡の回復力を誇る『(いや)しの水』になった理由が分かったよ。

 過去の辛い経験が理由だったんだね……

 そして変身ブローチに付けられている纏蝶(てんちょう)さんからもらったお守り。

 あれがオハコの魔力を越えた力を発揮させているのは間違いない。

 纏蝶(てんちょう)さんは古いものだって言っていたけど、最新の物に変えたらもっと凄い事になるのかな?


 あと、ついでに(じょう)さんの事も聞いた。

 糸園家の人は昔から寄生虫と共存している家系だそうだ。

 (じょう)さんに取り付いているアニサキスのサキちゃんだけでなく、(じょう)さんのお父さんに取り付いているサナダムシのサナちゃんもいるそうだ。

 文字の形になることで意志の疎通が出来るらしい。

 寄生虫が普通に生活しているなんて……どうなっているんだ、この町は!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ