第21話 最悪なデート
スフィンクスと少し変な人が現れた時は焦ったが、町内会主催のエジプト展見学会は無事に終わった。
翌日の放課後。
僕は昨日のエジプト展の話で盛り上がると思っていたが、燐火ちゃん達は別の話題で盛り上がっていた。
話題の中心は……陽翔お兄さんのデートだった!
これは一大事だ!
どうやって入手したのか分からないが、翔太君の情報ではこの後に喫茶店に来るらしい。
僕達は早速デート場所である喫茶店に向かった。
増子さんの喫茶店について窓から覗くと、陽翔お兄さんが若い女性と座っているのが見えた。
陽翔お兄さーん!
一応怪盗なんだからさ、小学生に足取りをつかまれないでよ!
僕は中が良く見える様に窓の外に張り付いた。
こういう時こそ、小動物の腕の見せ所だね!
「何してるのテプちゃん? 早く入ろうよ」
燐火ちゃんに声をかけられた。
早く入ろうよ?
何を言ってるのだろう?
疑問に思って、みんなの方を見ると……入店してる?!
健斗君と翔太君は既に入店していた。
「ちょっと! 普通に入ったら見つかっちゃうよ!」
「何で見つかっちゃいけないの?」
「見つかったら気まずいよね?」
「大丈夫だよ! いつも通り」
僕は燐火ちゃんに抱えられて入店した。
確かに増子さんと待ち合わせする時に来ているから、ある意味常連ではあるけどさ……
「増子はまだ帰ってきていないわよ。いつもの席で良いかしら?」
「はいっ。待たせてもらいます」
増子さんのママさんに案内されて、いつもの席に集まった。
もう陽翔お兄さんにバレているだろうな。
陽翔お兄さん達は先に料理を注文していたのだろう、陽翔お兄さんのテーブルの上にナポリタンが二人前運ばれた。
「わぁ~。こんなの初めて~」
ポニーテールの可愛らしい女性が大げさに言った。
「そうか! 喜んでもらえて良かったよ!」
陽翔お兄さんは女性に喜んでもらえて嬉しそうだ。
楽しそうだから邪魔しちゃいけないよね……そう思っていたのは僕だけでした。
「ナポリタンを食べた事がないなんて……お姉さん可哀そう……」
「だっせぇ。大人のくせにナポリタン知らねえって」
「私は本場しかしらないから、ナポリタンなんて初めてって嫌味の可能性もありますよね」
燐火ちゃんと健斗君と翔太君は辛辣だな。
「な、なんだお前ら!」
ん、今何か言いましたか?
凄く汚い言葉が聞こえたような……
「どうしましたか? 詩音さん?」
「えっ、何でもないですよ陽翔さん。この子たちは知り合いですか?」
「近所の子供達だよ。燐火ちゃんと健斗君と翔太君。ゲーム好きの小学生なんだ」
「みんな宜しく。これから長い付き合いになるかもしれないわね」
詩音さんが握手をしようと手を差し出したが、誰も手を取らなかった。
「長い付き合いなどない。大魔導士を相手にして、次があるとでも?」
「世界の半分を渡すってやつか? 初めて言われたぜ」
「敵なんですよ僕達は」
燐火ちゃん達が更に過激な発言を始めている?!
陽翔お兄さんのお見合いを邪魔しちゃ駄目でしょ!
知らないお姉さんに陽翔お兄さんを取られたくないのは分かるけどさ。
「僕はアルタロネクタネブ・アバ・センタンクトロルテプ6世です。宜しく詩音さん」
僕は前足を差し出した。
「何で動物が喫茶店にいるのよ! 店員さん!」
詩音さんが増子さんのママを呼び出した。
なんでぇー?
僕は仲良くしようとしたのに!
詩音さんは僕がいる事について文句を言っているが、増子さんのママは妖精だから問題ないって丁寧に説明をしてくれた。
「ふん、まあ良いわよ。あれっ、このフォーク重たぁ~い。私、箸より重いものを持ったことがないのよね」
詩音さんが可愛い声で言った。
だけど、もう可愛いとは思えないよ。
性格悪すぎないかな?
燐火ちゃん達は最初から見抜いていたのかなぁ。
そう思っていたら、燐火ちゃん達が詩音さんの揚げ足を取りを始めた。
「箸より重い物を持った事がないって嘘ついてるよ」
「その通りだよな。米粒一つ摘まんだだけで箸より重くなるもんな」
「非力過ぎますね。お姉さん、どうやって生きてきたんですか?」
「このクソガキがああああっ!」
詩音さんが振り向いて怒鳴った……しず子さんに向かって。
つい先ほど来店したばかりのしず子さんが、僕達のテーブルに来ていたのだ。
「あらあら~、詩音さんではないですか~」
「ゆ、癒羅先輩……」
えっ、二人は知り合いなの?
詩音さんがガタガタと震え出した。
「クソガキって、どういう事かしらねぇ~」
「誤解です! 癒羅先輩の事ではないですから!」
「私でなければ、誰の事かなぁ?」
何故か笑顔で話しを続けている、しず子さんから恐怖を感じる。
「すんませんでした~」
詩音さんが情けない声を上げて喫茶店から出て行った。
「相変わらず趣味が悪いのを連れているわね?」
しず子さんが詩音さんが去った後の椅子に座った。
「そうかな? 結構好きだったけどな。僕の為に必死に可愛い振りしてるところとかさ」
「貴方も趣味が悪かったわね」
「お互い様さ。詩音さんが帰った事は気にしなくて良いよ。僕もあんまり気にしてないからさ」
陽翔お兄さんが僕達に向かってひらひらと手を振った。
「うん」
「当然だな」
「さて、任務完了ですね」
燐火ちゃん達が満足げに頷いた。
今日の戦いは激しかったなぁ。
いつも通り、僕は何もしてないけどーー




