最終話 燐火ちゃんを倒すのだ!
「テプ君! 広域魔法で敵の主力を叩いて! 急がないと敵の魔導士がくるよ!」
芽衣子ちゃんから指令が来たのだ。
敵の魔導士か……このタイミングで攻めてくるのは燐火ちゃんしかいないよね。
芽衣子ちゃんとの約束通り冥王軍に所属したからね。
燐火ちゃんと敵対することもあるのだ。
今のうちに敵の軍勢を倒しておかないとね。
燐火ちゃんは手強いから。
「了解なのだ! 蹴散らせ! 珊瑚刺火!!」
カタカタカタカタ。
目の前のキーボードが僕の意思通りに動き出す。
纏蝶さんが持ってきてくれたゲーミングパソコンが高性能で快適なのだ。
今まではキーボードを自由自在に操作出来なくて燐火ちゃんと一緒に遊べなかったけど、指で押す力を手に入れたから一緒にパソコンゲームが出来るようになったのだ。
王様の仕事があるから、すぐに燐火ちゃんに会いに行けないけどネットゲームなら毎日遊べるのだ!
さぁ、敵を倒すのだ。
僕の分身!
テプ・グランデ!
僕の操作するキャラクターが詠唱を終えると、炎の花弁が敵の軍勢に襲いかかった。
「敵を減らしたよ冥王様! 次はどうする?」
「油断しすぎ!」
芽衣子ちゃんのキャラクターが僕のテプ・グランデを攻撃した。
えっ?!
一瞬驚いたけど、芽衣子ちゃんが何で僕を攻撃したのかすぐに分かった。
テプ・グランデがいた足元から、刃のような炎の花弁が突き出ていたからだ。
これは炎剣菖蒲!
このタイミングでフラマ・グランデの系譜の魔法を使う相手はただ一人!
「燐火ちゃん!」
僕の後方の茂みからおかっぱ頭の女の子が出てきた。
このフラマ・グランデと同じ髪型をしたキャラクターは大魔導士ラナ。
燐火ちゃんが操作するキャラクターなのだ。
「反応が鈍いねテプちゃん! それでもフラマ・グランデ様の後継者?」
「燐火ちゃんを倒すよ! 今日こそ冥王軍が勝つのだ!」
「ゲームは現実のように甘く無いのだ! わたしの方が先輩で実践経験豊富なんだよ! 大魔導士の先輩として指導してあげるのだ〜」
「僕だって本物のフラマ・グランデに認められた大魔導士だよ! こんどこそ燐火ちゃんに勝つのだ!」
燐火ちゃん相手に小細工は不要!
最大火力で倒すのだ!
開闢より受け継ぎし原始の力
連綿と続く魔道史において 比類なき永遠の炎よ
我ここに示す
真なる炎を前にして滅せぬものは存在せぬと
万物を構成せし五行の力をもって顕現せよ
燃え上がる恋のごとき灼熱の花
「「咲き誇れ! 紅 蓮 躑 躅!!」」
僕と燐火ちゃんの操作キャラが最強魔法を同時に使った。
モニターに綺麗な炎の躑躅が表示された。
花火みたいで綺麗だな〜。
「やられた! テプちゃん逃げて!」
芽衣子ちゃんがやられた?!
驚いて振り返ると神官が杖で殴りかかってきていた。
「翔太くん!」
「今の僕は神官ミロス! 究極魔法を使った直後であれば魔法を使えないだろう! 魔法を使えない大魔導士など杖で十分だ!」
ああああっ!
僕のテプ・グランデがボコボコに殴られているのだ。
「テプちゃん油断しすぎだよ! クールタイムが終わったらミロスと一緒に魔法で消し飛ばしてあげるから!」
ボコボコにやられる僕を見て燐火ちゃんが勝ち誇っている。
でも……燐火ちゃんの背後にも敵はいるのだ!
「唸れ聖剣! これが勇者ラファエル最大の一撃だ!」
「えっ? 健斗君?!」
一瞬の隙をついた聖剣の一撃で燐火ちゃんのキャラクターのライフゲージは一気になくなった。
そして、僕のテプ・グランデも翔太君が操る神官ミロスと杖同士の殴り合いに負けてやられてしまったのだ。
結局、燐火ちゃんも僕たち冥王軍も健斗君と翔太君の勇者パーティーに負けてしまったのだ。
うぐぅ〜。
最初に不意打ちをうけたのが敗因だよなぁ。
でも負けたのは残念だけど、みんなと一緒に遊べて楽しかったのだ。
今日はこれで終わり。
明日もお仕事頑張ろう!
みんなにおやすみの挨拶をしたあとログアウトした。
ふぅ。
毎日ゲームで遊べるのは楽しいけど、やっぱり実際に会いに行きたいよね。
お仕事忙しくて直ぐに会いに行けないけど、夏休みになったら燐火ちゃんに会いに行く予定だ。
夏休みの間だけ、僕の代わりにパパが仕事してくれるって言ってくれたからね。
楽しみだなぁ。
纏蝶さんのお店で働き始めたしず子さんに会いに行きたいし、増子さんは最近陽翔お兄さんと一緒にいる事が多いみたいだから気になるよね。
魔王さんと条さんと温泉に行って仕事の悩みを相談したい。
四天王のバルンシーさんの新曲も気になるし、他の四天王さんも元気かな?
ハバっちゃんはまだ増子さんの喫茶店で働いているから、神の世界で付き添ってくれたお礼をしにいかないとね。
蒼羽さん達は受験勉強で忙しそうだから来年会おうかな。
改めて思うけど、本当に良い仲間に出会えたよね。
みんなともう一度会う為に頑張って本当に良かった!
オハコとプレナにも事前に声をかけておかないと。
一緒に会いに行きたいからね。
僕たちの魔法少女に!
完