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第146話 僕が目指す神様

 黄金の光が消えると、僕は知らない場所にいた。

 神様になると神様の世界に連れて行かれると聞いていたけど、突然飛ばされたからびっくりしたよ。


「ついに来てしまったか。結局忠告を聞かなかったのだな」


 突然声をかけられてびっくりしたけど、アラハバキのハバっちゃんだった。

 今日は驚きの連続だなぁ。


「ハバっちゃん来てくれたんだ。僕は神獣になっちゃったの?」

「まだだ。本物の神獣になるのは、この橋を渡ったところにある神殿で何の神になるか選定されてからだ」

「教えてくれてありがとう」


 僕は橋を渡ろうとした。


「待て。本当に神になるのか? 戻れなくなるぞ」

「戻っても意味がないから進むのだ!」

「元の世界に未練はないのか? あの少女とも会えなくなるのだぞ? 今なら引き返せる。これが最後のチャンスだ」


 ハバっちゃんが心配してくれているのが嬉しい。

 でも僕は神様になって願いを叶えるのだ!


「心配してくれてありがとうなのだ。でも、元の世界に戻っても魔法王国に帰らないといけないから燐火(りんか)ちゃんと一緒にはいられないのだ。僕はもう逃げないって決めたのだ。今までは燐火(りんか)ちゃんが戦ってくれた。今度は僕が戦う番なのだ」

「そうか。それなら引き止めぬ。テプが何を望むのか見届けさせてもらう」

「よろしくお願いするのだ。ハバっちゃんが一緒なら心強いのだ」


 僕はハバっちゃんに教えてもらった通り橋を渡り神殿に向かった。

 豪華な神殿なのだ。

 いかにも神様がいそうって雰囲気だなぁ……って神様の世界だから当然だよね。

 スタスタ神殿の中に入っていく。

 通路を進むと奥の扉が自動で開いた。

 ここに入れって事かな。

 お部屋に入ると誰もいなかった。

 キョロキョロ見渡していると声が聞こえた。


『新しい神の候補者か。其方はどのような力を望むか?』

「圧力をかける力が欲しいのだ」

『圧力をかける力か……あらゆる敵を(ひざまず)かせる強大な重力の力か? それとも周囲の存在を圧殺する圧力の力を望むか?』

「指で押すくらいの圧力をかける力を下さい」

『何を言っている? 指で押す程度の力であれば指で押せばよいだろう?』

「僕の指は器用じゃないから指で押す力が欲しいのだ」

『そんな力など無意味。神獣になるに相応しくはない』

「意味は僕が決める。神獣に相応しいかなんて興味ないのだ」

『なら何故神を目指す? 指で押す程度の力で何の神になれると思っているのだ?』

燐火(りんか)ちゃんの友達でいられる神様を目指すのだ」

『なんだそれは。そんなものは神ではない。其方には神の力を扱う資質がないようだな』

「神の力を扱う資質ならあるよ。僕は大魔導士テプ・グランデ。力の扱い方を知るものだ。力は強大さが全てではない。無意味に思える弱い力でも、扱い方次第で大きな意味を持つのだ」

『くだらない……と言うのも無意味か。これ以上の議論は不要だ。其方を神獣にする事は出来ない。其方が現世で得た神獣の力は奪わせてもらおう』


 僕の体から力が抜けていく。

 でも構わない。

 もう僕は燐火(りんか)ちゃんと一緒に戦う必要がないから。


『さて、現世に戻そう。神では無い者を、神の世界で受け入れる事は出来ぬからな』

「どろぼ〜」

『なんだと? 神である我を泥棒扱いするのか?』

「力を奪ったから泥棒なのだ」

『神にならぬと決めたのは其方だ。不要な力を奪う事を何故否定する?』

「不要な力だよ。でもタダではあげない。僕の望む力と交換なのだ!」

『指で押す程度の圧力の力か……くれてやるから消えろ。不愉快だ!』


 あっ、神様がキレた!

 でも僕が欲しかった力は手に入ったのだ。

 しかも元の世界に戻してくれるのはありがたい。


「ありがとうございます!」

『ふん!』


 神様は不機嫌なままなのだ。


「これがテプの望んだ力か。神として選ばれず排除される奴はいたが、ケンカを売って追い出されたのは初めてだったから焦ったぞ」


 ハバっちゃんが呆れた声で言った。


「そうなんですか? 他にもいると思っていました」

「他にはいない。普通は神を恐れ、ひれ伏すものだ」

「僕は最初からやりたい事が決まってたから恐れる事は無かったのだ」

「そうか。もうここにいる必要はないな。共に戻ろう。テプがその貧弱な力で何をするのか興味があるからな」

「うん。一緒に帰ろう!」


 僕はハバっちゃんと一緒に黄金の光につつまれた。

 目を開けると紅鳶(べにとび)山の山頂だった。

 僕が消えた直後みたいだね。

 時間が経ってなくて良かったのだ。


「テプちゃんが一瞬光って消えたような気がするけど……」


 増子さんが首を傾げている。

 神様の世界でケンカを売ってきたなんて言ったら心配させるから、神様の世界での事は黙っておくのだ。


「気のせいなのだ。一緒にかえろう!」


 みんなで紅鳶(べにとび)山を降りて帰路に着いた。

 燐火(りんか)ちゃんのお家に帰った後、押入れの僕の部屋のお片付けをした。

 明日は魔法王国に帰るからね。

 燐火(りんか)ちゃんのパパさんとママさんともお別れの挨拶をした。

 これで準備完了!

 僕の最後の戦いの準備が整ったのだ!

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