第140話 落ち込む燐火ちゃん
「フラマ・グランデはゲームの登場人物だよ! 実在しないのに呼び出せるの?」
「さぁ、僕はゲームの事は詳しくないから分からないね。でも呼び出せたって事は実在していたんじゃないかなぁ」
フラマ・グランデが実在していた?!
もしかして実在の人物を元にゲームのキャラクターを作ったって事?
そんな事あるのかな?
火炎魔法が得意な大魔導師なんて歴史の授業で習ってないよ!
「ねぇお兄さん。そのフラマ・グランデって人はどんな人だった?」
燐火ちゃんがアエリス・セプテムに質問をした。
ここは燐火ちゃんに任せよう!
アエリス・セプテムがどれだけフラマ・グランデについて詳しいか知らないけど、世界一フラマ・グランデに詳しいのは燐火ちゃんだからね。
絶対に騙せないのだ!
「君と同じ黒髪でおかっぱ頭の中年男性だよ。その杖と同じ杖を持っていたよ」
「見た目は本物みたいだね。でも世界を滅ぼせるくらいの威力の火炎魔法を使えるの?」
「使えないって言ってたよ。僕の代わりに世界を滅ぼしてくれって頼んだんだけどね、僕の魔法じゃ世界までは滅ぼせないって言われちゃってね」
「……世界を滅ぼせない理由を言ってた?」
「あぁ、言ってたよ。世界の力では世界自身を滅ぼせないってね」
「もしかして……世界は滅ぼせないけど、人類程度なら滅ぼせちゃうかもって言ってなかった?」
「言ってたよ。それなら人類を滅ぼしてって頼んだんだけど断られちゃったよ。実際にやっちゃったら、人類を滅ぼせるって特技がなくなっちゃうじゃないかってね。火炎魔法しか取り柄が無いんだから、出来ない事を増したくないんだってさ。どういうお願いだったら聞いてくれたんだろうね?」
なんだかひねくれている人だなぁ。
本当に燐火ちゃんが憧れているフラマ・グランデなのかな?
燐火ちゃんはどう思っているんだろう?
どうしたんんだろう?
燐火ちゃんの顔が真っ青だ。
「どうしたの燐火ちゃん?」
「本物だよ……どうしようテプちゃん。フラマ・グランデ様が敵になっちゃった……」
「大丈夫だよ! ウソをついているかもしれないから気にしちゃダメだよ!」
「そうだよ! 悪い人の話は聞いちゃダメだったパパが言ってた!」
僕と芽衣子ちゃんで燐火ちゃんを安心させようとした。
なんなんだ!
このアエリス・セプテムという人は!
怠惰の名の通り何もしていないのに、今までで一番ピンチなのだ!
「ここから先は警察で話を聞くわよ。ほら、来なさい」
纏蝶さんがアエリス・セプテムを連れて行こうとした。
「じゃぁね、お嬢ちゃん達。最後にいい事を教えてあげよう。フラマ・グランデは賢者の石を破壊するって言ってたよ。あれは愚者が生み出した石だからってね」
「早く来なさい」
「いててて」
「燐火ちゃん、芽衣子ちゃん、好きな物を選んだらお店の事は気にせず帰っていいからね」
アエリス・セプテムが纏蝶さんに引きずられていった。
これで七つの大罪は全員いなくなった。
もう紅鳶町と隣町の暗渠町で暗躍していた悪党はいなくなったのだ。
最後に残った問題はアエリス・セプテムが呼び出したフラマ・グランデ。
でも賢者の石を手放せば問題ない。
フラマ・グランデが狙っているのは賢者の石みたいだからね。
それだけで解決する話なのだ。
もう僕がこの世界にいなければならない事情はない。
パパの言う通り魔法国へ帰った方がいいのかな?
同世代の他の妖精達は、もう異世界留学を終えて魔法王国に帰っている。
この世界に残っているのは僕とオハコとプレナだけなんだよね。
このままだと、僕たちだけ魔法王国で留年してしまうのだ。
でも今は結論を出さないでおこうと思う。
みんなの意見を聞きたいからね。
「燐火ちゃん。早く好きな物を選ぼう! 呪物が良かったんだよね!」
「うん……」
「ほらっ、これなんてどう? 二つあるからおそろいに出来るよ!」
「うん、これが良さそうだね……」
芽衣子ちゃんが不気味な生物形のキーホルダーを指差した。
呪物をおそろいにするって考えは理解出来ないけど、少し元気になって良かったのだ。
本当は呪物は怖い物だけど、本当に呪われちゃっても増子さんが触っただけで壊せるから安心なのだ。
燐火ちゃんと芽衣子ちゃんが呪物のキーホルダーをカバンにつけた。
「お礼をもらったから帰ろうか」
「うん」
「そのまま帰っても大丈夫なの?」
芽衣子ちゃんが僕たちを引き留めた。
「大丈夫だよ。こんな怪しくて怖いお店は泥棒どころか、他のお客すらこないから。纏蝶さんもお店の事は気にしないで帰っていいって言ってたでしょ」
「違うよテプちゃん。防犯用の呪物があるから気にせず帰っていいんだよ。芽衣子ちゃんも一緒に帰ろう」
そ、そういう事だったのか……
防犯用の呪物があるなんて初めて知ったよ。
僕は燐火ちゃん、芽衣子ちゃんと一緒に店を出た。
今日は帰ろう!
フラマ・グランデとの最後の戦いについては……明日考えるのだ!




