第139話 自首してきたのだ!
動きを止めたクラウス・ズィーベンを纏蝶さんと怪盗ガウチョパンツが捕らえた。
「これで我ら七つの大罪も終わりか……」
クラウス・ズィーベンがつぶやいた。
あれっ、まだ誰かいたような気がするけど……
「お前で最後ではないだろう。最後の大罪、怠惰はどこにいる?」
怪盗ガウチョパンツが問いかけたのを聞いて思い出した。
そうだった、なまけものさんが残っていたのだ!
「知らないさ。怠惰に何が出来る? 奴だけでは七つの大罪を継続する事は出来ないだろう。これで我らの歴史も終わりだ。後継者もいないからな」
「お前達の歴史など興味はない。だが油断はしないぞ。最後の一人を捕らえて七つの大罪を完全に終わらせるまではな」
「いくわよ陽翔」
「蒼真! 今は怪盗ガウチョパンツだ!」
「はいはい。よっこらしょ。燐火ちゃん、助けに来てくれてありがとう」
纏蝶さんがクラウス・ズィーベンを担いだ。
「どういたしまして。こまった事があったら大魔導師のわたしに相談してくれれば、すぐに解決するからね!」
「燐火ちゃんの言う通りなのだ! 僕たちが最後の七つの大罪を倒してみせるのだ!」
「そうさせてもらうわよ。悔しいけど大人の私たちより燐火ちゃんの方が強いからね。またお店で会いましょ」
「困った時は……いや、今度は困る前に通信で相談するさ。またな相棒!」
纏蝶さんと怪盗ガウチョパンツが去っていった。
「それじゃ、今日は帰りましょうか。喫茶店に戻っていたら日が暮れちゃうからね」
「そうだな。テプちゃんのお悩みはまた聞くからさ」
「うん。今日は帰るのだ」
「しず子お姉さん、増子お姉さん、またね!」
僕は燐火ちゃんと一緒にお家に帰ったのだ。
夕食を食べた後、燐火ちゃんがゲームで遊び始めた。
燐火ちゃんがアカウントを作るから一緒に遊ぼうって誘ってきたけど遠慮する事にした。
僕の前足では燐火ちゃんと違ってキーボードをたくさん押せないから、キャラクターを動かすのも難しいと思うのだ。
今は健斗君と翔太君と対決して楽しそうにしている燐火ちゃんを見ているだけで満足なのだ。
数日後、春休みになったので僕は燐火ちゃんと一緒に百怨ショップに行く事にした。
この前クラウス・ズィーベンを捕まえた時のお礼をもらえる事になったからだ。
紅鳶町の商店街を進んで百怨ショップに着くと、いつもより禍々しい殺気を放っていた。
何か問題が起きたのかな?
「燐火ちゃん! 気をつけて!」
僕は燐火ちゃんに警戒をうながした。
「大丈夫だよテプちゃん」
燐火ちゃんがドアを開けてお店の中に入っていった。
大丈夫?! どういう意味なんだろう?
僕も燐火ちゃんの後を追って入店した。
店内入ると、一人の少女がジト目で見てきた。
芽衣子ちゃん!
そうか、また最終決戦だけ仲間はずれになったから怒っているんだね……
「燐火ちゃ〜ん。ずっとがんばっていたのに、また最終決戦だけ仲間はずれになったんだけど〜」
「芽衣子ちゃんごゴメン。いきなり出てきたけど弱かったから一瞬でやっつけちゃった」
「その弱い七つの大罪に苦戦していたのが悔しい!」
「仕方ないよ。芽衣子ちゃんは大魔導師じゃないから。芽衣子ちゃんも報酬をもらいにきたの?」
「そうだよ。最終決戦は参加出来なかったけど、今まで戦いに参加していたから報酬くれるんだって」
「それなら一緒に選ぼう。今日は呪物の気分なんだ」
「私も! これなんか良さそうだよ」
「好きに選んで良いわよ。二人とも大手柄だったからね」
纏蝶さんが次々に見せる呪物を目を輝かせて物色する女子ふたり。
不思議な光景だなぁ。
でも平和ならいいのかな。
「たのもう! ここが集魔師のアジトかな?」
見知らぬ男性が入店してきた。
ぶわっ。
ものすごい風を巻き起こしながら纏蝶さんが知らない男性の前に飛び出した。
「あなた……何者?」
「申し遅れた。僕はアエリス・セプテム。空気のように存在感が薄く、大抵の事も満足に出来ない男さ」
「七つの大罪!」
纏蝶さんが腕を上げて構えた。
もしかして七つの大罪最後の一人?!
でも、どうみても卑屈なおじさんだよね。
自分で大したことがないって言う人初めてみたのだ。
「七つの大罪さん、戦いに来たの?」
燐火ちゃんが愚者の杖を具現化した。
僕も戦いの準備をするのだ!
毛を逆立てて威嚇した。
「そんなに怖い顔しないでおくれよ。僕は自首しに来ただけなんだからさ〜。すっごい面倒だったけどさ。頑張って君たちの事を探しちゃったんだよ。怠け者なのにさ〜」
アエリス・セプテムが両手を差し出したので、纏蝶さんが魔道具で両手を拘束した。
あれっ、本当につかまっちゃったのだ!
「今度は最終決戦すら起きなかった……」
芽衣子ちゃんが嘆いている。
少し可哀想だけど、平和に解決出来て良かったのだ。
「一応聞いておくけど、なんで自首して来たのかな?」
「僕は努力しないから、他の大罪みたいに特別な力がないのさ。神を呼び出したレオディック・セブンの能力を真似してみたけど、僕には人間程度しか呼び出せなかったよ。まぁ、神や悪魔を呼び出したところで、君たちに勝てない事は分かっているんだけどね〜」
言い訳ばかりでカッコ悪い大人なのだ。
でも、これで僕たちの戦いは終わったも同然なのだ。
あとはアエリス・セプテムが呼び出した人間を保護するだけだからね。
特徴を聞きだして捜索するのだ!
「アエリス・セプテムさん、どんな人を呼び出したの?」
「フラマ・グランデ」
アエリス・セプテムが口角を上げて不気味に笑ったーー




