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第131話 ひと焼き行こうよ!

 魔王さんに連れられて街中を歩く。

 なんだか気分が悪いなぁ。

 あれが極悪王だとか悪逆王だとか言われているのだ。

 みんなを幸せにする魔法王国の妖精なのに。

 燐火(りんか)ちゃんは大魔導師になった気分で喜んじゃってるけどね。

 芽衣子(めいこ)ちゃんも連れてこれば良かったって言ってるよ……

 あっ、やっとついた。

 ここが金剛宮殿か。

 ダイヤモンドみたいでキラキラしているのだ。


「入るぞ」


 四天王一の怪力のゲルバリアンさんが重そうな扉を開けてくれた。

 長い階段を登っていき、最上階のお部屋でくつろぐ事になった。

 カイニィ元王とエイビィさんは珍しいお菓子を食べて喜んでいる。

 お菓子に夢中だから、このまま放っておいても大丈夫かな?


「魔王さん、バルギアン達は悪気はないのだ。仲良く出来ないかなぁ?」

「難しいだろう。今更仲良く出来ると言われても因縁は消せぬ」

「何か方法はないかな? 魔王さんは魔界に詳しいから僕よりよい方法を思いつくと思うよ」

「無理だ。魔界に詳しいからこそ無駄だと分かる。何千年も争ってきたのだ。仲良くなど出来ないさ」

「敵はいないのかな?」


 燐火(りんか)ちゃんの問いかけに全員が固まった。

 えっ?!

 仲良くしようって話をしているのに何で敵を探しているの?

 元々燐火(りんか)ちゃんの敵を探しに魔界に来たけどさ、それどころじゃないよね?


燐火(りんか)ちゃん、今は仲良くなる方法を探すのが先だよ。ネイラスティアの皆んなとバルギアンの皆んなを仲直りさせるのだ」

「だから敵を探しているんだよ」

「良く分からないのだ」

「バルギアンのみんなでネイラスティアの人たちの敵を倒せば仲直りなのだ!」


 燐火(りんか)ちゃんが自信満々に言った。

 そんな事を言っても都合よく敵が出てくるはずがないでしょ!

 燐火(りんか)ちゃんが戦いたいのは分かっているけどさ。


「その手があったか」


 ほらっ、魔王さんだって敵なんて居ないって言って……いるの?!


「その手があったっていうけど、もしかして……」

「そのもしかしてだ。ネイラスティアの民にはバルギアン以外に敵がいる。グリヌストス」


 ガタッ!

 背後で物音出した。


「グリヌストスに手を出すのか! 協定違反だ!」


 カイニィ元王が大声を上げて暴れ出した。

 えっ、名前を聞いただけで大騒ぎするくらい危険な相手なの?

 屈強なバルギアンの元王が、こんなにうろたえるのはビックリなのだ。


「落ち着くのだ。最後まで話を聞くのだ! 王様命令なのだ〜」

「くっ、テプ王。グリヌストスだけは手を出してはならん」


 カイニィ元王が落ち着いてくれたけど、グリヌストスには関わって欲しくないようだ。


「魔王さん、バルギアンさんはグリヌストスに関わらないように言ってるけど何者なの?」

「グリヌストスは神話の時代から魔界を支配している魔獣だ」

「魔界を支配? 魔界を支配しているのはネイラスティアの皇帝なんとかさんだと思っていたのだ」

「それは表向きの話だ。魔界の大半はグリヌストスの領域だ。グリヌストスからみたら、ネイラスティアの民もバルギアンもただのエサにすぎぬ」

「そんな危険な魔獣がいるのに何で協力して戦おうとは思わなかったのですか?」

「話が通じないのに協力など出来るはずがなかろう。協力したところで無駄ではあるがな」

「そんなに強いのに何で魔界の人たちは普通に暮らしているんですか?」

「結界があるからだ。今のところ奴らは結界をこえる事は出来ぬ」

「魔王さんはグリヌストスについて詳しいんですね」

「当然だ。魔王とは結界の守り人の称号なのだからな。結界は我が維持している」

「えっ、知らなかったのだ」


 ビックリなのだ。

 魔王さんが魔界を守る結界を維持しているとは思わなかたのだ。

 どうしよう。

 ネイラスティアの民とバルギアン達が仲直りするには共通の敵であるグリヌストスを倒せば良いと思うんだけどな。

 余計な事をしたら怒られそうなのだ。

 燐火(りんか)ちゃんはどう思っているのかな?


燐火(りんか)ちゃんはどう思う?」

「ひと焼き行こうよ!」

「そんな簡単に火炎魔法で焼きに行くって言ったらダメだって。魔界の人達が恐れる魔獣なんだよ!」

「いや、やってやろうぜ!」


 なぜかエイビィさんが乗り気だ。


「なんでエイビィさんまでグリヌストスと戦おうとするの? カイニィさんが関わるなって言っているよ」

「関係ないな。今の王はテプ様だ。燐火(りんか)とやらと一緒にグリヌストスを丸焼きにしてやろう!」

「何を言っている! そんな事が許されると思っているのか! 結界に問題が起きたら絶滅(ぜつめつ)するぞ!」

「カイニィは知らんのだ。この娘のえげつなさを。世界を否定するかのように焼き尽くす獄炎(ごくえん)を見たらグリヌストスですら弱者でしかないと思い知らされる。あれこそ神代の化け物だ!」

「そ、そこまでなのか……」


 エイビィさんの迫力にカイニィ元王が気圧されている。

 ほめてもらえるのは嬉しいけど複雑な気分なのだ。

 僕と燐火(りんか)ちゃんが世界を滅ぼす神話級のバケモノみたいな扱いだからね。

 でもエイビィさんの説得のお陰でグリヌストスと戦う事を認めてもらえそうなのだ。

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