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第130話 極悪王テプ

 どうしよう?

 戦争を仕掛けていると誤解されちゃったよ!

 僕はうろたえてドタドタ足音を立てながらクルクル回った。


「テプ王が戦いの舞を始めたぞ! 雄叫びを上げるのだ!」


 カイニィ元王が叫ぶとバルギアン達が雄叫びを上げた!

 更に大変なことになってしまったのだ!

 なんだかお空に筋が見えるよ。

 目がかすむくらいに疲れているのかなぁ……


「テプちゃん! 神獣王モード!!」


 燐火(りんか)ちゃんの声でハッとした。

 急いで神獣王モードに変身した。

 燐火(りんか)ちゃんが慌てて言うって事は緊急事態だと思うからね。

 僕が変身した時には燐火(りんか)ちゃんが詠唱を始めていた。


 開闢(かいびゃく)より(たまわ)りし重厚なる力

 絨毯の様に重厚な灼熱の花弁よ

 幾重にも重なり我を守れ

 何物も通さぬ不可侵の八重咲の花!


「立ち(ふさ)がれ! 重層金鳳劫火ヘビィ・ラナンキュラス!!」


 バルギアンの大群を炎の花弁が包んだ。

 でっかい金鳳劫火(ラナンキュラス)

 僕の神獣王モードで強化されたんだね。

 ジュッ!

 何かが重層金鳳劫火ヘビィ・ラナンキュラスにぶつかって焼失した。

 僕が見た空の筋は矢だったんだね……矢?!

 ネイラスティアの民に攻撃されているよ!!

 突然城門が開いて豪華な鎧を着た男性が出てきた。


「私はネイラスティアの勇者ガルダ! 矢は防げたようだが、私の聖剣は防げぬぞ」


 勇者ガルダが剣を抜いた。


「テプ王。あいつは何て言ってるんですか? 変な棒を取り出したけど」


 エイビィさんが不思議そうな声で聞いてきた。

 バルギアンは武器も知らないの?!

 このまま戦ったら取り返しがつかなくなる。

 勇者と仲良くなってもらわないとダメだよね。


「エイビィさん。おじぎをして握手をすれば仲良くなれるよ!」

「テプ王。おじぎとあくしゅとは何だ?」

「こうすれば良いんだよ。手を握ってね」


 僕は頭を下げた後に手を握ってブンブン振ってみせた。


「分かった。簡単だな。やってみせよう」


 エイビィさんが勇者さんに近づいていって……頭突きで勇者を城壁に叩きつけた。

 そして手を握ってブンブン勇者さんを振り回した。

 ええええっ! 何で?!

 勇者さんが気絶しちゃったよ……

 パニックになって城壁の上にいた兵士たちも逃げていってしまった。

 これって完全に敵対行為だよね。

 僕はアドバイスを求めて燐火(りんか)ちゃんの方を見た。


「極悪王テプちゃん」


 燐火(りんか)ちゃんがボソっと言った。

 ええええん!

 ひどいよ燐火(りんか)ちゃん!

 このままだとバルギアンを扇動(せんどう)して魔界を統一した極悪王になっちゃうよ!

 バルギアン達の予言の王ってこういう意味だったの?!

 ん、急にバルギアン達が騒ぎ出したのだ。

 みんな空を見ている。

 僕も空を見ると黒衣の男性が静かに舞い降りてきていた。

 あっ、魔王さんだ!!


「やはりバルギアンとの和平などありえなかったのだ。滅ぼすべきだったのだ。皇帝タルディアス二世とともにな」

「あっ、魔王さんこんにちは」

「あいさつなどしても許されぬ。金剛協定など関係ない。我が貴様らの国、バルギノルを滅ぼす!」

「それは困るのだ。話を聞いて欲しいのだ」

「カイニィ王よ! 長きに渡る戦いの決着をつけよう!」

「今は僕が王で〜す!」

「うるさいなテプ。邪魔をするな!」

「やっと気づいてくれた。魔王さんこんにちは!」

「今は忙しいのだ……テプ?! なぜ魔界にいる?!」


 魔王さんが僕の存在に驚いて落下しそうになった。

 そんなにビックリする事かなぁ。

 四天王のゲルバリアンさんとモスデスラさんが出てきて魔王様を支えた。

 これで魔界にいる魔王さんの仲間が勢揃いだね。


「どういう事だ? なぜテプ達がいるのだ?」

「どういうことモス?」


 デスモスラがゲルバリアンの方を向いて言った。

 あっ、誤魔化(ごまか)そうとしてる!


「俺知らない」


 相変わらずゲルバリアンさんは話が苦手なのだ。

 デスモスラさんが後ろで笑っている。

 責任を押し付けようとするなんてズルいなぁ〜。

 でもデスモスラさんも考えが足りないよね。

 後で事情を知っているリップリアさんにバラされて怒られると思うよ!


「もうよい。話は後で聞かせてもらうぞゲルバリアン。それよりテプは魔界で何をしているのだ?」

「良くわからないけどバルギアン達の王様になっちゃいました」

「良くわからないな。何でテプが王様なんだ?」

「僕が一番かしこいからです」

「相手は武力が全てのバルギアンだぞ? テプが賢くて何故王になれる?」


 どうやら魔王さんはバルギアンの事を知らないようだ。

 僕はバルギアン達の事を魔王さんに教えてあげた。

 バルギアンは生まれながらに戦闘能力に差がなくて、実は知力で王が決まっていた事に驚いていた。


「そういう事だったのか……それでバルギアン達はテプの指示に従うのか?」

「したがってくれますよ。理解してくれているかは微妙ですけど」

「なら代表者だけで話をしよう。人数を限定すればネイラスティアの民も納得すると思う」

「うん。そうする」


 僕はカイニィ元王とエイビィさんだけを連れて行く事にした。

 残りのバルギアン達はバルギノルに帰国してもらう事にした。

 そして僕たちは魔王さんの案内で城門をくぐったのだ。

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