第128話 迷勝負?!
バルギアンの王カイニィが大きな爪を突き出した。
ついに対決なのだ!
燐火ちゃんは僕の後方で腕を組んで様子を見ている。
僕に期待してくれているのかなぁ?
頑張ってカイニィさんに勝って魔界の平和を勝ち取るのだ!
いつでも飛びかかれるように後ろ足に力をこめた。
「我の好物はなんだ?」
へっ?!
カイニィの好物?
ズルッ。
予想外の問いかけを聞いてスベッてしまったのだ。
「頑張れテプ! 王の力を超えるのだ!」
エイビィさんが僕を起こしてくれた。
「王の力? まだ何もされていないですけど?」
「何を言っている? 戦いはもう始まっている。気を抜くな!」
「あの大きな爪の事ですか? 握力凄そうですよね!」
「何を言っている? あんなもの普通だろう」
「ふつぅううう?! 偉大な王様じゃないの?」
「偉大な王だ。だが握力は子供と変わらぬ」
「子供と一緒の強さなのにどうやって王様になったの?!」
「知力に決まっているだろう。我らバルギアンは戦士の種族。生まれた時点で最強の戦士なのだ。二人のバルギアンが戦えば、腹が減るまで決着がつかないのは常識だ」
「そ、そうなんですね」
子供も家を素手で破壊するカイニィさんと同じ腕力なんだね。
恐ろしい種族なのだ……
でも腕力じゃなくて知力の勝負なら僕でも勝てるかもしれない。
カィニィさんの好物を聞かれているけど、そのまま答えていいのかな?
知力を試されているんだ。
よく考えないと……
少ししか旅をしていないけど、魔界は荒れた土地が多かったなぁ。
もしかしたら食料が貴重なのかもしれない。
それなら答えはこれだ!
「食べられる物すべてが好物なのだ!」
「なんだとおおおおおお!」
カイニィさんが大声を出した。
えっ、もしかして間違えちゃった?
「何で初対面なのに我の好物を熟知しているのだ!」
普通に好物を聞かれていただけだった!
真剣に深読みしていたのが馬鹿らしくなってきたのだ……
「さぁ、今度はテプの番だ」
僕の番か。
何を聞こうかな?
最初は簡単ななぞなぞにしてみようかな。
「何を食べてもうまいっていう動物はなんだ?」
「エイビィだ! エイビィは食事中に美味いと言うぞ」
「私が王の戦いの質問の答えに選ばれるとは……光栄だぞテプ!」
ええええっ?!
全然答えになっていないんだけど!
正解は馬だよ!
うま〜いってね!!
「答えはエイビィさんじゃないです!」
「なぜだ? 本人も認めているだろう?」
「そんな事言ったら誰の名前でも全員正解になっちゃいますよ! カィニィさんは美味しいものを食べた時に何て言うんですか?」
「美味である」
美味であるかぁ……
それなら仕方がないよね。
背後から笑い声が聞こえる。
人ごとだと思って酷いよ燐火ちゃん!
「次は我の質問だ。我の顔に傷をつけた宿敵は誰だ?」
そんなの知らないよ!
多分魔王さんだと思うけど、魔王さんの名前は知らないんだよなぁ。
名前を知っているのは四天王さん達だけ。
ダメ元で名前を言っておこうかな。
ここで間違えても、次の質問で挽回すれば大丈夫だよね!
たしか一番腕力が強いのはーー
「ゲルバリアン?」
僕は自身なさげに言った。
「なぜ知っている? その名はネイラスティアの民ですら忘れ去っているのだぞ。テプよ。お主は何者なのだ?」
合ってたんだぁ!
不正解だ思っていたからびビックリしちゃったよ!
「ただの知り合いです。次は僕の番ですね。星は星でも酸っぱいほしは何だ?」
「酸っぱい星だと? ぬぅ〜ん。はっ。くはっ」
カイニィさんが苦しみ始めた。
すっごく特徴的な悩みかただなぁ。
もしかして、こんな簡単ななぞなぞが答えられないのかな?
「うぉおおおおおっ! そんな物があるかああああっ! 正解がない質問は無効だ!」
カイニィさんが怒り出してしまったのだ。
正解がない質問をしているのはカイニィさんの方なんだけどなぁ。
仕方がないから答えを教えてあげるのだ。
「カイニィさん、答えは梅干しですよ」
「なんだと! そんな事があるか!」
「本当ですよ! 梅干しは酸っぱいでしょ。だから酸っぱいほしで合ってますよね?」
「本当なのか? エイビィは知っていたか?」
「いえ。汗臭いとは思っていましたが、うみぼしが酸っぱいとは知りませんでした。すぐに呼んできます」
うみぼし?
なんか違うものが聞こえたような気がするけど。
しばらく待っているとエイビィさんがヒトデのバルギアンを連れてきた。
「うみぼしは酸っぱいのか?」
カイニィさんが恐る恐る聞いた。
「また間違えやがって! オレは海星じゃなくて海星だ!」
「そんな事はどうでもよい! お主は酸っぱいのか?」
「はぁ? 誰が酸っぱいって?」
なんだか揉めてるなぁ。
連れてこられたヒトゥデさんがエイビィさんに拘束されている。
僕、変な事言ってないと思うけど……
少し待っているとカイニィ王が僕のところにやってきた。
「テプよ。ウミボシは本当に酸っぱかった。我ですら知らない臣下の秘密を知っていたとは恐れ入った。今日からお主がバルギアンの王だ!」
カイニィさんが僕をかついで王座に乗せた。
いったい何が起きたの?!




