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第126話 言葉は通じても話が通じないのだ!

燐火(りんか)ちゃんは言葉が分からないの?」

「分からないに決まっているでしょ。魔界語なんて授業ないもん」

「たぶん魔界語でもないと思うよ。魔界の人は理解していないみたいだから」

「なんでテプちゃんはバルギアンの言葉が理解出来るの? けもの同士だから?」

「けものじゃなくて妖精! ちょっと話をしてみるね」


 僕は再びバルギアンのエイビィと話をする事にした。


「エイビィさん、あれは魔界の人のお家ですよ。壊したら迷惑です」

「あれが家だって! だったら何で閉じ込めるのだ? 家は入り口が空いているものだろう?」

「エイビィさんのいう家ってどういうものなんですか?」

「家を知らんのか! 家とはこういうものだ」


 エイビィさんが地面に洞穴を描いた。

 人間の感覚とは違うなぁ。

 もしかして、魔界の住民とバルギアンの争いって文化の違いが原因だったのかな?

 暴れていた時は怖かったけど、エイビィさんは性格が良さそうだ。

 バルギアンって話をすれば分かり合える存在なのかな?


「エイビィさん、人間のお家はこうやってドアを閉めて安全を確保するんですよ」

「安全を確保する? 何からなのだ?」

「強盗とかかなぁ」

「強盗とはなんだ?」

「エイビィさんは強盗を知らないんですか? 夜中に持ち物を盗みにくるんですよ」

「そういう魔獣が魔界にいたのか。恐ろしいな」

「違いますよ。強盗は人間ですよ」

「何だと! 同族を襲うのか?! 野蛮な種族だ! 滅ぼさなければならん!」


 エイビィさんが両腕を上げて咆哮(ほうこう)した。

 やらかしちゃったかな?!

 僕の発言で戦争が始まっちゃった?

 説得しないと大変な事になっちゃいそう。


「エイビィさん、人間の全員が悪いんじゃないですよ。良い人間をやっつけちゃったら良くないから悪い人を見分けないとダメです」

「どうやって見分けるんだ? 触覚の長さか? 甲羅の色か? ツメの大きさでない事は分かるけどな」


 ダメだ……

 言葉は分かるけど話が通じそうもない。

 何で触覚の長さや甲羅の色がダメで、ツメの大きさは問題ないんだろう?

 諦めたらダメだ!

 魔界の平和は僕が守るんだから!


「大事なのは性格です! 怪しい動きをしている人は強盗の可能性が高いから要注意ですけど、話をして相手を理解する事が大事です!」

「そうだな。教えてくれてありがとう。魚を尻尾から食べるような怪しい奴は強盗の可能性が高いんだな」


 エイビィさんは僕の言っている事を理解しているつもりみたいだ。

 色々教えてもらえたと思って喜んでいる。

 全く理解してもらえてないけどね……


「テプといったか、私と一緒にバルギノルへ来てくれないか? 新しい友人を仲間に紹介したい」


 エイビィさんと一緒にバルギアン達の国、バルギノルへ行くのか。

 燐火(りんか)ちゃんはどう思うかな?


燐火(りんか)ちゃん、エイビィさんが故郷に行こうってっ誘っているけど、どうする?」

「面白そうだから行ってみよう! でもね、翻訳はしてね。テプちゃんが何を話していたのか分からないから」

「分かったよ。これからは全部翻訳して伝えるね。エイビィさん、バルギノルに一緒に行きます」

「そうか! それなら仕事を終わらせるか」

「何のお仕事ですか?」

「壊した家を直すんだよ」

「それは難しいと思うので、どうしたら良いのか聞いてみますね」


 僕は魔界の人間、魔王さんが言っていたネイラスティアの人たちと話をした。

 かなり疑っていたけど、一応エイビィさんに悪意がなかった事は理解してくれた。

 そして西の森の魔獣を退治したら許してくれるって事になった。

 魔獣退治なら簡単だね!

 エイビィさんは家を素手で破壊するくらい強いからね。

 さっそく僕たちは西の森の入り口に向かった。

 突然エイビィさんが足を止めた。


「どうしたんですか?」

「この先から生物の気配を感じない。おそらく森にいた生物は逃げたか死に絶えたのだろう。バルギアンの戦士である私でも苦戦するかもしれん。ネイラスティアの民では太刀打ち出来なかった事も納得だな」


 エイビィさんが長い触覚をピクピクさせている。

 触覚でそんな事が分かるんだ。

 エイビィさんが苦戦する相手か。

 でも大丈夫!

 僕たちには世界最強の大魔導士がいるんだから!


燐火(りんか)ちゃん、あの森に強い魔獣がいるよ。他に生物がいないみたいだから、遠慮なく魔法でやっつけちゃおう!」

「うん、こういうのを待っていたんだよ! 魔法を使いたい放題だね!」

「じゃぁ森に入るよ」


 僕は森に足を踏み入れようとしたが、背後から燐火(りんか)ちゃんの声がしたので振り返った。


 開闢(かいびゃく)より受け継ぎし原始の力

 連綿と続く魔道史において 比類なき永遠の炎よ

 我ここに示す真なる炎を前にして 滅せぬものは存在せぬと

 万物を構成せし五行の力をもって顕現(けんげん)せよ

 燃え上がる恋のごとき灼熱の花


 えっ? これって……

 燐火(りんか)ちゃんが愚者(ぐしゃ)の杖を森に向けた。


「咲き誇れ! 紅 蓮 躑 躅(ロードデンドロン)!!」


 燐火りんかちゃんの詠唱が終わると同時に、空に五芒星(ごぼうせい)が浮かび上がった。

 そして五芒星(ごぼうせい)の中心から五つの先端に向かって、炎の花弁が生まれた。

 空に浮かび上がる深紅の炎で出来た躑躅(つつじ)

 これは燐火(りんか)ちゃんの最強魔法、紅蓮躑躅(ロードデンドロン)!!

 僕の目の前で森が消し炭になった。

 そして風が灰を運んでいったーー


「すごいな! 目的を果たしたからネイラスティアの民も喜ぶだろう。さっそく報告に行こうではないか」


 エイビィさんがのんきに言った。


「だめえええっ! 早くバルギノルに行きましょう! 早く行きたいなぁバルギノル! 燐火(りんか)ちゃんも楽しみだよね!」

「うん、新しい敵がいるかもしれないからね」


 もう新しい敵は出ないでよ〜。

 あとでしず子さんに助けてもらおう……

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