第12話 新しい友達
燐火ちゃんの魔法のお陰で魔女を退ける事が出来た。
だけど変だ。
こんなにも凶悪な魔女が連続で出てきた理由が分からない。
僕が魔法少女と一緒に善行を積んで聖の気を集めていないからなのだろうか?
悩んでいても解決しないから事実確認するしかない。
僕のパパに聖の気の集まり具合を確認するのだ。
魔法王国と交信出来る場所は、妖精とゆかりがある場所だけだ。
小学校から一番近いのは燐火ちゃんと初めて出会った公園。
燐火ちゃんと一時的に離れる事になるが、僕が離れていても一人で敵を倒せるから大丈夫だと思う。
でも、そう考えると僕の存在価値は何だろう……
ちょっとだけ悲しくなったけど、急いで公園に行く事にした。
公園についてすぐ、魔法の力でパパと交信した。
『どうしたのだアルタロネクタネブ?』
「パパ、僕の手に負えない強い魔の気が充満しているみたいなんです。聖の気の集まり具合を教えてもらえますか?」
『何を言っている? 毎日善行を積んで聖の気が充満しているではないか。魔法王国の妖精としての責務を果たしてくれて嬉しいぞ』
毎日?
僕と燐火ちゃんは魔女二人を倒しただけで毎日善行を積んでいない。
たぶん毎日善行を積んでいるのは、しず子さんとオハコの二人だろう。
なら、なんで魔女が出て来たのだろう?
「パパ、紅鳶町に凶悪な魔女が二人出て来たのですけど……」
『それはありえない。魔女どころか下位の魔獣すら出現出来ないくらい、紅鳶町の魔の気は薄い』
「そうなのかぁ……」
手がかりが得られなくて残念だなぁ……
『まぁ、色々悩みもあるだろうが、期待しているから頑張れよ! 魔法少女と冒険するのは楽しいだろ?』
「あぁ、うん、楽しいかなっ! また何かあったら連絡するね」
僕はパパとの交信を止めた。
魔法少女と冒険というより、ファンタジーな世界に異世界転移して冒険しているような気分だけどね。
異世界転移しているってのは合っているけどさ……
パパに聞いても魔女が現れた理由は分からなかった。
紅鳶町で起きている事件は、魔法王国と妖精の使命とは関りがないようだ。
何で魔女が現れた?
何で魔王が現れた……魔王は違う意味で現れた事を疑問に思うよ!
ふぅ……
僕はため息をついた後、ベンチに座ってくつろいだ。
「この時間に先約がいるのは珍しいなぁ。やぁ、ウサギさん。隣に座ってもいいかな?」
やつれたスーツ姿のおじさんに声を掛けられた。
ど真ん中に座っていたから邪魔になっていたようだ。
「すみません。端に寄りますので」
僕は男性が座れる様に横に移動した。
「おっ、ビックリした! ウサギさんがしゃべるとは思わなかったよ」
男性が僕の隣に座った。
「ウサギではなくて妖精なのですけど、しゃべったら普通はビックリしますよね」
「妖精だったのか……子供の頃は、そういうものに憧れたなぁ……」
「そういうものですよね~。大人になっても妖精を信じている人は少ないですから」
「でも、おじさんは信じる事にするよ。こうして出会えたからね。おじさんは糸園 条、会社員をやっているよ」
「僕はアルタロネクタネブ・アバ・センタンクトロルテプ6世。名前が長いのでテプと呼ばれています」
「テプ殿かぁ……テプ殿はここで何をしていたのですか?」
「色々思い通りにならないなぁと思って……」
僕は空を見上げた。
「おじさんと一緒だなぁ……仕事中は思い通りにならない事がいっぱいでね、テプ殿と同じだよ」
条さんも僕と同じように空を見上げた。
「本当に同じですね。僕も思い通りにならなくて困っているのは仕事の事なんですよね。魔法少女と一緒に善行を積んで町を守るのが仕事なんですけど……」
「それは立派な仕事だねぇ。おじさんも胸を張って町を守るとか言ってみたかった。大人なのに自分の立場を守るので精一杯なんだよなぁ」
「僕も自分の立場を守る事だけで精一杯なだけですよ。僕は魔法王国の王子として生まれたから町を守らないといけないんです」
「大変なんだね。生まれが良いのも」
「うん。でも同じ仕事をしていたパパとママに憧れてはいるんです。だから頑張ってみようと思っています」
「それは素敵な事だね。おじさんもテプ殿に憧れてもらえるような大人になりたいね。やつれたオッサンではなくてね」
「やつれているのは頑張っているからだと思います。疲れ切っている姿はカッコイイです!」
「ありがとう。さて、頑張るとしますか。まだ仕事の途中ですからね」
条さんが立ち上がった。
「休憩の邪魔をしてしまったみたいですね」
「そんな事はないさ。テプ殿からは元気をもらったよ。じゃあね、また会おう!」
「またね~」
僕は前足を振った。
少ししか話せなかったけど良い人だったな。
また会えるかなぁ……




