第119話 初詣に行くのだ!
マルク・セットゥを捕まえて隣町が平和になったお陰で年末はゆっくり過ごせるようになったのだ。
僕の勘違いで泣かせてしまった芽衣子ちゃんとも仲直り出来て良かったのだ。
あとは年末の大掃除を頑張るのだ!
……とは言っても、僕の持ち物って少ないんだよね。
纏蝶さんから手に入れた道具類は首から下げている道具袋に全部入っているからね。
僕用のお布団はママさんが干してくれているからね。
せっかくだから、いつもお世話になっているママさんのお手伝いをするのだ。
色々お手伝いをしていたら、結局忙しい年末になってしまった。
でも充実していて良かったのだ。
そして迎えた元旦。
昨年約束した芽衣子ちゃんと一緒に初詣に行くのだ。
しず子さんと増子さんが用事があるから一緒に行けないって言ってたのが残念だなぁ。
今日は3人で楽しもう!
駅で芽衣子ちゃんと合流した後、紅鳶神社に向かった。
人がたくさんいるなぁ。
僕ははぐれないように燐火ちゃんの肩に飛び乗った。
「こうやって手を洗うんだよ」
芽衣子ちゃんが柄杓で手を洗った。
複雑な手順だなぁ。
僕の手だと難しいよ。
「テプちゃんはわたしが洗ってあげるね」
燐火ちゃんが僕の前足を洗ってくれた。
冬だから水が冷たいのだ。
「これで準備完了! はやくお参りしよう!」
「燐火ちゃん、ちゃんと並ぶんだよ」
参拝者の列に並んで参道を歩いた。
よしっ、僕たちの番だ!
カランカラン。
燐火ちゃんが説明通りにお参りした。
僕も神様にお願いをした。
今年は平和に過ごせますように。
あれっ、芽衣子ちゃんが動かない?!
「どうしたの芽衣子ちゃん?」
「話しかけないで! 今お願いしているところだから」
「そんなに長いお願いか……何をお願いしてるんだろう?」
「芽衣子ちゃんは100個お願いがあるんだって」
ええええっ!
そんなにお願い続けたら迷惑だよ!
「まだか? 順番を待っているのだがな」
背後から聞き覚えがある声が聞こえた。
振り返るとハバっちゃんだった。
か、神様もお参りするの?!
「ハバっちゃんもお参りするの? お願いがあるの?」
「願いなどない。近くに寄ったから挨拶をしておこうと思っただけだ。近所付き合いだと思え」
「そ、そうなんだ。よかった終わったみたいなのだ。はやく交代しよう!」
僕と燐火ちゃんは、お参りを終えた芽衣子ちゃんを連れて傍に避けた。
「テプちゃん! 男の巫女さんがいるよ。ごっついね」
燐火ちゃんが指差した方を見ると、どこかで見たことがある男性3人が境内を掃除していた。
「男性は巫女さんって言わないんだよ。なんて言うのか忘れたけど普通だよ」
「知らなかったよ。芽衣子ちゃんは博識だね。次はおみくじ引きに行こうか」
燐火ちゃんは巫女姿の男性に興味を失ったみたいでおみくじを引きに行った。
振り返るとさっきの男性3人がしず子さんに怒られていた。
そうか、しず子さんは巫女さんのバイトをしていたんだね。
大変そうだなぁ。
色々な意味で罪な人を働かせるのは……
巫女さん姿を見られたくなさそうだったから燐火ちゃん達には黙っておこう!
燐火ちゃんと芽衣子ちゃんに追いつくと、既におみくじを引いた後だった。
「なんで大吉なんだろう。冥王失格だよぉ……」
なぜか芽衣子ちゃんは大吉を引いて悔しがっていた。
「わたしも大吉だったよ。テプちゃんも引くよね」
「うん。何が出るかな」
燐火ちゃんがお金を入れた後、おみくじを引いた。
「末吉だったよ。どれくらい良いのかなぁ」
「たぶん凶より良かったと思うよ。芽衣子ちゃんは知ってる?」
「末吉……終末の吉みたいで羨ましい!」
終末の吉?!
なんだか不穏な感じになってるのだ。
ただでさえ少ない幸運が逃げていきそうで嫌なのだ……
芽衣子ちゃんの感覚は変なのだ。
「それより根付けを買おうよ。今年は蛇さんだよ」
「かわいいね。芽衣子ちゃんはどれにする?」
「私は金色一択だよ。冥王には金が似合うからね」
「僕は透明なのが良いかなぁ。かっこいいから。燐火ちゃんはどれにする?」
「白いのが良いかな。白蛇さんは縁起が良さそうだから」
僕たちは3人分の根付けを購入した。
「はいっ、テプちゃんはここにつけたらよいかな」
燐火ちゃんが僕が首から下げている道具袋に根付けをつけてくれた。
嬉しいのだ。
「それじゃ帰ろうか。ママがおしるこ作ってくれるから」
「やったぁ! 芽衣子ちゃんのママのおしるこ美味しいんだよね」
「食べたことがないから楽しみなのだ!」
神社の入り口でお辞儀をして帰る事にした。
今日は楽しかったなぁ。
ふと背後を振り返ると増子さんが男性と一緒に参拝者の列に並んでいるのが見えた。
そうかぁ〜。
去年意気投合していたから一緒に参拝したかったんだね。
応援してるよ!
陽翔お兄さん!




