第110話 怪盗ガウチョパンツの特殊能力?!
燐火ちゃんがバスの運転手さんを狂わせていた嘆願石を手にした。
嘆願石って、あと何個あるんだろう?
沢山作れるなら、このまま戦っていてもキリがないよね。
なんとか敵の正体が分かれば良いのだけど。
「みんな無事だったわね。事件が解決したから帰りましょ~」
「ほらっ、行くぞちびっこ共」
しず子さんとオハコが駐車場の方へ向かった。
「よしっ! 僕も魔法で大活躍出来たからから大満足だよ」
「当然なのだ。俺っちの魔力は最高に高まっているからね」
増子さんとプレナもしず子さん達に続いた。
「芽衣子ちゃんはここでお別れだね。またね!」
「うん! 次の戦いまでにパワードスーツを治しておくからね! 次も頑張ろう!」
芽衣子ちゃんを見送ったので、僕と燐火ちゃんも駐車場へ向かう事にした。
ふと気になって振り返ると……怪盗ガウチョパンツが体育座りをしていた!
何してるの陽翔お兄さん?!
僕は慌てて怪盗ガウチョパンツに駆け寄った。
「怪我したんですか?」
「怪我したよ……心にね……僕だけ活躍出来なかったからね」
「活躍したと思いますよ! 怪盗ガウチョパンツが運転してくれたから事故にはならなかったんだよ!」
「ブレーキ壊れていてバスを止められなかったけどね。僕が何かをしなくても、増子君の超能力で解決出来たと思うよ。僕が一番年上なんだから、一番活躍しないといけないのにね……」
「そんな事ないよ! みんなでつかんだ勝利だよ! 怪盗ガウチョパンツが居てくれたからみんな無事だったよ!」
「ありがとうテプちゃん。でも僕は弱い自分が許せないんだよ」
「それなら頑張って強くなろうよ! 燐火ちゃんだって毎日頑張ってるんだよ」
「そうだよな。子供たちが頑張っているのに努力しないでいじけているのは恥ずかしい事だ。ありがとうテプちゃん。元気が出たよ」
「良かった! それじゃあ、またね!」
「また会おう! 次の戦いの場で!」
怪盗ガウチョパンツが走り去った。
これで大丈夫かな。
僕は燐火ちゃん達の後を追いかけた。
翌日、僕は燐火ちゃんと一緒に登校しようと玄関を出たらーー
い、いるよ……怪盗ガウチョパンツが……
「やぁ、テプちゃん。さっそく修行を始めるぞ!」
「修行を始めるってどういう事? これから燐火ちゃんと一緒に登校するところなんだけど」
「なんだと! 僕の特訓に付き合ってくれないのか……」
怪盗ガウチョパンツが膝をついて両手で頭を抱えている。
人の家の前で迷惑だなぁ。
えっ?!
燐火ちゃんが僕を抱えた。
「はいっ」
燐火ちゃんが僕を怪盗ガウチョパンツに渡した。
どういう事?!
「テプちゃん、約束は守らないとダメだよ。陽翔お兄さんと約束してたんでしょ」
「燐火ちゃん、今は怪盗ガウチョパンツだから。約束はしているけど、いつ行くかは決めていなかったよ」
「それなら今行った方がいいよ! わたしは一人で登校するから! 頑張ってね!」
燐火ちゃんが走っていってしまった。
仕方ないな。
「怪盗ガウチョパンツ。一緒に特訓しよう!」
「了解だ。私の肩に乗るがいい」
僕は怪盗ガウチョパンツの肩に乗った。
「最初は何をすればよいのだ?」
「とりあえず走ってみるのはどうかな? 体力は大事だよ!」
「了解だ! 振り落とされるなよ!」
怪盗ガウチョパンツが走り出した。
……けどすぐに立ち止まった。
大人だから燐火ちゃんより速いけど、体力が尽きるのが速いね。
これだと大人と競うどころか燐火ちゃんにも追いつかれちゃうよ。
「もう疲れた。いきなり長距離を走るのは難しいようだね」
「それなら筋トレ頑張ってみよう!」
「了解だ! 筋トレをした事がないけど、どうやって鍛えるのだ?」
「う~ん、重い物があれば良いのだけど……そうだ! ついて来て!」
僕は怪盗ガウチョパンツの肩から飛び降りて走り出した。
行き先は増子さんの喫茶店だ。
カランカラン。
「いらっしゃい。飲食と世界の支配のどちらを望む?」
「ハバっちゃんの体を貸して!」
「なんて事を言うのだ? ここは喫茶店なのだぞ!」
アラハバキのハバっちゃんが怒っている。
何でだろう?
良く分からないけど怪盗ガウチョパンツの為だ!
「ハバっちゃんは重そうだから持ち上げてみて」
「持ち上げて良いのか? ものすごく怒っているようだが?」
「我は重りではないのだぞ!」
「でも重いんですよね?」
「うっ……それは否定出来ぬ」
「さぁ、ハバっちゃんを持ち上げて鍛えよう!」
「あぁ、やってみるよ。へやぁ!」
怪盗ガウチョパンツが頑張ってハバっちゃんを持ち上げようとするが、全く持ち上がらない。
これでは鍛えられないよね。
「失敗したなぁ。プレナくらいにしておけば良かったかな」
「勝手に失敗作にするな。これはどういう事なのだ?」
「この人を鍛えたいだけです」
「それならこれを飲めば良いだろ。あの娘には効果があったのだからな」
ハバっちゃんが銀色の容器を取り出した。
これは増子さんを超能力者に変えた宇宙人の飲み物!
これなら怪盗ガウチョパンツでも凄い力を得られるよね!
「これを飲んでみて!」
僕は怪盗ガウチョパンツに宇宙人の飲み物を飲むように勧めた。
「これを飲んで何が起きるのだ? 飲めば分かるか。不味いな」
怪盗ガウチョパンツが宇宙人の飲み物を飲み干した。
「何か変わりました?」
「いや、何も」
増子さんは超能力を身につけたのに、何で怪盗ガウチョパンツが飲んでも何も起きないんだろう?
「お主、それを飲んでも何も起きないのか? 何か特殊な能力を持っていいるのか?」
「アルコールに強いくらいですかね。僕は酔った事がないんですよ」
えっ、アルコールに強いだけで効果が無いの?!
そんな事ってある?!




