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第109話 無限の炎刃

「油断した! バスが敵にハイジャックされてしまった!」

「バスジャックだよ陽翔(はると)お兄さん」


 怪盗ガウチョパンツが燐火(りんか)ちゃんにツッコまれてしまった。

 こういう所が無ければカッコいいんだけどなぁ……


「なんでもいいけど。どうするの? 敵をぶっ飛ばす?」


 芽衣子(めいこ)ちゃんが拳を握る。

 頼もしいけど、無策で敵を倒したら交通事故を起こしてしまうよ。

 ここは僕が指揮をとるしかない!


芽衣子(めいこ)ちゃんは敵をぶっ飛ばしてバスの外に追い出して! 怪盗ガウチョパンツは事故を起こさないように運転して下さい! 燐火(りんか)ちゃんは芽衣子(めいこ)ちゃんがバスの外に追い出した敵を僕と一緒にやっつけるよ!」

「了解だよテプ君。海の王者の力を見せてやる!」

「任せろ! バスを運転出来る免許は持っていないが操作は変わらんだろう。安全に停止させる事くらいやってみせるさ!」

「頑張ろうテプちゃん! フラマ・サンタさんから貰った力で敵を倒すよ!」


 僕達は連携して嘆願石(たんがんせき)の悪魔を倒す事にした。

 フラマ・サンタさんから貰った力ってのが気になるけどね。

 あのクリスマス限定フィギュアにそんな力は無いハズだけど……


「最初は私の出番だね。ワニホールド!」


 芽衣子(めいこ)ちゃんの左腕のイリエワニの口が嘆願石(たんがんせき)の悪魔を拘束した。

 拘束された悪魔が急に口を開いた。


芽衣子(めいこ)ちゃん! 避けて!」


 悪魔の口から放たれた光線が芽衣子(めいこ)ちゃんの左腕のイリエワニの口を消し飛ばした。

 人間相手なら圧勝出来るけど、嘆願石(たんがんせき)の悪魔が相手では強度が足りないのかもしれない。


燐火(りんか)ちゃん! みんなを守って!」

「分かったよ芽衣子(めいこ)ちゃん!」


 燐火(りんか)ちゃんが愚者(ぐしゃ)の杖を具現化して詠唱を始めた。

 使う魔法は防御魔法の金 鳳 劫 火(ラナンキュラス)だ。


 シルクのドレスの如き優雅(ゆうが)な花弁よ

 幾重(いくえ)にも重なり我を守れ

 魅力に満ちた八重咲(やえざき)の花!


「立ち(ふさ)がれ! 金 鳳 劫 火(ラナンキュラス)!!」


 運転席と客席の間に炎の花弁が壁を作った。

 悪魔の光線攻撃は防げないけど、芽衣子(めいこ)ちゃんと悪魔の戦いの余波は防げると思う。


「さぁ、これで一対一だよ! シャチナックル!」

「ぐぅおおおお!」


 悪魔が芽衣子(めいこ)ちゃんのパンチを打ち払った。

 右腕の装甲が弾け飛ぶ。

 でも芽衣子(めいこ)ちゃんは止まらない。


「お次はホオジロザメの力だよ!」


 芽衣子(めいこ)ちゃんの右膝のホオジロザメの口が悪魔の頭をかじった。

 ホオジロザメの口が光ったと思ったら爆発した。

 悪魔が口から光線を放ったのだ。

 爆炎で視界が悪くなり、悪魔が一瞬芽衣子(めいこ)ちゃんの姿を見失った。


「今だ! プラズマウナギキック!」


 芽衣子(めいこ)ちゃんが悪魔の腹部を蹴り上げた。

 左足に搭載されている電気ウナギの力で悪魔が痺れた。


「バスから出て行け! カジキアタック!」


 芽衣子(めいこ)ちゃんが頭部のカジキのアゴを悪魔に突き立てて突進した。

 両足の先からジェットエンジンが火を噴きバスの外に飛び出していった。

 あのおじさん達、なんて物を作ってしまったのだろう。

 子供にあげていい物ではないよね。

 でもチャンスだ!

 怪盗ガウチョパンツがすかさず運転席に座った。


「止まらない! 危ない! とあっ!」


 何故かバスが止まらない。

 何とか他の車を避けているけど、このままだとぶつかっちゃうよ!


「どうしたの怪盗ガウチョパンツ?」

「ブレーキペダルがない。さっきの戦いで壊れたのだろう」

「ええええっ! どうするの?」

「ふっ……なにも出来ないさ」


 何言ってるの!

 なんとかしてよ怪盗ガウチョパンツ!

 危ない!

 少女が道路に飛び出して来たよ!

 このままだと轢いちゃうよ!


「止まれええええええ!」


 少女が手をかざすとバスが止まった。

 これは……増子さんの超能力だ!


(いや)しの噴水~」


 しず子さんの(いや)しの水がバスに降り注ぐと、壊れていたバスの部品が直っていった。

 しず子さんの魔法は、もう(いや)しを通り越しているよね。


「今がチャンスだよ燐火(りんか)ちゃん!」

「うん。増子おねえちゃんお願い!」


 僕と燐火(りんか)ちゃんが窓から飛び降りると、増子さんが超能力でバスの上まで運んでくれた。

 バスの上で仁王立ちの燐火(りんか)ちゃんと僕。


燐火(りんか)ちゃん! 力をあげるよ!」


 僕が魔獣モードになって燐火(りんか)ちゃんに魔力を送ると、燐火(りんか)ちゃんが詠唱を始めた。

 この詠唱の出だしは最強の魔女プロパガンダを倒した極大紅蓮躑躅ロードデンドロン・グランデと同じ!

 でも途中から違う詠唱になっている。

 ……燐火(りんか)ちゃんの新魔法だ!


 開闢(かいびゃく)より(たまわ)りし真の力

 あらゆる次元において 比類なき永久(とわ)の炎よ

 我らは示す

 全てを貫きし灼熱の千刃を持って

 大地を穿ち 我らの敵を討つと

 顕現(けんげん)せよ! 全てを貫きし気高き勝利の花々よ!


「貫け! 無限炎剣菖蒲インフィニット・グラジオラス!!」


 無数の炎の花弁が地面から生えてきて嘆願石(たんがんせき)の悪魔を貫いた。

 悪魔が逃げようとしたが、逃げた先の地面から新しい炎の花弁が生えて貫き続けた。

 そして、遂に悪魔が消滅した。

 燐火(りんか)ちゃんの新しい魔法は炎 剣 菖 蒲(グラジオラス)の強化バージョンだったんだね。

 運転手さんも無事だったみたいだ。

 しず子さんが(いや)しの水で回復させている。

 僕達魔法少女チームと芽衣子(めいこ)ちゃんの完全勝利なのだ!

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