第105話 冥王登場?!
ぼにょん!
暴れていた男の拳が少女に当たると変な音が鳴って弾かれた。
えっ? 何が起きたの?
「またせたね! もう大丈夫だよ!」
「芽衣子ちゃん?!」
僕達を助けてくれたのは芽衣子ちゃんだった。
でも、いつもと違う異様な姿はなんだろう。
なんだかゴツゴツした見た目で光沢があって、サイボーグとかロボットみたいに見えるんだよなぁ。
助けてくれたのは有り難いけど、このまま戦うのが危険な事には変わりない。
「相手は陽翔お兄さんでも勝てない相手だよ! 危険だから逃げよう!」
「い、や、だ! 私だけ仲間外れはにされたくないもん!」
「芽衣子ちゃん、一緒におじさんをやっつけよう!」
何言ってるの燐火ちゃん?!
子供二人で大人と戦うなんて無理だよ。
私は怪盗ガウチョパンツだって必死にアピールしてる陽翔お兄さんに任せようよ。
ほらっ、また襲って来たよ!
「俺はおじさんじゃねぇ! バカにすんな!」
「シャチナックル!」
芽衣子ちゃんが右手で殴ると襲ってきた男の人が吹き飛んだ。
芽衣子ちゃんってそんなに怪力だったっけ?!
「驚く事はない。シャチの力を使えばこのくらいの事は簡単に出来る事だ」
いつの間にか隣におじさんがいた。
このおじさんどこかで見た事があるような気がするんだけどな……
思い出した!
エピックなんとかって会社の社長さんだ!
「虎太郎おじさんだ! あれはおじさんが作ったの?」
「そうだよ。芽衣子ちゃんから戦えるようになりたいって頼まれてね。さすがに巨大兵器のアポカリプスシリーズはあげられないから、パワードスーツを作ってあげたんだよ」
「そんな簡単にパワードスーツを作ってあげていいんですか? 子供を戦わせるのは危険だと思うけど?」
「大丈夫だ! パワードスーツを着ていた方が安全だからね。実際に暴力男を撃退しただろ?」
「そう言われればそうなんだけど……」
「ねぇ、虎太郎おじさん。芽衣子ちゃんが好きな物がいっぱい入っているね」
「良く分かったね燐火ちゃん。各部に芽衣子ちゃんが好きな動物の力を再現した装備を搭載している。これが芽衣子ちゃんが望んだ最強の冥王、アルティ芽衣子だ!!」
虎太郎おじさんがドヤ顔で言った。
ボディのダイオウイカ、右腕のシャチ、左腕のイリエワニ、右足の電気ウナギ、左足のホオジロザメ、頭部のカジキマグロ……
なるほど、芽衣子ちゃんが大好きな凶悪生物だらけだね。
でもしっくりこないんだよなぁ。
冥王っていったらもっとダークで闇の魔法を使うイメージだからね。
メタリックなパワードスーツで良いのだろうか?
芽衣子ちゃん自身が納得しているなら問題ないのだろうけど……
「ふざけるな……俺は……俺は……うぎゃっ」
芽衣子ちゃんが殴り飛ばした男が急に苦しみだした。
そして腹部から悪魔が生えて来た。
予想通り!
暴れていたのは嘆願石の影響だったんだね。
「燐火ちゃん、一気にやっつけるよ!」
僕は腕輪の力で魔獣モードに変身した。
そして燐火ちゃんが愚者の杖の杖を具現化して魔法を使おうとしたら、悪魔が燐火ちゃんに急接近してきた。
愚者の杖を具現化した事で危険な敵だと認識したのだろう。
「我が配下に手を出すな! ワニホールド!」
芽衣子ちゃんが左手のワニのあごで悪魔を挟んだ。
拘束された悪魔は動けない。
だけど……悪魔が口を開いた!
この前と同じで強力な光線を放つつもりだ!
「急いで燐火ちゃん! 悪魔が光線を出す前にやっつけるよ!」
「任せて!」
燐火ちゃんが詠唱を始めた。
難を転じる逆転の果実よ
全ての苦難の超える 数多の実を結び
我が望む勝利の為に弾け飛べ
光輝く勝利の実!
「弾けろ! 赫 々 南 天!!」
無数の炎の果実が悪魔に直撃した。
芽衣子ちゃんのワニアームも壊しちゃったけど仕方がないかな。
悪魔が消えた後に出て来た嘆願石を燐火ちゃんがつかみ取った。
「テプちゃん、3個目の嘆願石が手に入ったよ」
「良かったね燐火ちゃん」
「流石大魔導士だな。今日のところは助けられたよ。でも次は私が助けるからね」
いつの間にか怪盗ガウチョパンツが復活していた。
今日のところどころか、いつも助けているような気がするけど。
「みんなで頑張ったからだよ」
「そうだね。芽衣子ちゃんが居なかったら大変だったもんね」
「テプ君も頑張ったよ! これからもよろしくね」
僕達は握手をした。
なんだか周囲が騒がしいな。
どうやら僕達は目立ってしまっているみたいだ。
禍々しい杖を持ったクマのシャツを着た燐火ちゃん。
メタリックなパワードスーツを着た芽衣子ちゃん。
紫の蝶のマスクをした怪盗ガウチョパンツ。
黒色で赤い稲妻を纏ったウサギの様な僕。
商店街には似合わない仲間達だよね。
ちょっと恥ずかしかたので紅鳶町へ帰る事にした。




