第101話 嘆願石
お化け屋敷の外で陽翔お兄さんと翔太君が元気になるのを待った後、僕達は陽翔お兄さんが運転する車で紅鳶町に戻った。
悪魔みたいなのを倒して入手した謎の赤い玉が気になるけど、今日はもう遅いから、お家に帰って休むのだ!
陽翔お兄さん達と別れた後、僕と燐火ちゃんは帰宅した。
「テプちゃん起きて!」
燐火ちゃんに揺すられて目が覚めた。
時計を見るとまだ朝の5時だった。
「どうしたの燐火ちゃん? こんな朝早くに何かあったの?」
「纏蝶さんのお店に行こう! 早くこの玉が何なのか鑑定してもらわないと!」
「まだ5時だよ~。纏蝶さんのお店はやってないでしょ~」
「いまから並ばないと早く見てもらえないでしょ?」
「並ばないと入れないような人気はないよぉ~。いつもガラガラだから10時からでいいでしょ」
「もう! だらしないんだから! テプちゃんはこの玉が何か気にならないの?」
「気にはなるけど、おやすみするね」
僕は再び眠りについた。
「テプちゃん起きて。9時30分だよ! そろそろ出発しようよ」
僕はのそっと起きて押し入れから飛び降りた。
少し早いと思うけど、これ以上燐火ちゃんを待たせるのは可哀そうだね。
「さて、行こうか!」
「うん!」
僕と燐火ちゃんは急いで商店街へ向かった。
まだ10時にはなっていなかったから纏蝶さんの店は開いていなかった。
初めて見たけどシャッターも怖ろしいな。
何で纏蝶さんは、ドクロと蝶と筋肉が好きなんだろう?
ガラガラガラガラ!
通行人に変な目で見られながらお店の前で待っているとシャッターがあいた。
「あらビックリした! 燐火ちゃんとテプちゃんじゃないの! こんな朝早くからどうしたの? お茶を用意するから早く入って」
纏蝶さんが僕達を招き入れてくれた。
そして纏蝶さんが用意してくれた椅子に座った。
「纏蝶さん、この玉を鑑定して欲しいの」
燐火ちゃんが謎の赤い玉を纏蝶さんに渡した。
纏蝶さんが驚いた顔をしている。
赤い玉は危険な物だったのだろうか?
燐火ちゃんは、そんな纏蝶さんの反応を見て喜んでいる。
「やっぱりレアアイテムだったのかな? 纏蝶さん驚いてるもんね」
「嘆願石……」
纏蝶さんが呟いた。
嘆願石?
聞いた事がないけど危険なものなのかな?
「纏蝶さん、嘆願石って何ですか?」
「願いを叶える代わりに、人の魂と命を吸い上げて育つ魔物を生み出す石よ。これは七つの大罪の一人、憤怒の碇七郎が作った呪いの道具なの」
「でも碇七郎っていないんですよね?」
「そうよ。ヤツは私の両親と相打ちになったからね。だけど、何故かヤツがばら撒いた嘆願石が再び現れた。私と陽翔が全て回収したはずなのに……教えてテプちゃん。何が起きたの?」
僕は隣町のお化け屋敷で起きた事を纏蝶さんに教えた。
「そんな事が隣町で起きていたのね。誰かがお化け屋敷が繁盛して欲しいという願いを利用して嘆願石を使わせたのね」
「今までの敵より強かったです。地球の鉱物の力で生まれた鉱魔だって一撃で倒した燐火ちゃんの魔法でも一撃で倒せなかったんだ」
「燐火ちゃんの魔法で倒せなかった?!」
「そうなんだよ。神の炎が燃え広がらなかったの! 消えるまで連続攻撃して倒したんだよ!」
「過去に嘆願石で生まれた魔物と戦った事があるけど、私の力でも倒せている。私の攻撃より強大な破壊力がある燐火ちゃんの魔法に耐えるのであれば、私達では勝てないかもしれない」
珍しく纏蝶さんが弱気になっている。
過去に倒されているとはいえ、宿敵が使っていた道具がパワーアップして再登場していたら怖いよね。
ここは燐火ちゃんと僕が強力して纏蝶さんを元気づけないとね。
「大丈夫だよ纏蝶さん。手ごわかったけど、僕と燐火ちゃんなら倒せるから! そうだよね燐火ちゃん?」
「うん、手強くてもアイテムを落とす敵は大好きだよ。沢山倒して嘆願石を集めよう!」
「危険だから止めなさい……とは言えないわよね。元々私達が誘っていたのだから。でも七つの大罪が出た時は私達が戦うわよ。大人の人間は私たちが戦うべきだと思うから」
「そうしてくれると助かります。いくら悪人でも、人間を丸焼きには出来ないですから」
「七つの大罪はアイテムを落とさないから纏蝶さんに任せるよ」
「ありがとう燐火ちゃん、テプちゃん。一緒に頑張りましょうね」
僕と燐火ちゃんは纏蝶さんと握手をした。
話を終えた後、燐火ちゃんは嘆願石と引き換えに纏蝶さんのお店の道具を手に入れていた。
新しいコレクションが増えたって喜んでいたけど、何であんな不気味な物を欲しがるんだろうと思った。
でも燐火ちゃんが喜んでいるから良いかな。
アイテム交換が済んだ後、僕と燐火ちゃんは帰宅した。




