ロードワーク
その日の朝は霧に蔽われていた
ウォーミングアップをして、闇の彼方へと走り出す
空気は冷たくひんやりと、そこは――――異界だった
太陽のない月の世界
霧に蔽われた世界
空に瞬く原始の光が大地へと降り注ぎ、後は人の手による贋作の灯火だけが行く末を照らす
幻想の中へと人々は想いを馳せて、今は常世の理だけが世界を支配する
わたくしが、ただ静寂に一人
今日の欠けらが溢れ出し、情景は緩慢に変わりだす
凍った時が動き出し、静けさが東より溶けてゆく
暖かさと共に来るは今日
繰り返される世界の始まりが、この星の完成度を再認識させる
暗い冬が終わりを告げ、そして春が訪れた
スタート地点に戻った時、世界は完璧な日常となる
朝の空気、大きく吸う
清々しく、爽やかだった
そして私は――今日へと――――想いを向けだした