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エピローグ 新しい魔王、そして

「……なるほど。そうなったのか」


 華やかな宮殿の一角。巨大で雄大なホールで、2人の男が互いに向き合っていた。


 1人は勇者ベルド。片膝をついて、謹厳な表情からは近寄りがたい雰囲気が感じられた。


 そして、ベルドが礼を尽くす相手は派手な服と王冠で着飾った男。この国の国王、ジェルバ・ユーシス・アルベリーゼだ。


 一介のハンターだが、その力と功績を認められ、王に直接謁見することが許された英雄。勇者ベルドという名前が持つ価値だが、実はベルドもその権限を使ったのは今回が初めてだ。


「ただでさえ、最近魔族の目撃報告が少しずつ上がってきたところだった。和平を結んだ後も頑固に交流を拒否してきた魔族が突然目撃されたので、余もその動向を把握しようと努力していた。しかし一歩遅れたようだな」


 ジェルバ王の言葉に、左右に並んだ臣下達が重い雰囲気で口を開いた。


「先代の魔王を処断し、魔族らと休戦を結んだのが3年前。むしろ今になって新しい魔王が即位したのが意外かもしれません」


「望んでいなかったことですが、十分予想されていたことでもあります。結局次の戦争に備えなければなりません」


「受動的に防御するだけでは主導権を奪われます。いっそ我らが先に……」


 最後の臣下が言葉を呑み込んだ。ベルドは恐ろしい目つきで彼を睨んだのだ。彼は唾を飲み込んで一歩後退した。


「ベルド卿」


「……僭越ながら陛下。民はやっと平和を手に入れたところです。再び戦争を起こし、その平和を自ら壊してはいけません」


「卿の言葉が正しい。しかし、条約を先に破ったのは魔族の方だ。彼らの陰謀を放置することはいけない」


「魔族もまだ全面的な攻勢を試みてはいません。今度自分の故郷で危険なことを企てたんですが、その陰謀もまた成功裏に阻止しました。これからも奴らの軽挙妄動を見逃してはいません」


「……卿が直接乗り出して事態を解決するという意味か?」


「そうです」


 ベルトの自信満々な宣言は沈黙を招いた。


 ジェルバ王も、そして臣下達も知っている。名実共に人類の最強者、ベルドの地位を。彼ができると言えばできることだし、彼ができないと言えば他のいかなる人間にもできない。


 しかし、このまま素直に彼の言葉だけを信じる純粋な人ではなかった。1人の大臣が口を開いた。


「だがベルド卿。彼らはすでに新しい王を選出した。我々人間の王と違い、魔族の王は力も頂点に達した者でなければならない。しかも3年間空席だった席をやっと取ったのなら、逆に3年間魔王に相応しい力を備えることを待っていたということではないでしょうか?」


「そうでしょう。魔王は自分が直接相手にします。3年前にそうだったように」


「勝てるでしょうか?」


「自分の剣は200年間魔族を支配してきた王の血の味をまだ覚えています」


 3年が経ってやっと魔王位になった奴に勝てないと思うか、という言葉をあえて口にする必要もなかった。


 ジェルバ王が口を開いた。


「……良い。魔族を相手にすることにおいて、ベルド卿以上の専門家はいない。主要なことは卿に任せる」


「ありがとうございます」


「ただし、卿にだけすべてを任せることはできない。我々にも魔族を警戒する態勢は必要だろう。卿も魔族のすべての陰謀を1人で防げるとは思わないだろう?」


「仰る通りです」


 ジェルバ王が玉座で体を起こした。


「現時間から、我がアルベリーゼ王国は正式に魔族の侵攻に対応することを明らかにする。魔族の動向を全方位で監視し、彼らが行ってくるすべての危害に真っ向から立ち向かう。勇者ベルド・リオネスト、そして彼の故郷であるベルドの町はその体制の最前列で魔族と戦うことにする」


 国王の宣言。


 それを聞いて、ベルトは内心では会心の笑みを浮かべた。


 


 ***


 


「終わったよ」


 王城の入り口。マナードと一緒に待っていたシュリに会うやいなや、ベルトはにっこりと笑いながらそう言った。


「……〝200年間魔族を支配してきた王の血の味をまだ覚えています〟って? ほら吹きがひどすぎじゃないの?」


「聞いてた?」


「人間でもないし、私が聞けないわけがないじゃない?」


「それでも嘘じゃないじゃん。戦いしながら互いに傷つけてたのは事実だから」


 シュリは苦笑いをした。それも間違った話ではなかったから。


「よくやったわ。おかげで必要な約束はほとんどもらったし」


 今回国王に正式に報告したのは、単に人間に警戒心を与える為だけではなかった。魔族の動きを警戒するものの、その主導権はベルドが握る。そのような体制確立の為の場だった。その為にベルドは国王の宣言後にも様々な事項を国王や大臣達と議論し確約を受けた。


「シュリ、これからどうする?」


「じっとしていたら先手を取られるだけなのよ。今回〈大魔の行進〉を使った陰謀を阻止された以上、カオンの奴ももっと慎重で悪辣な手段を試みるかもしれないわ。そうなると対応しにくいの。力ならともかく、戦略戦術の方では私よりあいつの方がましだからね」


 現魔王カオナードは、シュリが魔王だった時代には彼女を補佐するナンバー2だった。特に戦時状況における彼の役割は戦略戦術を立案し進言する役割、つまり参謀だった。彼が提案した戦術に舌を巻いたのは一体何度だったのか。


 ベルドもその気持ちに共感した。ベルドも戦略戦術に優れたタイプではなく、大戦争当時、参謀カオナードの策略にやられたのが1度や2度ではなかったからだ。


 そんな気持ちを共有しているので、2人の気持ちは一致していた。


「こっちから先に攻め込むよ。カオンの奴に会って、直接話をするわ」

ここまで読んでくれてありがとうございます!

シュリが何をしようとしているのか気になる! とか、次の話が気になる! とか、とにかく面白い! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とブックマークを加えてください! 力になります!


そしてお知らせです。

以前に一度お知らせした部分ですが、今回を最後にしばらく本作は無期限休載に入ります。

連載中断ではなく、本話はあくまでも第1章のエピローグであるだけで、小説全体のエピローグではありません。

しかし、私が現在就職イシューで忙しい状況なので、色々な小説の連載を並行しにくい状況です。なので本作の休載を決定しました。


他の小説である【逃げてしまった神様が世界を〝観察〟しています】が今週更新を再開する予定ですが、そっちも第1章を終えた後は本作と同様に無期限休載に入る予定です。


いつ更新が再開されるかは私自身も知りませんが、いつか戻ってくる日までお待ちいただければ幸いです。

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