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パート8:種族と種族(11)

「防御を展開せよ!」


 ゲントロンが手で手印を結んで魔法陣を展開した。そこに他の魔族の魔法陣まで重なって強力な魔法のカーテンを形成した。降り注ぐ火炎魔法はカーテンに傷をつけることさえできなかった。


「〈モルゴアのカーテン〉。ただ火炎を防御する為に開発された対火炎防御魔法だな。瞬発力は合格点だ。だが……」


 シュリは右手を上げた。その手を中心に小さいながらも密度の高い魔法陣が数十個展開され、中心に小さな獄炎の玉が現れた。


 ごく小玉。それこそ光点の一つだと言えるレベルだった。しかし、そこに圧縮された莫大な魔力量は魔族達を当惑させるのに十分だった。


「あ、あれ何だよ!? 〈地獄の神殿〉の10倍になる魔力をあんなに小さい大きさに……!」


「騒ぐ余裕があるのか!」


 魔族達が展開した〈モルゴアのカーテン〉がより一層大きくなり硬くなった。まさに〈地獄の神殿〉であっても防御できるほどに。


 だが、シュリはそれを見て鼻で笑った。


「判断力は足りない。授業として教えてやる。〈地獄柱〉とか〈地獄の神殿〉などの|練習用〈・・・〉とは格の違う真の獄炎魔法を」


「……くっ!」


 ゲントロンは急いで手印を結んだ。シュリの周りに100個に達する魔法陣が現れた。〈滅界八陣雷爆〉が3発、そしてあらゆる雷電や氷、風に念動力まで。火を除いたあらゆる魔法がシュリに降り注いだ。無理な魔法行事でゲントロンの鼻から血が流れた。


 しかし、シュリは一瞥さえしなかった。


「ふん」


 鼻で笑うとともに展開されたのは、ゲントロンが発動したのと全く同じ種類と威力の魔法。ゲントロンの魔法は正確に相殺された。しかし、シュリはゲントロンと違って終始平然としていた。


 シュリは手を前に伸ばした。


「心配するな。死なないように調節するつもりだから」


 獄炎魔法〈極小陽砲〉。


 圧縮された光点が光線となった。それが〈モルゴアのカーテン〉に当たった瞬間、大爆発が起きた。集束した獄炎が解けて、まるで一帯を全部吹き飛ばそうとするかのように暴れた。


 だが、その猛威は〈ビサナのゆりかご〉の壁に触れる直前に不自然に止まった。まるで見えないドームが獄炎の拡散を防ぐように。


 獄炎が暴れたのは短い瞬間だけ。火はすぐにまた凝縮され、さっきよりもう少し小さな光点になってシュリに戻った。


 火が消えた場所で魔族達の姿が現れた。溶けてしまった地面の上に真っ黒に焼けてしまったまま倒れていた。そして溶けた地面から彼らを守る小さな結界があった。もちろん彼らが自ら展開したわけではない。


「ぐぅ、あ……っ」


 シュリはうめき声をあげる彼らに近づいた。黒く焼けてしまって誰が誰なのか分からなかったが、とにかく4人とも生き残ってた。


 シュリは彼らの中で最も大きな奴を足で軽く触った。恐らくこいつがゲントロンだろう。


「気絶なふりはするな。魔法で命と意識が消えないように支えているから」


「……な、ぜ……ですか……」


 かすかな声が何を聞こうとしているのかはあえて問い返す必要もなく知っていた。


「逆に聞おう。お前はなぜ人間をまだ敵対している?」


「人間、は……わ、れ、われ、の、敵……」


「誰がそんなくだらないことを決めたんだ? それとも人間が存在するだけでも魔族が死ぬのか? そんな法則なんかはどこにもない。人間が魔族を憎悪し、魔族が人間を憎悪しただけだ。発端さえ忘れた古い憎悪にいつまで依存するつもりだ?」


「人間、が、我々を……!」


「単刀直入に聞く。お前自身は人間に誰を、あるいは何を失ったのか?」


 その問いにゲントロンは口をつぐんだ。


 沈黙する彼にシュリの声が舞い降りた。


「他の奴らは理解する。ミッドカーは人間との戦争で父を失い、ジトラは兄と恋人を失った。知っている」


「なら、ば……!」


「そして失わせた張本人を、その周りの人までみんな殺してしまったということも知っている」


 シュリは他の魔族に一瞥した。


 真っ黒に焼けてしまったので、彼らがシュリの言葉を聞いて何の表情をしたのかは見当たらなかった。


 しかし、ある感情は見なくても分かる。それだけの歳月と経験を、シュリは魔王として彼らと共にしたのだから。


「人間の手に死んだお前らの家族も、その前は無数の人間を殺した。彼らを殺した人間達も復讐が目標だった。そしてお前らも、他の魔族も、そして人間達も復讐対象だけでなく、彼らと関係のない者までも一緒に憎悪しながら殺してきた。だからこそ数百年、数千年……記録さえ失ってしまった昔から、クソの憎悪が続いたのだ」


「それが……間違っているという……のですか?」


「そう、間違えた。お前はそれが正しいと思うのか? そんなタワゴトを言うなら、今私の手で貴様の息の根を止めてやる」


 シュリは再びゲントロンを見た。


「しかもゲントロン、お前は誰かを失ったこともないはずだろ? アマドラン一族は戦争に参加したことがほとんどない。それさえも参加した者も全員生存し、周辺人と言える者もいない」


「同胞の、苦痛、を、見守る、ことは……」


「……久しぶりに魔族の血が沸き立つ。間抜けな奴らを皆殺しにしたくなる」


 シュリはため息をついた。


 どうせこの場で彼らを説得できるとは思わなかった。そんな時間もないし。


 最初から彼らは全員逮捕して連れて行くつもりだったから、話は後でしてもいいだろう。


「だからくだらないことするな、ゲントロン」


 シュリは指を1度動かした。ただそれだけで、ゲントロンが密かに準備していた魔法陣が失敗に終わった。


「一応お前らは全員連行だ。話はその後じっくりするようにしよう」


 その言葉と共に展開された魔法がシュリと魔族達を一度に包んだ。一方シュリの体からは魔族の証拠である部位が消え、外見と服装まで変わり、〝カカシ使い〟の姿に変わった。


 そして〈ビサナのゆりかご〉が解除された直後、彼女らの姿は平原から消えた。

ここまで読んでくれてありがとうございます!

シュリ、強い! とか、次の話が気になる! とか、とにかく面白い! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とブックマークを加えてください! 力になります!

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