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パート8:種族と種族(7)

 シュリは覆面の下で苦笑いした。


 ――そろそろ本格的にかかってこようとしているんだね。派手に挑発したのはいいけど、そろそろ手に余るかしら?


 そんな風に思う余裕さえなかった。


 突然、シュリの目の前にゲントロンが現れた。彼の拳がシュリの顎を狙った。シュリは体を反らして避けた。しかし、後方から現れたミッドカーが魔法を展開した。


「死ね!」


 宙から現れた魔力の鎖がシュリを拘束した。対象を縛った後、魔力を強奪して死に至らしめる〈死神の鎖〉だった。しかし、シュリが手首のスナップだけで振り回した直剣が鎖を壊した。


「なかなかやるじゃん!」


 ミッドカーが再び魔法陣を展開した。シュリは大剣を彼に振り回そうとしたが、その瞬間突っ込んできたジトラがゲントロンとともに攻撃してきた。シュリはジトラの魔剣を直剣で防ぎ、ゲントロンに向かって大剣を振り回した。


 しかしその間、ミッドカーの魔法が完成した。シュリの周りの空間全体が燃え上がった。


「くっ!」


 シュリは燃える空間から抜け出そうとした。しかし最後の魔族とジトラが同時に〈死神の鎖〉を展開してシュリを拘束した。そして炎の中に飛び込んだゲントロンが手のひらを出した。その手のひらに魔法陣が浮かんでいた。


 ――あれは体内を壊すのに特化した体術魔法〈心臓壊し〉かしら?


 シュリは体を回した。〈死神の鎖〉の拘束のせい大きく動くことはできなかった。しかし、力で無理に動いて少し回すことには成功した。


 ゲントロンの手のひらはシュリの肩の鎖に命中した。〈心臓壊し〉の魔力が鎖に浸透し、鎖はそのまま破壊された。


「しまった……!?」


「ありがとね」


 おかげで腕の稼働範囲が確保された。シュリは剣を振り回し、残った鎖を全部切り取った。そして大剣を縦横無尽に振り回して燃える空間そのものを隔離した。しかし、それによってできた空間の壁が一時的にシュリの移動も防いでしまった。


「なめるな!」


 シュリの目の前に〈空間転移〉の門が開き、ジトラの魔剣の刃が突然飛び出した。首を回して刃を避けたが、刃から突然炎がぱっと吹き出した。


「私が言いたいことだわ」


 シュリはその攻撃に対応さえしなかった。その代わり、〈空間転移〉の門に直剣を突き込んだ。反対側に突き出た刃がジトラの肩を斬った。


「うぉっ!?」


 ジトラが引き下がる間に空間の傷痕が癒えた。シュリは即座に動いてゲントロンの方に突っ込んだ。そして繰り返した火炎魔法で燃えてしまったマントを脱いで、ゲントロンに投げつけた。


「これしきの!」


 ゲントロンは拳を突き出した。その拳がマントに触れた途端、激しい爆発が起こった。しかしマントは爆炎と衝撃波を半分ほど照り返した。


「なっ!?」


「それ、それなりに防御魔法がかかったマントなのよ」


 シュリがマントの向こうで振り回した剣がゲントロンの左腕を切断した。ゲントロンが歯を食いしばった。追撃しようとしたシュリだったが、他の3人の魔族が一斉に襲いかかって退くしかなかった。


「よくも逃げるんだな!」


 追いかけてきたジトラが魔法陣を展開して、その魔法陣に魔剣を突き刺した。直後魔法陣から無数の刃が出てシュリに飛んできた。シュリはそれを両手の剣で全部迎撃した。だが次の瞬間、高速で近づいてきたジトラがシュリの後ろを急襲した。


 シュリは後ろを振り向いながら直剣を振り回した。いや、振り回そうとした。だがどこからか飛んできた〈死神の鎖〉がその腕を拘束し、ジトラの魔剣が肩を斬った。傷そのものは浅かったが、斬られた瞬間、魔剣の力がシュリの魔力を一部強奪した。


「っ!?」


 瞬間的に体から力が抜けたシュリがよろめいた。その前に突っ込んだゲントロンが右手で拳を握った。その拳の前に魔法陣が展開された。横では剣を取り直したジトラが再び魔法陣を展開して剣を差し込んでおり、遠くではミッドカーと残りの魔族が魔法陣を展開していた。


「とどめだ」


〈破山崩拳〉。


 ゲントロンの拳がシュリの腹部に向かって破壊力を吐き出した。同時にジトラの無数の刃がシュリを乱切り、ミッドカーが仲間と一緒に発動した〈地獄柱〉の炎の柱がシュリを燃やした。


 地獄の炎が静まった後、現われたのはめちゃくちゃに燃えて倒れたシュリの姿だった。真っ黒に焼けてしまった様子だったが、ゲントロンはむしろ舌を巻いた。


「〈地獄柱〉にやられてもまだ形を保っているとは、なかなかの奴だな。もう動けないようだが」


 ゲントロンはそう言って結界を解除した。〈ビサナのゆりかご〉が消え、外部の魔力が流れてきた。


 その瞬間、ゲントロンはびくっと驚いた。そしてすぐに〈ビサナのゆりかご〉を復旧した。


「何だ、どうしたんだ?」


「あの者に大量の魔力が流れ込んだ」


「はぁ?」


 戸惑う魔族達の目の前で、シュリはゆっくりと体を起こした。やっと形だけが残っていた体にいつの間にか魔力が充満していた。そして焼けた肌が落ちて新しい肌が生えるのかと思ったら、あっという間に服まで含めて完全に以前の姿を取り戻した。


「ありがとね。おかげさまで再生する魔力が集まったわ」


 剣を握って話すシュリ。魔族達は彼女を警戒心のこもった目で眺めたが、間もなくゲントロンが口を開いた。


「見栄を張るな。再生したのは予想外だが、今入ってきた魔力を全部再生に使ったのだろう。今貴様の体に魔力が空っぽになったのが感じられるぞ」


「それは正しいわ。でもね……」


 シュリは自分の魔剣を収納魔法に入れた。そして左手に小さな魔法陣を展開した。分身に残っていたほんの少しの魔力、そして分身そのものを構成する魔力まで全部その魔法陣に集まった。


「それを知ったところでもう遅いわよ。私の勝ちだからね」


 魔族達が魔法陣を展開したが、攻撃が飛んでくるよりシュリが魔法を結界に放つ方が早かった。〈ビサナのゆりかご〉に穴が開き、巨大な存在感を持つ何かが〈空間転移〉で次元を超えた。


 薄紫色の髪と紫水晶のような瞳の女がその場に降臨した。


「こんにちは。終わりに来たわ」

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