パート1:可愛い受付嬢の日常(3)
「ゲームでお金を取る能力がないから夜襲なんて、稚拙すぎじゃないの?」
「は、騙された金を取り戻すだけだぜ? おまけに手数料も少しとってやる。貴様のその身で、なぁ!」
男達はあたかもシュリを品定めするかのように汚い目で見た。シュリは分身にもかかわらず、不愉快で嫌な感覚で舌打ちした。
「ったくね、相変わらず下品な人だわね。ねぇ、知ってるかしら? アンタみたいなバカ達のせいで、ハンターギルドが最近イメージ管理に困っているのよ」
「は、ギルドの奴らなどは金握ればいくらでも黙ってる奴らだぜ」
「お金も曖昧なくせにイメージだけぶち壊すバカは該当しないじゃない」
「……貴様、あえてオレが誰なのか知って……」
「アント・マーカス、ターク・シンレイ、ジョド・メル、アディロン・ニューホーク。Cランクのアント・マーカス、アンタを筆頭に、このガラムの町一帯で活動するハンターチームでしょ? 人性はゴミすぎ、あらゆる迷惑をかけるけど、このガラムの町では最高の実力を持つハンターだからギルドでも処置困難だわね」
ハンターギルドは実力と実績をランクで表す。ランクの種類はFからAまで、そしてAの上に超越者のランクでSがある。Cは1つの町に1人の割合でいる、なかなか高い等級だ。
一方シュリの口から情報がどやどやと出て、アントはちょっとぼうっとした顔になった。しかし、すぐににやりと笑い、背中に背負った大きな剣を抜いた。
「オレ達が誰か知っても堂々とは、強心臓だぜ。それとも貴様も男が欲しかったかぁ?」
「前から目をつけていたわ。〝ゴミ〟を収集してリサイクルするのが私の趣味なの」
「ほう、くちばしはよく滑らす」
アントは手を上げて合図した。すると他の男達もそれぞれ武器を取り出して姿勢を整えた。
さっき賭博場でシュリを直接攻撃しようとしたやせっぽちの男――タークが短刀を取り出して握った。アントの次に体の大きい男であるアディロンは鉄のナックルを手にし、ローブとともに陰気な空気をまとった男のジョドは空中に魔法陣を描いた。
――なかなか、かしら。
彼らのうち、Cランクはアント1人だけで、あとはその下だ。でもそのぐらいでも並みの町ではエース扱いにされるほどの実力だ。
だが、シュリには毛頭ほどの危機感も与えることはできない。
――制圧するのは簡単だけど、久しぶりに捕まえた獲物だからね。大きく圧倒する方向に行ってみようか。
シュリが心の中で決めたことと、ジョド以外の男全員が飛びかかったのはほぼ同時だった。
正面からアント、左から短刀のターク、右からナックルのアディロン。タークが両手の短刀を高速で振り回して牽制し、アディロンの脅威的な拳がタークから逃げ道を遮断し、そのように動きを縛られた相手をアントの大剣で攻撃する。そして連係の隙間を埋めるようにジョドの攻撃魔法が飛んできた。
――いい連係だわ。Cランクのチームとして名を馳せるに値する。
でもシュリはあちこち動き回って、すべてを避けた。最初は「逃げる才能しかねぇのかぁ!」と嘲笑っていたアントも攻撃が上手くいかず、だんだんいらだっているように表情が歪んだ。するとシュリが逆に彼をあざ笑った。
「さっきお金を失った時と同じ表情だけどね? 何、不安でもあるの?」
「黙れ!」
怒りで叫んだが、それだけ。アント達の連係は崩れなかった。
――腹が立っても戦いの流れを乱さない。ふむ、やっぱ欲しいもの。
大体把握した。そう判断した瞬間、シュリはすぐに攻めに転じた。
まず左側。短刀を持ったやせっぽちの男、タークの短刀を拳で壊して腹部を殴りつけた。
そして右側。ナックルをはめた大男、アディロンの拳をナックルごと破った。
直後に正面。アントの大剣を蹴り飛ばして破壊し、そのまま顔を蹴飛ばした。
最後。後方にいた陰気な魔法使い、ジョドに巨大な火炎球を放った。彼女の火炎球はジョドの小さな火炎球を飲み込み、そのままジョドに直撃してローブを燃やした。
「全然緊張感がないわね。もうちょっとまともにできないの?」
「っざけんな!」
アントが体を魔力で覆った。なかなか強力な身体強化魔法だった。タークとアディロンもアントほどではなかったが身体強化を使用し、シュリの火炎を振り払うことに成功したジョドも再び魔法を使用した。
だが。
「根性だけは褒めてあげるわ」
短刀のターク。強烈なミドルキックで腕と肋骨を一度に折って、腹部に撃った掌底打ちで遠くへ吹き飛ばした。
ナックルのアディロン。残った拳はもちろん、両足まで壊して顎を蹴った。
魔法使いのジョド。氷槍魔法で両肩と膝を貫き、地面に通せ、火炎で全身を燃やした。
アント。たっぷり浴びせかけた拳の連打で全身の骨を全部折って、最後の一撃でタークのように吹き飛ばした。
ここまでかかった時間、たったの2秒。
すでにアント達の意識はなかった。でもシュリが指パッチンをすると、暖かい光とともにアント達の傷がすべて治癒し、意識が回復した。
「……オレは……!?」
「優しくやってくれたのにそんなにぶち壊されるなんて、弱すぎじゃないの?」
「黙れ! 何をたくらんか知らねぇが……」
「はいはい、もう一度」
激しい炎が4人を全員燃やした。ちょうど死なないほど燃えてしまった彼らの意識だけを魔法ではっきりと維持させた。そしてわざと誇示するかのように、太陽のような巨大な火の玉をいくつも作り出した。その姿にアントは驚愕した。
「く、狂っ……程なく警備が来……」
「来る訳ないでしょ。早くから結界を広げておいたの。まさかそれも感じなかったの?」
熱気が吹き荒れたが、皮肉にもアント達はただ生きているだけの半死半生だった。感覚がもうほとんど死んでしまって熱気をまともに感じなかった。もちろん逃げる為に動くことも不可能だった。
「ば、バケモン……一体、正体が……なん……」
「そんなことを正直に教えてくれる訳ないでしょ。バカなの?」
彼らは再び回復魔法で治療した。一瞬にして万全の体調に回復したこと自体も、アント達には驚愕したことだった。そのように強力な魔法を誇示し、太陽のような火の玉で威嚇しながら、シュリはゆっくりと本論を切り出した。
「提案したいことがあるの」
「……断る」
「あら、それでもいいの?」
火の玉をアントに近づけると、恐ろしい熱気に彼は後ずさりした。
――まぁ実際に殺すつもりは当然ないけど、こんな奴らは命で脅す方が簡単だから。
アントは顔を険悪に歪めて口を開いた。
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