パート8:種族と種族(3)
最近、ベルドの町をベルドの村と表記するミスに気が付きました。
近日中に修正します。混同をおかけして申し訳ありません。
シュリはすぐ魔法を発動した。
使われた魔法はまた〈地獄の手〉。しかし今回はまるで両手で物を包むように、獄炎の手がシュリを包む形だった。魔法も、魂さえも燃やす獄炎がミッドカーの魔法をすべて燃やして阻止した。
しかし〈地獄の手〉の強烈な熱気と魔力がシュリの探知能力を妨害してしまった。その隙にミッドカーが魔法を新たに構築した。
「くらえ!」
ミッドカーが発動した〈地獄の手〉がシュリの〈地獄の手〉を相殺した。直後、ミッドカーは準備したもう1つの魔法である〈陽光砲〉2発を発動した。熱くて速い熱線の砲だった。
「ふん!」
シュリは〈地獄の手〉の中で準備していた防御の魔法陣で〈陽光砲〉を防いだ。そしてミッドカーに向かって突進しながら魔法陣を2つ展開した。1つはシュリの手に〈地獄の手〉を宿す為の魔法陣で、もう1つは……。
「うわっ!?」
ミッドカーの足元の大地が揺れ動いた。まるで地震が起きたように揺れ、いたるところから地面が触手のようにわき上がってミッドカーを狙った。地を自由自在に操り戦場を支配する魔法、〈大地の暴君〉である。
「うりゃぁっ!」
ミッドカーは雄叫びながら地面を強く踏んだ。巨大な足の幻影が揺れ動く大地を丸ごと踏みつけた。それで〈大地の暴君〉が破られた。直後、ミッドカーは突進してくるシュリに向かって魔法陣を展開した。無数の氷の錐が四方からシュリに向かって降り注いだ。
シュリは全方向に衝撃波を放ち、氷を全壊した。その間、ミッドカーはシュリのように〈地獄の手〉を手にした。獄炎をまとった手が激突し、熱気をまき散らした。
「なかなかだなぁ!」
ミッドカーが出した拳を避け、みぞおちに正拳一発。しかし、ミッドカーは反対側の手で阻止した。握っていた魔法具玉はいつの間にか消えていた。
「ふぅっ!」
シュリも反対側の手で脇腹にフック。ミッドカーはそれを阻止できずよろめいた。しかしシュリがさらに追い詰める直前、渦巻く炎の玉がシュリの目の前に現れた。
「ちっ!」
シュリは舌打ちをしながら手を振り回した。火の玉が爆発を起こしたが、その爆炎をシュリの〈地獄の手〉が相殺した。しかし、その間にミッドカーは長くて堅い氷の槍を形成した。
「こういうのはバロディンの奴の得意なんだがな……!」
氷の槍に眩しい雷が宿った直後、投槍魔法〈天衝極線〉が噴き出した。絶対的な貫通力を誇る投槍が至近距離でシュリを狙った。だがシュリは近くから発射された超速の一撃を拳で殴りつけた。
「その通りだわね」
シュリの腕に宿る〈地獄の手〉の力が雷電を帯びた氷の槍を粉砕した。直後、シュリは手のひらを突き出した。体術魔法〈螺旋波〉の衝撃波に〈地獄の手〉の獄炎まで宿った。
「がはぁっ!」
「バロディンに比べるとかなり下手なのよ」
ミッドカーは防御魔法を展開していたが、獄炎が宿る衝撃波を防げずに吹き飛ばされた。全身が燃えて服が破れた。だがそれも表面だけで、致命傷というほどではなかった。
「くぅ……やはり手ごわい奴だぜ」
「何ならその魔法具でも使ってみて。アンタでは私に勝てないの」
「……くふふっ」
シュリはミッドカーを警戒しながら近づいたが、ミッドカーはただただ怪しく笑うだけだった。魔法を使おうとする気配もなかった。
いや、使う必要がないというのが正しいだろうか。
「この町で一番強い奴はゲントロンの奴が捕まえているはずなのに……貴様みたいな奴がまたいるなんて、正直驚いたぜ」
「私が強いわけじゃないの。アンタが弱いだけ」
シュリはミッドカーの胸ぐらをつかんで持ち上げた。そして彼の体全体を魔法で捜索したが、魔法具はどこからも探知されなかった。
――さっき私が〈地獄の手〉で防御態勢を取った時に隠したのかしら?
シュリは眉をひそめた。もちろん時間を浪費するつもりはなかったし、直ちに周辺一帯を魔法で捜索した。
いや、捜索しようとした。
「……もう遅い」
ミッドカーが呟いた瞬間、そのことが起こった。
少し離れた所の地面が急にわき上がった。中にあった何かが地面を突き抜けて上がってきたのだ。それはさっきまでミッドカーが持っていた魔法具だったが、状態はさっきとは少し違った。
魔力を存分に吹き出したさっきとは違って、今は何の魔力も感じられなかった。ただ輝くだけだった。しかしそれは魔力を失ったからではなく、すべての魔力を魔法具の中に入念に閉じ込めているからであることを、シュリはもう知っていた。
そしてこれから何が起こるかも。
「くそっ! どうしてもう……!?」
――予想より早い! どういうこと!?
シュリは魔法具に向かって魔法を撃った。しかし、それが触れる前に魔法具が上空に舞い上がった。魔法具から真っ白な光の線が伸びてくると、遠くにある他の何かに繋がった。
シュリが分身で相手にしていた3人の魔族。彼らが持っていた魔法具が魔力の線でつながり、ベルドの町の上空に巨大な三角形を描き出した。
その瞬間、シュリは魔族への対応をあきらめた。そして本体を素早く動かしてトイレに入った後、遅滞なく〈空間転移〉を使って隔離されたある部屋に入った。ベルドの町の中に準備しておいた、彼女だけの秘密の場所だった。
シュリがそこに着くとともに、上空に描かれた三角形を中心に巨大な魔法陣が展開された。町全体に魔力が降り注ぎ始めた。
シュリは秘密の場所の中で魔法陣を展開した。何十もの魔法陣が彼女を取り囲んだ。それらが力を発揮するとともに、上空の魔法陣から降り注いでいた魔力も止まった。
だが上空の魔法陣は相変わらず健在で、シュリの額には汗がにじんだ。
――これはヤバい。




