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パート7:嵐の前の静けさ(2)

「貴方のチーム、もう1人いたんじゃないですの? その1人はどこに行きましたの?」


「え、エンシスに……」


 リーダーの声は小さく、言葉はどもりがちだった。しかし、彼の目だけはまだ意志で輝いていた。そしてその目でシュリの姿をしっかり認識した瞬間、彼の声にも力が入った。


「エンシス平原に、取り残された……! あいつ、転移の魔法具で、俺達を、送っ……救わなければ……!」


「チームがこうなった理由は何ですの? そして転移する直前にあった場所は?」


「い、依頼を遂行していた。でも急に、Bランク魔物が、4匹が、一度に……。場所は多分、平原の東のどこか、だったはずだ。急いで逃げたから、位置がつか、めなくて……」


「分かりましたわ。状況は把握しました。ギルドで対処するので、貴方はもう休んでください」


「でも……!」


「生きて帰ってきた仲間に貴方の死体を見せたいのなら、今無理して動くことも許可しましょう」


 シュリはその一言でリーダーを黙らせた。そしてリアに役割を引き継いだ後、急いで受付の内側に走って行った。


「タイラ先輩! Bランクの魔物を相手にできるようなハンター達を手配してください!」


「分かったよ! あんたは!?」


「私はエンシス平原に行ってるハンター達に連絡してみますわ! ここで送るだけでは遅い可能性もありますから!」


 今エンシス平原関連の依頼を遂行中のハンター達のリストは、すでにシュリの頭の中にある。そのうち、今回の仕事に適した人を素早く選び出し、魔法具で連絡をした。幸い救出に向かうというハンター達がいた。


 ――でもそれだけ待っていては遅い。位置が正確じゃないから。


 シュリはこっそり探索魔法を使った。あのチームを転送してくれた魔法具の跡をたどった結果、彼らが転送された座標を大まかに推定できた。


 ――別に性能がよくない魔法具だったようだね。出発地を正確に特定することができない。まぁ、転移関連は高いから仕方がなかったはずけど。


 大まかでも一応範囲を少しでも狭めることができれば良い。


 判断を終えたシュリは〝カカシ使い〟の役割をしている分身を通してアント達に指示を出した。


「緊急事態だわ。Bランクの魔物に襲われたチームから落伍者が発生したわよ」


「え? 助けに行くんですか?」


 さっきまで親しくしていたタークはもちろん、アントも渋い顔をした。最初から不良ハンターだった彼らが人を救うことに肯定的なはずはないだろう。


「大丈夫だわ。緊急依頼で発行されたんだから。厳然と報酬を受けることができるのよ」


 ――実はまだ依頼は出ていないけど。


 だがシュリは本体でマナードに報告し、緊急依頼発行を要請するつもりだ。マナードの性格ならすぐに処理してくれるだろう。それなら後で帰って手続きだけ適当にすれば良い。


「グズグズしている時間なんてないの。行こう」


 シュリは返事も聞かずに走り出した。アント達はため息をつきながらも結局彼女に従った。


 ――よりによってちょっと遠いね。


 シュリは自分達全員に加速魔法をかけた。彼女達の体は疾風となって平原を横切った。


 目標の座標近くまで来ると、シュリは広域探索魔法を展開した。先ほど魔法具の痕跡から追跡した座標範囲全体を合わせた規模だった。


 ――この中にいたらいいんだけど。


 探知された人間は全部で3名。3人ともかなり速く動いている。


 でもそのうち、Bランク以上に見える強力な魔物達に追われているのは1人だけだった。恐らく彼が救出の対象だろう。


 ――動いているのを見ると、まだ致命的ではないようだね。


 シュリはすぐに彼の方に行った。その人はすぐ発見された。


 体のあちこちから血を流している青年だった。幸い致命傷になるような傷はないようだったが、皮鎧と服がむちゃくちゃに破れていた。手に持った剣はすでに根元から折れて刃を失ってしまい、他に装備はなかった。魔法具を使ったような魔力の痕跡があるのを見ると、多分持っているものをすべて動員して何とか生き残ったのだろう。


 彼を追いかけていたのはハザードマンが2匹、シルバーベアが1匹。残りの1匹は身長3メートルで筋肉がモリモリした褐色の人間型魔物だった。がっしりした肌とパワーが特徴のBランク魔物、セミジャイアントと呼ばれる奴だ。


「ほら、行きなさい」


「なっ、うわっ!?」


 シュラはアント達を魔法で作った障壁で覆った後、すぐに魔法で彼らを投げつけた。巨大なボールになった彼らが魔物達にぶつかった。魔物達が悲鳴を上げて飛ばされた。


「くっ、ちくしょう、乗り心地最悪だぜ……!」


「あ、あんたは?」


 魔法が解除され、悪口を言うアントを見て、追われていた青年が目を丸くした。


「アントだ。貴様がチームを転移魔法具で転送したって奴かよ?」


「アントだ。テメェがチームを転移魔法具で転送したって奴かよ?」


 アントはシュリが魔法通信で知らせたのをそのまま聞き、青年は頷いた。


「ぼ、ぼくの仲間はみんな無事ですか!?」


「応急処置をしているそうだぜ。あとは戻って確認しれぇ」


「し、しかしあいつらを相手に逃げることが……」


「ちっ、消えろ。残りも何もねぇくせに」


 アントは懐から小さな魔法具を取り出して青年に投げた。青年のチームがギルドに転移した時に使ったのと似たような転移魔法具だった。


「それで戻れ。そしてこのアント様が助けてたって伝えろよぉ」


「でもこのまま任せていくわけには!」


「タワケめ。役に立たねぇから消えろ。行って俺のなめぇを言うのが恩返しだぜ。救出依頼の報酬が俺のポケットに入ってくるからだ」


 アントはそろそろ消えよと言うように手を振った。ちょうど魔物達が立ち上がっていたところだった。アントの配下達も素早く彼の後ろに来た。


 アントは大剣を握りしめ、シュリに通信を送った。


[おい、言われた通りに言ったのはいいが、あれ俺らにできるのかよぉ?]


[時間だけ稼ぎなさい。一匹ならまだしも、4匹をアンタ達が討伐するのはごまかせないから]


[ちっ、メンドウなもんやらせやがって]


 舌打ちしながらも、アントはそれ以上不平を言わずに前に出た。


 彼が剣を振り上げるのと、魔物達がアント達に向かって突進するのはほぼ同時だった。

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