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パート3:魔族(3)

 魔法陣が一斉に光を放った瞬間、シュリは〈空間固定〉を無効化する魔法陣2つのうち1つだけ解除した。瞬く間に時空の凍結が彼女の直前まで迫ってきた。


 そう凍結された領域は、シュリを攻撃しようとする数十の魔法陣が展開した場所まで含まれていた。魔法陣は凍結した時空とともに完全に止まってしまった。


 そしてシュリ自身は巨大な剣のような魔法陣を展開した。それを本当の剣のようにつかんで振り回した。すると空間がクネクネと曲がって、凍結した時空と〈空間固定〉の結界が同時に破壊された。もちろん時空凍結に巻き込まれた魔法陣も一緒に。


「……その攻撃を無傷で突破するとはな。ほめざるを得ないぜ」


「アンタこそ〈滅界八陣雷爆〉を身をもって耐えながら〈空間固定〉を発動する考えをするとは、そのタフさだけは認めてあげるわ」


 バロディンの姿は決して普通ではなかった。


 高等魔法である〈空間固定〉を使用する為に防御魔法を最小化した結果、彼はシュリの雷電に容赦なくやられた。全身が焼けてしまって、衣服は完全に焼けて原型を確認することも困難でした。魔力もかなり乱れていた。


 しかし、挑戦的な眼差しと覇気だけは少しも衰えなかった。


「あいにく俺は雷には耐性が強いからな」


 そう言って、バロディンは手にした槍型の魔法陣を握り直して身構えた。


 シュリが握る大剣も、彼が握る槍も、本物の道具ではない。魔法が付与された道具である魔法具を模した形の魔法陣を構成し、その魔法陣に魔法具の力を複製する魔法、〈魔装投影〉だ。原本の力を百パーセント再現することは不可能だが、汎用性と使い勝手が非常に優れた魔法だ。


 さっきの時空凍結を超えて襲ってきた攻撃も、空間を行き来する瞬間移動魔法で〈魔装投影〉の魔槍を投げたのだ。


 ――そういえば、バロディンは元々魔王軍最高の魔槍使いだったよね。そして彼の魔槍は……。


 その瞬間、バロディンの魔槍型魔法陣から雷が噴き出した。その直後、彼はシュリに向かって魔法陣の槍を勢いよく投げた。


 ゴロゴロと、雷鳴を鳴らしながら飛んでくる魔法陣の槍。避けるには早すぎる。シュリはすぐに防御魔法陣を展開したが、その1撃だけでも魔法陣がきしんだ。


 そこに2発、3発。何度も槍投げが続き、5発目に防御魔法陣が破壊された。しかしシュリは魔法陣が破壊される瞬間、魔法陣の大剣を振り回して攻撃を相殺した。雷電を吹き出していた魔法陣の槍はシュリの大剣で雷電ごと切断されて消えた。


「はぁ! いいものを持っているな!」


 しかし、バロディンは全然気後れしなかった。あっという間に魔法陣の槍が100本も現れ、それらすべてが雷電を吐きながらシュリに飛びかかった。同時にバロディン自身もそのうちの1つを握って、魔力を込めて投げつけた。


「俺の槍投げをいつまでに防げるのか見ようぜ!!」


 シュリは前方に突進しだ。そして魔法陣の大剣を縦横無尽に振り回して魔法陣の槍を切り取った。彼女が大剣を振り回す度に空間が揺れて分裂し、魔法陣の槍は空間ごと切断されて破壊された。


 しかし、割れた空間がくっつくとても短い時間の間は、シュリ自身もその空間をこえて前に進めなかった。


「ちぇっ!」


 シュリが短く舌打ちしながら構築した魔法陣は〈空間転移〉。光とともに消えたシュリがバロディンの背後から現れた。


 しかし、すでにその場を数十本の魔法陣の槍が一斉に狙っていた。まるで予想したかのように。


 ゴロゴロと雷が爆発し、シュリの姿はその中に消えた。それでもバロディンは油断せず、魔法陣の槍の1つに魔法陣を重ねた。過度に集中した魔力がパチパチして、空間が悲鳴を上げた。


「終わりだぜ!!」


 槍投げ魔法〈天衝極線〉。圧倒的な貫通力ですべてを貫く魔法が魔法陣の槍そのものの雷電と結びつき、すべてを突き破って燃やす直線の雷電となって噴き出された。雷が爆発する真ん中を直線の雷電が突き抜けた。


 ようやく雷電が収まった時、シュリの姿はどこにもなかった。


「ふ……ふふ、ふふふ……ははははははは!!」


 バロディンは1人で空に浮かんだまま狂笑を噴き出した。


 シュリはバロディンにとって久しぶりの強敵だった。ダメージもかなり大きかったし。だからこそ今バロディンはさらに気持ちが良かった。


 しかし次の瞬間、背中から腹部まで横切る激痛がバロディンを襲った。


「かはぁ……!?」


 見下ろすと、バロディンの腹部から衣服と手袋で徹底的に包まれた女性らしい腕が飛び出していた。そして彼が後ろを振り向く前に、その腕から魔法陣が展開し、バロディンを燃やした。


「ぐあぁぁああっ!」


 その腕が激しく振られ、バロディンはもろくも地面に落ちた。彼を燃やして投げ捨てた人は、さっきと少しも変わらず元気なシュリだった。


 シュリはバロディンの傍に着地して彼を見た。彼は体中が燃えて動くこともできなかったが、目つきだけは相変わらず生きていた。


「ど、どうやって……!」


「事業上の秘密だわ。……と言いたいけど、特に教えてあげるよ。アンタの方法を参考にしてみたわ」


「俺の方法……だと?」


「ん。体で耐えるのよ」


「バカな……! それを……そんなに無傷で……」


「そうね。まぁ、今の私としてはそれをこんなに普通には堪えられないわ。でも私はあえてこの肉身にこだわる必要はないのよ。分身だから」


 もちろんシュリが本格的に力を使うなら、バロディンの攻撃は鼻先で笑うながら無効にすることができる。しかし今のシュリは事情があって、全力を十分に発揮できない。


 ――正直に言うと、今の私としてはバロディンとわずか互角のレベルだけだから。


 だから彼女はバロディンの大規模攻撃が来た瞬間、()の分身を奇麗に諦めた。そしてその分身が消滅する直前に〈分体形成〉を用いて別の分身を作り出したのである。最初から本体ではなく分身だからこそ可能な便法だ。


 シュリの言葉と魔力からそれを察したらしく、バロディンは目を見開いた。


「そりゃ……あり得、ない……!」

小説が面白かったら是非私の他の小説にも関心を持ってくださったらありがたいです!


●最強の中ボス公女の転生物語 ~憎んだ邪悪なボスの力でみんなを救いたい~

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