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幼女になった若返りの大聖女は、孤高のひきこもり研究三昧ライフを送りたい!!  作者: 高井うしお


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44話 魔王城

 精霊の森から出て行きながら、シルヴィエはしきりにポシェットに手をやって、そこにある賢者の石のかけらの存在を確かめていた。


「……よし」

「シルヴィエ、良かったな」

「え?」

「これで封印紋の影響が体から無くなるだろう?」

「あ! そうか!」

「シルヴィエ……」


 肝心なことがすっかり頭から抜けているシルヴィエを見て、カイは呆れた顔をした。


「わ、忘れてた訳じゃないぞ! ただ、色々なことがいっぺんにありすぎて……」

「まあな」


 そうこうしているうちにシルヴィエとカイは精霊の森を抜け出した。


「シルヴィエ、一度ルベルニアに帰るか?」

「いや、魔王城ならここからのが近い。このまま二人で行こう。ただ……少し待ってくれ」


 そう言って、シルヴィエは紙を取りだしてそこに何か書き付けると、小鳥のゴーレムを作り出しその足に紙を結びつけた。


「……行きなさい」

「今のは?」

「ユリウス王子に。無事、魔族を倒し、魔王城の封印を完成させに行くと伝えた」

「そうか」

「……沢山心配しているだろうから」


 シルヴィエはボソボソと小さな声でそう答えると、ふいとそっぽを向いた。


「まあ、いいや。とにかく徒歩じゃ厳しいから馬を調達するために一度近くの村に行こう」

「そうだな」

「一度休憩して体も流したいしな」


 考えてみれば二日近く、ちょっと仮眠をとっただけの二人だった。

 いくら魔法で癒しても、気力体力を回復させるのには温かいものを食べてしっかり休むのが結局一番早いのだ。


「それじゃこっちだ! そんなに遠くないから飛行魔法で行くぞ!」


 こうして二人は近くの村へと急いだ。


「まぁまぁ! 勇者様がこの村にいらっしゃるなんて!」

「一泊泊めて貰えるとありがたい」

「もちろんです!」


 その村ではカイの知名度が効いて下にも置けぬ歓待を受けた。


「はーっ! 美味い!」


 さっぱりと体を流し、久し振りの温かい食事。シチューとパンという簡素なものだったが二人には十分だった。


「あの……勇者様」

「どうしました」

「うちの村の子供たちと少し話をしてくれませんか」


 村長にそう切り出されたカイはにこりと笑った。


「もちろん! お世話になりましたからそれくらい」

「おい、お前たち、入っておいで!」


 村長が外に声をかけると、子供達がわっと中に入ってきた。


「勇者様、剣を見せてください!」

「勇者様、戦いのお話をして!」

「ああ、いいよ」


 カイは子供たちに囲まれ、色々とせがまれながら話をしてやっていた。

 シルヴィエはそんなカイを眺めつつ、小鳥のゴーレムが無事着いているだろうかと考えていた。


「あの……」


 その時だった。

 一人の小さな子供が、カイの前に進み出た。


「ん? どうした?」

「ぼくのとうさんは魔族にやられて亡くなったそうです。とうさんはやくにたったのでしょうか」

「……」


 どうやらその子の父親は国境軍で兵士をしていたらしい。

 最初の襲撃で犠牲になった……ということだった。


「もちろんだ。君のお父さんは人の為に体を張れる立派な人だよ。誇りにするといい」

「……はい!」


 その子はそう聞いて、はにかみながら駆けていった。


「……」


 カイは少し微妙な顔をしながらその後ろ姿を見送っていた。


「カイ……」


 子供達が満足して去っていった後、シルヴィエはカイの背中に声をかけた。


「全てを守りたいというのは傲慢なことかな、シルヴィエ」

「その為に我々は再び魔王城に行くのだ」

「そうだな……」

「さ、もう眠ろう」


 シルヴィエはいつまでも考え込んでいそうなカイをベッドまで引っ張っていった。


「とっとと寝ろ。抱っこしてもいいぞ」

「……気持ちだけ受け取っておくわ」


 そう言って、カイは上掛けを羽織り、ごろりと横になった。

 それを見届けて、シルヴィエも眠りに落ちた。




 翌朝、カイは幾分すっきりとした顔をしていたので、シルヴィエは安心した。


「さあ、行こう」


 村から馬を一頭買い取り、シルヴィエとカイはまっすぐに魔王城を目指す。


熱波(ヒート)

「寒くなってきたな」


 北に進むうち、チラチラと雪が降ってくる。

 その中を魔法で暖を取りながらシルヴィエとカイは先へと進んだ。


「……着いた」


 雪は豪雪へと代わり、白い視界の中に真っ黒な城が谷底に見える。

 生き物がほとんど存在しない死の世界にそれはそびえ立っている。


「また来ることになるとはな」

「ああ」


 シルヴィエは頷きながらポシェットの中から賢者の石のかけらを取りだした。

 それは赤々と燃えるように輝く。


「行くぞ」


 シルヴィエとカイは谷を降り、魔王城の前まで向かう。


「はっ!」


 カイが一振り神剣を振るうと、重厚な扉が真っ二つに割れた。

 そうして出来た入り口から、シルヴィエとカイは中へと進み入る。


「あった……」


 魔王城の広間には確かにシルヴィエの施した封印紋がそこにあり、魔王がまるで繭のようにその中で眠っているのが見える。


「今度こそ、完璧に封印してやる。カイ!」

「おう!」


 カイはその封印紋の中心に神剣ラグナロスを突き立てた。

 それを見届け、シルヴィエは賢者の石のかけらを取り出す。


「これで……封印が完成する……」


 その封印紋にそっと石を置く。するとまばゆい赤い光があたりを包み混んだ。


「シルヴィエ!」


 その光に目がくらんでカイは前が見えなくなった。


「シルヴィエ!!」


 光に満ちた空間でひたすらにシルヴィエの名を呼ぶ。

 しかし、カイの呼びかけにシルヴィエは答えることは無かった。


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