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地球決戦 ースペースマン5-  作者: 本山なお
9/33

シェプーラの星にて③

―宇宙暦496年―

白い馬がジャングルの中を駆ける。

植物がなぎ倒されている。

その先に・・不時着した宇宙船、<フロンティア号>が横たわっている。

(この時はまだプロトン砲を装備していない)

ボッケンは隠れて宇宙船を見る。近くに人影が3つ。

「まいったな。ここどこだ?」頭を掻きながら明が言う。 

「シェプーラ星。連邦未加入の惑星」肩でピンニョが答える。

シャーロットがマニュアルを見ながら「優秀なエンジニア欲しいわね」

「攻撃して来たのはここの軍隊かな?」

明の問いに啓作が答える。

「ここにそんな無粋な者はいないよ。おそらく密猟者だ」

「高等生物は確認されているけど、よそ者お断りって感じらしいわよ」

「高等生物?」

「お馬さん」

「あれ?さっき夜が明けたと思ったのに、もう日が高いぞ」

「この星の一日は約12時間半、自転が速いんだ。地球より小さいのに重力がほぼ同じなのはそのためだ」

「ふーん。じゃ偵察に行ってくる・・ん?」

不意に明がこちらを見る。白い馬・ボッケンは身を隠す。

「何か見られてる気がしたんだけどな」

明とピンニョの乗った小型艇が飛び立つ。   

後をつけ、走るボッケン。

【すごい。飛ぶ乗り物か】

小型艇は低空飛行する。 

「もうチョイ左・・そろそろだよ」ピンニョのナビ。

「!」

ジャングルの中に突き出した砲身。宇宙高射砲。密猟者の基地だ。

小型艇は速度を落とし着陸態勢に入る。その時、カツン。

機体に何かが当たった。

「げ」右翼を見るとブーメランが突き刺さっている。

バチッ。機体に電気が走る。

脳波誘導ブーメラン。持ち主の脳波で自由自在に操れ、命中すると電気が流れて獲物を感電させる、宇宙生物捕獲者ベムハンターの装備だ。密猟者の攻撃か?

キャノピーが開き、ピンニョが飛び出す。

明は必死に小型艇を操縦し、無事着陸させる。

ピンニョはブーメランの軌道をたどり、持ち主の元へ。

「子ども?地球人?」

髪を後ろで束ねた小さな少年がブーメランを構える。

少年がブーメランを投げるより先にピンニョの羽根手裏剣が少年の手に命中する。

「いってぇ~」ブーメランは地面に落ちる。

「動くな!武器を捨てろ!」遅れて明が銃を構えて警告する。

少年はしぶしぶブーメランを捨てる。「薄汚い密猟者め!」

「! おいおい俺たちは密猟者じゃないぜ」

「え?」

ピンニョが明の肩にとまる。

「俺たちはスペースマンだ」

「さっきの宇宙船の人か。・・ごめんよ。おいらはヨキ。一匹狼ソロ宇宙生物捕獲者ベムハンターだ。まだ駆け出しだが、こいつ(脳波誘導ブーメラン)と電磁網を手に星々を渡っている」

「密猟者とベムハンターとどう違うんだ?」

「バカにするな!ちゃんと条例は守っている」

「す、すまん」あまりの気迫に押される。

「この星には新種の虫がいっぱいいると聞いて来たんだが、おいらも撃ち落とされたんだ」

明とピンニョは顔を見合わせ、小声で話す。

「ウソはついてなさそうだね」 

「戦力になりそうにない。ほっとくか?」

「兄ちゃんたち、あの密猟者やっつけに行くの?」少年が尋ねる。

「明だ。弓月明。元スペースレーサーだ。こっちはピンニョ」

「おいらは昆虫専門ベムハンターのヨキ。改めてよろしく」

「昆虫専門?(昆虫採集?)」

「そうだよ。あいつらやっつけるなら手を貸すよ」

「・・俺たちに任せろ」


雨が降り出す。

雨に紛れて明は基地に近づく。密猟者数人はピンニョにおびき出されていた。

ボッケンが後をつける。

【仲間じゃないのか?】

高射砲の周囲にテントと幾つもの檻がある。鉄格子の檻の中にはボッケンと同じ種族シェプーラが何頭も捕らわれている。

明は双眼鏡を見ながら「この星の生物か。やはり密猟団」

【・・・!】

後ろから見ていたボッケンは怒りをあらわにする。

火を焚き密猟者達は酒盛りをしている。

「さっきのはただの貨物船だったようだな。悪い事をした。ははは・・」

「まだ生きてたら謝りに行きますか」 

「ははははは・・」

白い影がジャングルより飛び出す。一気に檻へ近づく。

ボッケンだ。この星の鉱石より作られた剣をくわえている。

カーン。檻を斬り裂こうとするが、歯が立たない。 

【!!】

檻の中の仲間たちが叫ぶ。

【王子!】

【だめです!逃げてください!】

密猟者達が集まって来る。

「へへへ。お前らの武器じゃこの檻は壊せねえぜ。もう1頭追加だあ」

「運が良かったな。この星はもうすぐ住めなくなる。助けてやろうってんだ」

密猟者達はライフルを構え、引き金を引く。

ボッケンは難なく避けるが、密猟者達は銃を檻の同胞に向ける。

「動くとこいつの悲鳴を聞くことになるぜ」

【・・・】 

ボッケンは立ち止まる。ペッ。剣を捨てる。

密猟者達はにやにやしながら狙いを定める。

ビシッ! 密猟者数人が撃たれ、倒れる(といってもパラライザーだ)。

男が銃を撃ちながら走って来る。明だ。

「やるじゃん、お前。仲間のために・・」

【!・さっきの人間か!】

明は檻に近づくとビームブレードを抜き、檻を斬る。鉄格子は真っ二つに。 

【すごい!】驚くボッケン。

密猟者達は明を狙い銃撃。

明は避けつつ反撃。

また密猟者数人が眠らされる。腕が違う。

「使え!」明はビームブレードを投げる。

ボッケンはそれを口でキャッチする。

【!!】 

くわえた途端、光の剣が伸びる。

【なるほど。伸縮するのか・・どれ、】

ビームブレードの前では檻は飴細工のようだ。

走りながらボッケンは次々と檻を斬り裂く。

解放される同胞たち。

密猟者の仲間が戻って来るのが見える。

明は「ずらかれ!」と叫び、走って逃げる。 

ボッケンと同胞たちも逃走する。

密猟者達が発砲するが、当たらない。

遅い明を見かねて、ボッケンが首を下げて叫ぶ。

【乗れ!】

「!」

明はその背に飛び乗る。その途端、

「ひゃー」

同胞たちと別れたボッケンはすさまじい速度でジャングルを駆けぬける。

ピンニョでさえ追いつくのに必死だ。追手ははるか後方に。

瞬く間に小型艇に到着する。

「(こいつ、何で俺たちの機の場所を知っている?)」明がそう思った時、

急停止。バシャ。明は泥の中へ落下。

起き上がった明とボッケンは見つめ合う。

雨は止み、夕陽がふたりを照らす。

明は自分の胸に手を当て「あ・き・ら」自分の名前を教える。

ボッケンはビームブレードをそっと地面に置き、言葉を発する。

【ぼ・っけ・ん】

「ボッケン?それがお前の名かい?」

ボッケンは何も答えずジャングルに消える。

明はビームブレードを拾い、ボッケンの去った方向を見つめる。


夜。満天の星の下。

<フロンティア号>のコクピットで、ピンニョが明をしかる。

「何が偵察だよ。挑発して。これじゃ修理終わっても、飛び立てないじゃん」

「だって・・腹立ったんだもん。シェプーラ達かわいそうだったろ?」

「それは・そうだけど」

「確かにあの高射砲はやっかいだな」

そう言った啓作は明の撮った写真を見る。

「これは何?」

高射砲の隣に筒状のものが地面に突き刺さっている。

「ん」明はヨキがいるのに気づく。「何でお前がいる?」

「お邪魔してまーす。綺麗なお姉さん、これ美味しい!」

「そう?おかわりする?」シャーロットは嬉しそう。

「お前どこから来たんだ?」

「ミルキン星」

「知らん」

「だろうね。辺境のど田舎だもん」

「こりゃよくできてるな」

啓作はビームブレードを改造したヨキのビームネット(刃の代わりに虫捕り用の網が伸びる)を手に取り感心する。

「知り合いのメカニックが作ったんだ。デブでせこい奴だけど腕は確かだぜ。おいらの便器型宇宙船もそいつが造った。紹介しようか?」

「便器?・・いやかも」

ピンニョが叫ぶ。「レーダーに反応。小型の移動物体が多数接近!」

「やつらか?パワードスーツ?」 

「エネルギー反応は微弱。生物よ」

「暗視センサー」シャーロットが操作する。

メインパネルの映像が変わる。 

「あ・・」

パネルに映るのは、シェプーラの群れ。何かを置いている。

明は外に出る。地面に果実がいっぱい置かれている。

「お前・・」

ボッケンは礼をして走り去る。 

「ありがとうな」明が叫ぶ。 

ボッケンは走る。嬉しそう。笑みが漏れる。


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