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地球決戦 ースペースマン5-  作者: 本山なお
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シェプーラの星にて①

第2章  シェプーラの星にて


「カタパルト装着。発進5秒前・4・3・2・1・0!」

 轟音と共に三機の<スペースコンドル>は射出される。

 <スペースインパルス>の艦載機、主力戦闘機。全長15mの複座タイプ。単独で約50光年のワープが可能だが、今回の目的地は6000光年離れているため、ワープブースターを装着している。一号機にはリュウとアラン副長、二号機にはロミと啓作が搭乗している。護衛の三号機も複座式だが乗員は前席パイロット一人のみだ。

「ほう。この射出速度でこのGで済むのか」

 啓作の独り言に前席のロミが答える。

「最新式のGキャンセラーですから」

「ワープに入る。喋ると舌を噛むぞ」

 リュウはそう言い終わると、ワープブースターを点火。

 機体は猛烈な加速で超空間へ突入する。

「こちらも行きます」

 二号機と三号機も続く。


 戦場。砂漠に不時着した宇宙船。敵に囲まれている。

 明は五人小隊の隊長。ミッションの目標は敵ボスの殺害だ。

 部下の一人は負傷している。セオリーでは全員で退却が正しいのだろう。

 だが明は部下全員に退却を命じ、一人で囮となるべく宇宙船を飛び出す。

 ビーム、銃弾、ミサイルの雨が襲う。

 明は弾幕の中を走る。

 遮蔽物のない砂漠。武器は二丁拳銃。弾を避けながら銃を撃ちまくる。 

 次々と倒れる敵兵。次から次へと敵兵は現れる。

 銃は自動チャージされるレイガンだ。だが威力を高めればチャージに時間がかかる。

 左は低出力で無数の歩兵を、右は高出力で戦車やパワードスーツを撃つ。

 洞窟が見える。敵の本拠地だ。

 ビームが飛び交う中を明は走り抜ける。

 入口にいる戦車群を敵から奪った光子バズーカで破壊する。

 さらに奥へ。

 ラスボス出現。5mはある巨人。

 両腕に仕込まれたビームマシンガンを連射する。さらにミサイルも。

 明は弾を避けつつ攻撃を叩き込む。

 敵の大将を銃撃で倒す。 

 -シミュレーションゲームコンプリートー 

 ―レベル99目標破壊99.8%命中率99.3%被弾率0%味方損失0%・・ハイスコア更新―

 ホログラフが消える。

 明が床に仰向けで倒れている。部下も敵もホログラフだ。

「はあはあはあ・・」

 適性検査のひとつだった。(検査は選択できる。勿論美理は選んでいない)

 見学者が数人。その中にロイとサライの姿もある。

 リックが拍手する。

「すげ。このレベルで満点、初めて見た」

「今までのハイスコアって流艦長が10年以上前に出した奴だろ」

「凄いだろ?」

 グレイは自分の事の様に得意気(←レベル70でゲームオーバー)。

 ロイが口を開く。

「見事な腕だ。ガルム(陸戦隊隊長)に推薦してもいいが、やめておこう。お前は敵を殺さない、パラライザー使いなんだろ」  

「?」

「そんなのは自己満足だ。敵を殺せない兵士は要らない。お前が助けた敵に明日仲間が殺される」 

 明は何も言い返せない。 

 ロイは立ち去る。リックは無言で立ち尽くす。励ましたいが言葉が思い浮かばない。

 明が叫ぶ。「レベルMAX!」 

 ゲームスタート。 

 四方八方からビームが襲う。蜂の巣になる明。瞬殺でゲームオーバー。 

「これはバリヤー張れなきゃ無理だよ」リックがぽつりと言う。

 床に倒れたまま明がつぶやく。

「理想(仮想)と現実か・・それでも俺は相手を殺したくない」

 サライは一部始終を見ていた。

「なんて回避率だ。アラン副長の言われたとおり、やはり特別なのは船ではなく彼だった。”見切り”って奴か。いやもはや空間認識能力が優れているとか”直感”で説明できるレベルではない。あらかじめ弾がどこに来るのがわかっているとしか思えない。つまり”予知”だ・・よし、試してみるか」

 明は立ち上がり、部屋を出る。その途端すてーんとこける。

「誰だ!バナナの皮捨てたのは?」

「あれれ?」


 第二格納庫。

 <フロンティア号>が収容され修理中。

「はえ~」訪れたマーチンが感心する。「もうこんなに直ってるの?」

 十人足らずの人員だが、少なくともメインエンジンは元通りだ。

 作業を指揮しているニコライ機関長兼整備長が振り返る。

「こいつの専属メカニックの兄ちゃんか。そっちの損傷はもういいのか?」

「ええ、まあ・・それにしても作業早いですね」

「手を抜いとるからな」

「え?」

「冗談じゃよ」

 ふたりは黙って修理作業を見る。湯呑みでお茶をすする。

 ニコライが尋ねる。「入る部署は決まったのか?」

「生活班の調理担当を希望したんですが、研修中につまみ食いして追い出されちゃいました」

「がはははは・・」ニコライは腹を抱えて笑う。

「・・うちに来ないか?」


 明は居住区の原っぱに寝転がって空を見上げている。

 医務室に行くことになっているが気が進まない。まだ時間もあるし。

 青空が広がる。偽りの空はもう帰れない故郷を思い出させる。

 下校中の美理と麗子が通りかかる。

 紺のブレザーの制服。新鮮。残念ながらスカートの中は見えない。

「明くん」 

「こんにちは」

「ごきげんようじゃないんだ」

 明にそう言われた麗子は思わずあっとなる。

「何してるの?」 

 明は答えない。三人で土手に座る。

「おねーちゃーん。バイバーイ。また明日ねー」小さい子供たちが手を振る。

「またねー」ふたりの女子は手を振る。

「あの子達はこの船の乗組員の家族なの。家族で乗艦しているんですって」

「へえ・・学校どう?」 

「男女共学って何か新鮮」

 彼女たちは最年長。あとは中学生が5人小学生が10人程。

「生徒が少なくて村の分校みたい。私たちも小さい子教えているんですよ」

「ヨキは?」

「ヨキクンはESP訓練でほとんど来てない」

「不登校?」

「エスパーって貴重なんだって。この船の乗員約600人中エスパーは10人程しかいない、だから頑張らなきゃって言ってた」

「要はさぼりか。あの野郎」

「このミクロ化都市って、元々は“恒星消滅”の被害に遭った避難民を収容するためのものなんだって」 

「へえ」明はどこか上の空だ。

 そんな明に向かって美理が言う。

「私、明くんは航行班パイロットになると思っていた。適性試験パスしたんでしょ?」

「うん・・決心つかなくて。俺って昔から軍隊って嫌いなんだ。自由でいたい」

「私も嫌い。でも勿体ない。明さんは凄く操縦上手いのに」

「戦いは嫌。でも今はそう言っていられない。傷ついたり困ってる人がいっぱいいるもの」

 美理は明に見つめられているのに気づく。

「な、何?」

「ありがとう。もやもやしていたのがスッキリした。簡単な事だったんだ。俺は君を守りたい」

 真っ赤になる美理。麗子も「(わー)」

「軍隊は嫌いだが、他人任せはもっと嫌いだった。俺のしたい事とこの船の目的は一致している。決心ついたよ」

 明は立ち上がり、走っていく。 

 それを見送って、麗子が「熱いねえ」 

「・・うん」

「今の告白かな」

「違うと思う」


 三機の<スペースコンドル>は二回目のワープを終えた。

「ナカトミ星系に到着。座標誤差ほとんどなし」

「ふむ。啓作くん、君たちの言う通りこの星系は“恒星消滅”に見舞われたようだ」

 アランは表情を変えず淡々と語る。

「予定通り目標へ向かう」

 リュウは自機を第二惑星へ向ける。残り二機も続く。

 銀河系で起きている“恒星消滅”。その事実を知った明たちは逃亡中にその直後だと思える星系に立ち寄ったことを伝えた。もしかしたら観測基地に映像やデータが残っているかもしれない。アラン副長はそのナカトミ原始恒星星系への転進を具申したが、最終目的地である地球とは逆方向のため却下された。ならばとアランは艦載機による調査を申し出て許可された。明は案内のため同行を希望したが、艦外だとデコラスの“疑似ESP波”の影響を受けかねないため、啓作が同行することとなった。


 ボッケンはふと目が覚める。

 慣れない陸戦隊の研修で疲れて寝てしまったようだ。

 陸戦隊の装甲兵は“シンクロ”による遠隔操作だ。ボッケンもシンクロを試してみたが、どうも上手くいかない。隊長のガルムに「人型だからだろう。慣れだ」と言われた。ガルムは黒人の大男。明は鬼軍曹のようだと表現したが、意味がよく分からない。ボッケン自身は(遠隔操作ではなく)戦場に出るつもりでいる。

 同室の明がいない。静かすぎる。

 目が覚めてしまったので窓の外を見る。ミクロ化シティ内の建物だがこの部屋からは外が見える。

「あれ?この星々見覚えあるぞ」

 <スペースインパルス>はボッケンの故郷シェプーラ星の近くを航行していた。


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