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地球決戦 ースペースマン5-  作者: 本山なお
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スペースインパルス③

 翌朝。 

 朝食を終え、宿舎の外に出た明たちを待っていたのは・・勧誘する乗組員クルーたちだった。

「男なら戦闘班。強い男はもてるぞー」 

「君も航行班でインパルスを動かしてみないか?」

「破壊の中で物を作るなら整備班」

「女性が多い索敵情報班へ」 

「機関班もよろしく」

 まるで大学の新入生歓迎だ。

 クリスが間に割って入る。

「はいはい。解散~。勧誘は見学終わってから。抜け駆けはダメ~」

 今日は艦内を見学する。クリスが旗を持って案内する。結構嬉しそう。

 明はまず医務室に行きたいと言い、他のメンバーも賛成する。

 医務室へ。船体中央にあり、居住区から近い。

「マーチン!」

 マーチンはYRX液の浴槽から上半身を出しご飯を食べていた。

「え?もうメシ食えるの?」ヨキが驚く。

「おう。みんな迷惑かけたな。ありがとな。・・おかわり」

 マーチンはもくもくと食事を続ける。熱傷の跡は分からない。

「よかった」「心配したのよ」女子メンバーが口々に言う。

「おれモテてる?」にやけてマーチンが言うが、錯覚だ。

「早くよくなって・・もうよくなってるか」

「驚いたよ」ドクターQが隣の部屋から出て来る。「プラナリア並みの回復力だ。わしの腕の見せ場がない」

「先生!」啓作が握手を求める。「昨日はろくに挨拶出来ずにすみません」

 握手。

「先生がこの艦に乗られているとは思いませんでした」 

「お前のお父さんにスカウトされた。やっぱいいぞ船医は」

 Qは明の方を向き、「君はあの時の少年か?・・すまん。無茶な治療をした」 

「先生には感謝しています。命の恩人です」

「記憶は完全に戻ったのか?」 

「はい」 

「そうか」Qは少し寂しそうだ。

「それじゃあ、そろそろ次に行きま~す」旗を持つクリスが言う。


 医務室を出た一行は船体中央から艦首方面へ。

 メインコンピューター。

 航行・戦闘・分析・生活等、艦の全てを司る巨大コンピューターだ。銀河連合の粋を集めたその能力は地球のハイパーコンピューター<ガイア>に匹敵する。

「<ガイア>に負けていないのか・・すごいな。大きさはそれこそ1/8程だが。ここはミクロ化されてないんだろ?」グレイが感嘆。

【そやねん。褒めてくれておおきに】

「わあっ!びっくりした」

【わいの名は那由他や。よろしゅーたのむわ】

 <那由他>の音声は中性的で男とも女とも言えない。だがなぜ関西弁?

 中央作戦室。

「メインスタッフが会議を行う所です。指揮をとる事も出来ます」

「・・・」

「次行きましょう」

 食堂。 

 ここも説明不要だ。ショッピングモールにあるフードコートのような大食堂。他に会議のできる個室もある。


 第一砲塔。

 小太りの男性が出迎える。愛嬌のある金髪の白人。ラインは赤の一本線。

「やあ。いらっしゃい。ここは12基ある主砲の第一番砲塔。俺は砲手主任のリックだ。本艦の主砲はウェーブカノンといって・・」麗子と目が合う。「・・・」 

「どうした?」 

 リックは固まっている。顔は真っ赤だ。

 クリスがフォロー。「ごめんね。弟は女の子に弱いの。でも武器持つと性格変わるから面白いよ」

 銃を持たせる。リックは飛び起き「敵はどこだー。敵はいね~が~」 

「・・・」

 メインレーダー管制室。 

 索敵能力は半径50光年。光速を超えて探知が可能だ。莫大なデータの解析はメインコンピューター那由他が行う。他に6つのサブレーダーを備える。

 天文観測室。

 通常の光学望遠鏡に加え、レーダーと直結した超光速電波望遠鏡、ワープによる次元波や重力震検出装置等があり、航行や戦闘をサポートしている。

 艦首サブブリッジ。

 上部と下部の二つあり、艦首エネルギー制御室を兼ねている。

 詳しい説明はなかった。クリスもよく分かっていないようだ。

 今度は艦尾方面へ。

 艦内工場。

 修理用の部品やミサイル等だけでなく、食料や衣服といった生活必需品も生産。このためこの船は基本的に補給を必要としない。この工場エリアもミクロ化されている。アラン副長がここの責任者だ。

 無人機制御室。

「わあっ!」ヨキが驚く。

 入口に立つのは高さ2.5m程の装甲兵、陸戦隊の使う人型兵器=パワードスーツだ。戦闘の他にも補修作業や調査にも使われる。

 つんつんするが何の反応も無い。これは飾りで、本物の装甲兵は第三格納庫にいる。

部屋の中には機械に囲まれたコクピットのような個室が並ぶ。無人偵察機や装甲兵に人は乗らず、ここから“シンクロ”でリモートコントロールされる。戦闘機も無人化出来るのだが、戦闘班の反対で実現していない。


 機関室。

 コントロール装置の向こうで巨大なエンジンがうねりを上げている。

「本艦のメインエンジンは小銀河マイクロギャラクシーエンジン。中にマイクロブラックホールを中心とした人工の銀河があると考えてくれていい。本艦には銀河連合に属する星々の最先端技術が集結している。各星に得意な分野があるからな。機関はアラン副長の出身のロトス=オリ製じゃ。ちなみにミサイルは地球連邦製じゃよ」

 ヨキが「あなたは!」

「よお」

 昨日お風呂でいっしょだった老人だ。ラインはオレンジの二本線。

「ニコライ機関長です」クリスが紹介する。

「機関長だったんですか」

「ニコライだ」明に近づく。小声で「覗き穴の場所を知りたければ、機関室員になれ」

「う・・」明は真剣に悩む。


 艦載機格納庫。 

 クリスが説明する。「主力戦闘機の<スペースコンドル>です」

 全長15m程の流線型の機体だ。宇宙専用ではない汎用機のため、形は昔の戦闘機と基本変わらない。ただ主兵装はビーム兵器だ。

「隊長のリュウと副隊長ロミです」 

「汚い手でさわるんじゃない」

 リュウは東洋系の筋肉質イケメン、なぜか日焼けしていて白い歯が覗く。運動部のキャプテンみたいだ。彼らの制服は黒に白ライン、リュウは二本線、ロミは一本線だ。

 ムッとなるヨキ。「鼻くそつけちゃえ」ペタ。

「あなたはエスパーね。私もなの。あ、握手はやめとくね」

 ロミは栗色のショートヘアにもみあげがトレードマークの美女。背は明より高い。整った顔立ち。やはり体育会系だがリュウと違い優しそう。

「ここは通常の格納庫ですが、第二格納庫はミクロ化されています。ご案内します」 

 そこには大型機が格納されている、戦闘爆撃機に輸送機のようだ。

「あ!」

 <フロンティア号>もここに収容されていた。

 明たちは自分たちの宇宙船に駆け寄る。傷だらけの船体に触る。損傷は想像以上だ。

「こりゃ廃棄か、バラしてパーツだな」整備班の乗組員が喋っている。

「・・・」明たちは何も言えないでいた。

「バカ言うな。こいつはまだ飛べる。飛びたがっている」

 その声に振り返るとニコライ機関長が立っていた。

「よ。わしは整備長も兼ねとるんじゃ」

 ニコライは<フロンティア号>に触れる。

「こいつはいい宇宙船ふねだ」マーチンも似たようなことを言っていた。「艦長に修理改修して欲しいと頼まれた。やるだけのことはやってみるつもりだ」

「え?父さんが?」美理が驚く。

 <フロンティア号>は元々啓作と母親が乗っていた未知の異星の宇宙船だ。それを地球人が改造武装した。わかる気がする。

「以前私は銀河パトロールの交通課にいたんだけど、貴方たちの宇宙船、スピード違反で何度か取り逃がしたわ」ロミは元銀パト。 

「あはははは・・」明あせる。

「船内に入れますか?」突然啓作が尋ねる。

「何だ?忘れ物か?コクピットはダメだが、居室ならいいぞ」

「ありがとうございます」

 啓作はひとり船内へ。

 居室は特に損傷が激しい。手つかずだ。怒りと哀しみがこみ上げて来る。

 啓作は瓦礫の中から目的の物を見つける。


 警報が鳴る。続いて艦内放送。

『10分後に大銀河帝国の基地を攻撃する。総員戦闘配置』

 

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