エピローグ
エピローグ
宇宙歴499年。
<スペースインパルス>はある惑星に接近する。無人の砂漠の星。
メインブリッジに警報が鳴り響く。第一級戦闘態勢。
クリスが「目標接近!」
メインパネルには根を張った“巨大植物”が映る。
ショーンが艦長席を振り向きつつ報告する。
「あらゆる言語で呼びかけていますが、応答ありません・・あ!」
“植物”の目がカッと開き、インパルスに衝撃!
・・しかし船体はビクともしない。
サライは平然と操縦を続ける。
「主砲発射!」流艦長が命じる。
光の束が命中。
“植物”の“根“を切断、”本体“は地面に落ちる。
「サンプルを回収」
「待ってください」
”植物”から炎が上がる。
そして燃え尽きる。
エスパーと認定された明はアランに呼び出された。
居住区の一角。ロミとヨキが同席している。
アランが口を開く。
「エスパーに関しては数が少ないというのもあるが、地球では今だに差別の色が濃い。考えてもみたまえ、自分の考えが読まれていたら嫌だろ?実際読心能力を持つエスパーは少ないのだが。知ってると思うが本艦内にはESPを妨害する“対ESPシールド“が張られている。敵のESP攻撃を防ぐだけでなく、エスパーと非エスパーが意識せず共存するためだ。このためエスパーは本来の力を発揮出来ない。唯一シールドが無いのがこのエリアだ。何か試してみるか?」
明は机の上のペンを動かそうとするが動かない。
代わりにロミのスカートがふわり。
パカーン。
「いてっ」ロミのサイコキネシスでフライング灰皿をくらう。
明は頭を押さえながら「わざとじゃないですう」
「・・かなり特殊なエスパーのようだ」
ヨキが「単なるスケベじゃん」
「ESP波解析はあくまで予測に過ぎない。実際どれほどの力を持っているのかテストを受けてもらう。ロミ」
「さあ、覚悟なさい」
<スペースインパルス>は水の惑星に着水し、潜行する。
明は艦首サブブリッジの副操縦席にいる。
海底にそびえる“巨大植物”。
「撃て!」
リックが標準を合わせる。発射スイッチを押す。
主砲数発が”植物”に命中。
“植物”は四散し海の藻屑になる。
「うーん・・」美理はペンを鼻の下にはさみながら「麗子ぉ、教えてえ」
麗子はルリウス星に帰った。ここにいない事は分かっている。
ここは居住区内の美理の居室。父親との同室を断り(艦長は落ち込んでいた)、シャーロット・ピンニョと同室だが、今ふたりは部屋にいない。
「ふう」美理はため息をつく。
明日はテスト。試験勉強に疲れて背伸びをする。
それにしても艦内学校はずいぶん生徒が減ってしまった。
時計を見て「え~っと今ルリウス(の学校)はちょうど昼休みか」
麗子の声が聞きたくなったが、作戦行動中に個人通信はできない。
机の上の写真立てが目に入る。
<フロンティア号>で撮ったみんなの写真。兄もいる。
「これでよかったの?」
写真の啓作は何も言わない。
美理は首をぶるぶると横に振り、机に向かう。
木星型惑星。
インパルスは雲の中に降下する。
“巨大植物”が雲の中を浮遊する。
ロイが主砲発射ボタンを押す。
命中。目標は爆発する。猛烈な嵐がその破片を四散させる。
クリスが「後方にトスーゴ艦隊!数8!二隊に分かれて接近!」
先制攻撃をくらう。向こうが“風上“だ。
操縦桿を握るサライが「回頭します」
「いや、針路そのまま。減速しつつ左右へ各砲射撃開始」
「バリアー後方へ集中!」
機関室。
二コライが叫ぶ。「減速!急げー!」
マーチンが走る。飛びついてレバーを操作する。
「後部主砲発射!」
第九砲塔。グレイが「捉えた!」発射。
砲撃戦。
敵のビームはインパルスの重装甲の前に跳ね返される。だが船体にはヒビが入る。
敵艦隊はインパルスを追い越し・・前へ。
前部主砲一斉発射。
被弾あるものの無傷で敵を撃破する。
インパルス上方に新たなトスーゴ艦隊がワープアウトする。
「敵の援軍です。12隻ワープアウト」
「回頭!」
サライが操縦桿を引く。
「これは・・敵艦に高エネルギー反応!」
「新型か?」
敵旗艦艦首よりプラズマ砲が発射される。
「避けろ!」
サライは目いっぱい操縦桿を回す。
光が迫る。間に合わない。
明は非常用制御ノズルを噴射させる。
光は左翼をかすめる。翼の先端が溶ける。光は木星型惑星を貫通する。
「チッ」サライが舌打ち。
「なんて威力だ」ロイがつぶやく。「これまでのトスーゴ艦とは違う」
「他の敵艦の武器もパワーアップしている」
敵艦隊が発砲する。
「これより敵艦隊中央を突破する。両舷全速!」
「エンジン全開!」
「フルパワー」
力強い咆哮。
惑星より上昇。砲火を掻い潜り、インパルスは上空の敵艦隊に近づく。
再び敵旗艦の艦首に光。
「させるか!」リックが叫ぶ。
主砲一斉発射。
命中。敵旗艦は木っ端微塵に爆発する。
インパルスは敵艦隊を全滅させ、木星型惑星を後にする。
夜のサブブリッジ。
明は一人で当直している。
「お疲れさま~夜食でーす」
ボッケン、ピンニョ、美理が差し入れ。美理自作の親子丼。
「おーサンキュー」
明はガツガツ食う。
美理はレーダー席に座る。
計器に触れずに「3時方向、距離1万、おやつです」遊んでる。
「兄き。久しぶりに会ったんだろ?何か話したら?」
明は驚き、食べるのを止めて美理を見る。
改めて見る彼女は 綺麗だ。
「ん、んん~・・美理ちゃんは卒業したらどうするつもりなの?」
「メインブリッジのレーダー係狙っています。来週から実習始まるからよろしく」
ピンニョが「艦長の娘だから大丈夫でしょ」
「ぶー。全然コネにならない。父さんはむしろブリッジ勤務に反対だし」
美理はじ~と明を見る。
「明くん、痩せた?ちゃんと食べてる?無理してない?・・あ、そうだ。聞いた?シャーロットさん、赤ちゃんできたって」
ブー! 明は食べ物を吹き出す。ボッケンにかかる。
「ほ、ホントかい?・・で・・?」
「で?」
察してピンニョが「シャーロット=流になりました」
「私、叔母さんだよ」
「強いな、あの人は・・。俺たちも頑張らないとな」遠い目。
「うん」前を見る。
前方には無数の星。
「明くん。ESPの修行に行くの?」
「ああ。俺のESPは特殊で、ロミさんじゃ手に負えないらしい。キキイ星系にすんごいエスパーがいるんだって。ヨキも一緒」
ピンニョが「ボクも通訳で行くの」ピンニョは数百の言語を理解出来る。
「ボッケン、お前もシェプーラ星に行くんだろ。いつ出発だ?」
シェプーラは掟に厳しい。だがそれ以上に恩義に厚い。大銀河帝国から自分たちを救った地球連邦に国交を開く事となり(侵略したのも地球人なのだが)ボッケンがその仲介役というか親善大使を任された。
「明日」
「俺たちより前じゃねーか。準備できてるのか?」
「誰かさんと違ってね」
美理は明とボッケンに抱きつき、
「しばらくお別れだね。みんな気をつけてね」
<スペースインパルス>の後部上甲板から<フロンティア号>が発進する。
プロトン砲はデコラスとの戦いで大破したため撤去されている。
機体は大きく旋回してインパルスのメインブリッジの前を通過する。
コクピットで明とヨキとピンニョは敬礼する。
「行ってまいります」
艦長席の流啓三が敬礼で答える。
<フロンティア号>はエンジンを噴射。ワープして行く。
機関室。ニコライに怒鳴られながらエンジンの整備をするマーチン。
第九砲塔。筋トレしているグレイ。
下校する美理。ポストに麗子からの手紙を見つけてにっこり。何と古風な。
お腹を気にしながらプログラミングするシャーロット。
<スペースインパルス>は再び別の星へ・・・
完
読んでいただきありがとうございます。これにて<第二部>終了です。
原作(漫画版)とは全く違う展開になっています。
今回で主人公の親友とも言うべき流啓作が退場。彼の死は明たちをどう変えるのか。ちなみにアラン副長とキャラが被るからではありません。第6章⑤でさりげなく出てきた”暗黒流れ星”はもちろん島本和彦先生の許可は取っていません。
次からは謎の敵<トスーゴ>との本格的戦争に入ります。かなり先になると思いますが、またいつの日か。