表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球決戦 ースペースマン5-  作者: 本山なお
31/33

別離 そして陽はまた昇る⑤

 <スペースインパルス>は地球旧北極へ降下する。

 ミラージュ島は隕石衝突の跡のように木々がなぎ倒され、中央には巨大なクレーターがあいている。

 倒れている明たちを発見、収容する。

 ボッケンとリュウの口から「啓作の死」が知らされる。

 泣きじゃくる美理。 

 気を失うシャーロット。 

 信じられないピンニョ。

 無言のグレイ。

 泣く麗子。 

 気がついたヨキとマーチンも泣いている。

 肩を落とす流啓三。 

 これは夢か?

 なぜだ なぜみんなの姿が見えるんだ? 

 哀しみが満ちて来る

 俺のせいだ・・俺がうかつにデコラスの誘いに乗ったから・・

 ヨキは一度デコラスに勝っていたから?

 アンテナを破壊して得意になっていた?

 わからない・・

 夢なら覚めてくれ 早く!

 啓作・・この時代で俺を見つけてくれたのはお前だった

 瀕死の俺を助けて 仲間に誘ってくれた

 ピンチの時も俺が熱くなりすぎた時も 沈着冷静に助けてくれた

 お前がいたから俺は、いや俺たちは生き残ってこれた

 お前が・・・

 そうだ お前は俺と違って、考えて動く

 盾となって俺を守るなんて、ありえない

 ありえないはず・だ

 あの時 お前は笑っているように見えた

 ・・・・

 明は医務室のベッドで目覚める。

「!」

 重い。身体が動かない。動かせない。

「気がついたか」Qがのぞき込む。「起きなくていい。ESPの使い過ぎで身体と精神が疲れ切っているんだ。休めば治る。今はゆっくり休め」

「ESP?」

「友の死でESPちからが覚醒したとは皮肉なものだ」

「・・・」

「自分を責めてはいけない。彼のためにも早くよくなるんだ」

「Q先生」

 看護師に呼ばれたQは明の病室を後にする。

 ひとりになった明は天井を見つめる。

「・・・」灯りが歪む。

 泣きながら深い眠りに落ちていく。


 誰かが俺を見ている。誰かが手を握っている。暖かい。

 次に明が目を開けた時、心配そうに見つめる美理の姿があった。

 涙の跡が見える。少しやつれたような。スペーススーツではなく学生服を着ている。

「大丈夫?」美理が尋ねる。

 やさしい声。いつもはほっとする声なのに、胸に突き刺さる。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 明は飛び起きる。かろうじて出たのは 「ごめん」

 驚く美理。

「俺のせいだ。俺のせいで・啓作は・・・」

「どうしてそう考えちゃうのかな。・・そうかもしれないし、そうでないかもしれない」

「俺に・そんな・価値なんて無い!」

 美理はまっすぐに明を見る。

「悲しいね。心が痛いよ。私も。あなたと一緒」

 美理は両腕を広げて・・ハグする。

「あなたの悲しみが痛みが少しでも和らぎますように」

 美理のやさしさに涙がこぼれる。

「あいつは・・もう・・いないんだな・・・」

「そうだよ」涙声。

「ごめん・君もつらいだろうに」

「私はもういっぱい泣いたから。麗子やみんなが受け止めてくれた」

「・・わあ・あ・あ・あああああああ・・・・・」

 明は声を上げて泣く。

「兄さんは命を懸けてあなたを助けた。あなたにすべてを託した」

「・・・」

「生きて」

「明・・生きなさい」母と同じ言葉だ。

 過去は変わらない。変えられない。変えられるのは未来だ。

「俺は・生きる。あいつの分まで」


 銀河連合本部会議――― 

 地球に打ち込まれた“植物”が“暗黒星”を呼んだ事、デコラスがその存在を知っていた事等を流啓三が報告する。

「その植物は偵察兼監視役だった?」

「デコラスとシンクロしていたとの話も」

「トスーゴと呼ばれる存在との関係は?依然不明か」

「デコラスはトスーゴだったのか?」

「“暗黒星”は恒星のエネルギーを吸収、恒星を消滅させている。その目的は?」

「その暗黒星というネーミング、もっといいものがないか?例えばその”暗黒流れ星”とか」

「デコラスを殺してしまったのは痛いな」勝手なことを言っている。

「幻覚とは厄介だな・・そもそも生物なのか?」

 エスザレーヌが「謎が多すぎますね」 

「<スペースインパルス>副長アランです。私から”スーパーノヴァボンバー“について説明いたします。マイクロギャラクシーエンジンを使って人工的に超新星を造り出し、そのエネルギーを一方向に集束したものです。充填次第で本物の超新星爆発に匹敵するエネルギーを得られます。今回暗黒星にも有効でした」 

「我々の許可なしでの試射だったな」

「急を要する状況でした」流啓三が答える。

「その件については了承しています」エスザレーヌが助け舟を出す。

「引き続き我々は恒星消滅の調査を続けます」

「では次の議題、<地球連邦>の銀河侵攻に対する賠償・・」

デコラスの暗示のためとはいえ、銀河の星々へ侵略した<地球連邦>は<銀河連合>の管理下に置かれ、多額の賠償金を払う事となった。

 流啓三は席を立つ。

 エスザレーヌがひと言。

「流艦長。・・ご子息、残念です」 

 通信終了。  

 流啓三は無言で通信室を出る。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ