別離 そして陽はまた昇る④
明の噛んだ唇と握りしめた手から血が落ちる。
明は顔を上げる。
あふれる涙を拭きもせずデコラスを睨みつける。髪が逆立つ。
「うおおおおおおおおおおお・・・・・・・ 」
声が出た。
叫ぶ。心の底から叫ぶ。
ヨキはうっすらと目を開ける。
信じられない光景が飛び込んでくる。
明の右手に野球ボール大の光る球が現れる。ESPエネルギーの塊だ。
明はそれを握り潰す。拳が輝き出す。
「兄き・・」
ボッケンは明を見つめることしかできない。
「明?」
それは墜落し逆さまになった<フロンティア号>のマーチンも同じだ。
「何が・?」
リュウも何が起きたのか分からない。
「うおおおおおおおお――――・・・・・・・ 」
叫びながら明は光の球を放つ。
怒り。憎しみ。それ以上の哀しみ。そのすべてをデコラスにぶつける!
デコラスは微笑む。
それは不敵な笑いではなく安堵の笑み。
光が命中する。デコラスは瞬時に蒸発する。
球は後方の“植物“の目の中へ吸い込まれて行く。
1000mもの巨体から光が洩れる。
それは悲鳴のような音を発しながら、新星のように白く輝く。
炎が上がる。
丸い本体がドロドロに溶けていく。
数千キロ離れた地球各地で”根”が燃えて火災が発生する。
”巨大植物”は燃え尽き消滅していく。
明は巨大なクレーターの前で立ち尽くす。
美理は振り向く。
「明くん?(何があったの?何が悲しいの?)」
「地球で・・凄まじいESP反応です」
<スペースインパルス>は金星軌道を通過中。クリスの報告どおり地球の旧北極海に巨大な光が見える。
「こんなの・見たことない」
「今は後回しだ」
“暗黒星”は目標を見失ったかのように、速度が遅くなる。やがて迷走を始める。
「!?」
「何か解らないがこのチャンスを逃すな!」
インパルスは迷走する”暗黒星”を追い越す。
「エネルギー充填80%」
「予定変更。可能な限り充填続けろ」
数分後“暗黒星”は再び太陽を目指し動き出す。
「距離をとれ!接近しすぎるな」
「水星軌道を通過」
「反転180度」
インパルス回頭。太陽の前に立ち塞がる。
“暗黒星“はアメーバのように変形し触手を伸ばそうとする。
「生き物なの?」誰が言ったのか分からない。
誰も答えない。いや答えられない。
触手と言うより正に巨大な”手”を広げた様な形に変わる。
「こんなのナカトミ星の時はなかった」
「エネルギー充填完了。出力100%。オールグリーン」
「対ESPシールド異常なし」
「角度修正」制御ノズル噴射。
「距離30万キロ」
「第一から第五までの安全装置解除」
「安全装置解除」
両翼下の発射孔が開く。光が洩れる。
「目標接近、距離10万キロ」巨大な”手”が迫る。
「敵を牽制する!反重力ミサイル発射!」
インパルス艦首より数発のミサイルが発射される。
“暗黒星”周囲で爆発。
反重力場が発生。“暗黒星”の動きが止まる。
「軸線に乗った」
「射線軸線上に地球および他天体なし。艦影なし」
「!」
”暗黒星”に無数の”目”が開く。中央のは特に巨大だ。
「化け物め」
「あの目を狙う。総員ショックに備えろ!・・スーパーノヴァボンバー発射10秒前!!」
「最終安全装置解除」
「最終・安全装置解除」
「5・4・3・2・1・発射!!」
流艦長が発射トリガーを引く。
ピシュィー・・ン
<スペースインパルス>の両翼下発射孔が輝く。
どっぉゔぉ―――んんん―…
超新星爆発に匹敵するエネルギーの塊が放たれる。
ふたつのまばゆい光が宇宙空間を進む。
”暗黒星”へ
ドッツ 命中!
光は巨大な目の中に吸い込まれて行く
目が消える。文字通りの暗黒。その闇から光が洩れる。
”暗黒星”の形が極端に変形を繰り返す。苦しんでいるかのように
闇は光に溶けていく・・・・
断末魔。
何も聞こえないが、叫び声のようなものを感じる。
そして”暗黒星“は消え去った。




