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地球決戦 ースペースマン5-  作者: 本山なお
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スペースインパルス②

 明たちは再びエレベーターに乗り、船体中央で降りる。

 居住区に案内された明たちは驚く。

 “船“の中に”都市まち“。

 ビルが建ち並ぶ。畑や野原もある。遠くに山も見えるが、これはホログラフだろう。

「あり得ない。だって・・」

 この船の全長は555mのはず。ここの空間だけで1km近くある。

 クリスは微笑んで「ミクロ化シティです。空間全体が約1/8に縮小されています」 

「1/8・・」

「密輸用に通称“カプセル”という空間圧縮技術があるが、これ程の規模は見た事ない」

 流石の啓作も驚く事ばかりだ。

「美理さん麗子さんヨキさんは未成年なので、ここの学校に転入していただきます」

 ヨキは学校嫌い。思わず「え~」  

「俺たちは?」 

「この艦に残るのも降りるのも自由です。すぐには降りられませんが。残られる方は、部署を決めていただく事になります」

 明たちは泊まる宿舎内の食堂で夕食。バイキング形式だ。マーチンがいたら・・。

「今は船内時間で20時、ゆっくり休んでください。明日8時にここで朝食、10時から艦内を案内します」

 クリスはそう言うと、明たちに鍵を渡し、一礼して去る。


 美理と麗子とピンニョはお風呂(大浴場)に入る。(サービス♡)

 宿舎の最上階にある大浴場。広さはテニスコート程。壁の絵は変えられるようで、今は富士山が映っている。屋上には混浴の露天風呂もあるらしい。

「あー。いい気持ち」

「生き返るう」

「<フロンティア号>のお風呂はお世辞にも広いとは言えないものね」

「よかったね、美理。お父さまが生きてらして」

「うん・・」

 美理は素直に喜べない。麗子の家族はデコラスの手に落ち消息不明だ。

 扉が開いて入って来たのは・・「!」

「シャーロットさん!」

「心配かけたわね。もう大丈夫よ。名医のお墨付き」かけ湯をして湯舟に。

「よかった。本当に・・」

「マーチンくんも意識戻ったわ」

 その報告に美理たちは「わあっ」と喜びをあらわにする。

「聞こえた?啓作」

「ああ」隣の男湯から啓作が返事する。

 こちらも喜びを隠せない。「明日会いに行こうぜ」「差し入れどーする?」

「これから、どうなるのかな?」

 美理の問いに、しばらく沈黙。

 シャーロットはにっこり笑って、「考えても仕方ない。ケセラセラ。なるようにしかならないわ」いつものシャーロットだ。

 美理と麗子とピンニョも微笑む。

 明とヨキは隣の男湯で聞き耳を立てている。こいつら疲れているはずなのに。

 呆れているボッケンと啓作とグレイ。

「さっきの飯も美味かったし、いい所だな」とグレイ。

「マーチンみたいなこと言うな」

「どうする?これから」

「・・・・・」

「おかしいなあ。女湯にテレポート出来ない・・」

「ヨキてめえ。あ、間違っちゃったで済まそうとしてるな」

「てへ」

「対ESPシールドじゃよ。この船のは存在を感じにくいが、超強力だよ」

 湯舟に浸かっていた老人が説明してくれた。小柄な赤ら顔の白人で頭頂部がはげている。身体には無数の傷跡がある。明はギャングの大親分を連想した。

「敵のESP攻撃対策という意味もあるが、エスパーと非エスパーが気兼ねせず一緒に暮らせるように、ESPを封じる結界が張られているんじゃ。女湯のぞくなら確かのぞき穴がこっちに・・」

 ついて行くヨキと明。

 ボッケンとグレイは顔を見合わせ、「誰?」 「さあ?」

「美理い。明が覗こうとしてるぞー!」お兄ちゃんが助けた。 

 女湯から悲鳴。


 部屋は二人部屋。不運なボッケンはまた明と同室だ。

「興奮して眠れねーよ」 

 明は隣でガーといびきかいている。

「大物?」

 ヨキは爆睡。今はひとりだがマーチンと同室だ。              

 啓作はじっと天井を見つめている。グレイも寝ていない。

 眠るピンニョ。シャーロットはロビーにあった本を読みながらあくび。 

 美理と麗子は疲れて眠っている。

 美理の寝言「明・・ばか」

 艦長室の椅子に座る流啓三は険しい表情で銀河を見つめながら呟く。

「すまん・・啓作、美理」 


― 銀河連合本部会議 ―

 <銀河連合>の首都“ロトス=リカ”は隣の“ロトス=オリ”と二連星を成す地球とよく似た惑星だ。地球からの距離は約5万2千光年、たて・ケンタウルス腕内にある。

 薄暗い会議室。スタジアム程の広大なホールに数え切れない様々な星系の議員が議席を埋めている。報告者の声が響く。

「大銀河帝国の侵略はオリオン腕より核恒星系へ拡大。バロー星ゼダル星ヤッハル星をはじめ146の星系が征服されています。我が銀河連合軍は十字星雲他30の星域にて絶対防衛線を築き、交戦状態に入っています」

「地球連邦クイーン大使、意見を述べてください」

「ですから、あれは正規軍ではなく、独裁者デコラスに操られている一般市民なのです」

「それは聞いた。しかし侵略は侵略だ」 

「多くの民が殺されているのだ」

 ホールの中央にひとり座り腕を組んでいるのは銀河連合大統領エスザレーヌ女史だ。

 通称“銀河の女王”。ここロトス=リカ出身の金髪のヒューマノイド美女。

 30歳程に見えるが年齢不詳、一説には100歳を超えるとか。

 長い脚を組み替え、冷たい澄んだ声で尋ねる。

「スペースインパルス・流艦長、あなたの意見は?」

 流は立ち上がる。

「本艦は調査航行を中断し、地球へ向かっています。地球人の問題は地球人で解決したい。デコラスさえ倒せば人々は元に戻る可能性が高い」

「それは前にも言われましたね。もう一刻も猶予はありません。あなた方が出来なければ・・銀河連合は地球を攻撃します。リミットは後で連絡します」 

 会議終了。 

 ジェームス=クイーン大使が流に近づく。シャーロットの父親だ。

「女王様はお怒りだ。苦労かけるな」 

「大使、あなたこそ」 

「娘は元気か?」

「かなり疲労衰弱していましたが、もう回復したようです」

「迷惑をかける」

「いや、彼女は優秀なプログラマーだ。本艦の大きな戦力になります」

「ピアニストになると言っていたのにな」

 クイーン大使の姿が消える。

 エスザレーヌも。ほかの議員たちも。会議場も。すべてホログラフだ。 

 流啓三は通信室を出る。

 アラン副長が立っていた。

「お疲れさまでした」

「うむ」

 歩きながらふたりは会話する。

「銀河連合軍の地球攻撃の日は決まったのですか?」

「いや、まだだ。おそらく侵攻中のサジタリウス腕だけでなく、ペルセウス腕や銀河垂直方向など多方面から一気に反攻するものと思われる。そのため足並みを揃えるのに時間がかかる。それまでに我々で何とかしろと言うのがエスザレーヌの本心だろう」

「彼らを見つけるのに時間がかかりました。タイムリミットまで多分あと一週間もないでしょう」

「すまん」

「これまでも銀河帝国を夢見てクーデターを起こした者は何人もいます。ざっと計算しても戦力差は歴然です。デコラスという男、なぜこんな無謀な戦争を仕掛けたのでしょう?」

「わからん。意外と勝算があるのかもしれんぞ」

「あり得ません」

「ESPで数億の人間を操ることもあり得ない話だった。常識にとらわれ過ぎてはいけない」

「・・・」

「ふ・・本艦一隻で大銀河帝国と戦うことも無謀だと思うがな」

「艦長。<スペースマン>のリーダー弓月明に関して報告があります」

 流啓三はアランを見る。アランは報告書を差し出す。

「彼の事を調べました。彼が乗っていた旧式宇宙船では冷凍睡眠は100年が限度です。船の損傷や金属疲労からも・・しかし・・」

「実際には500年以上経っていた。どういう事だ?」 

「分かりません」


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