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地球決戦 ースペースマン5-  作者: 本山なお
28/33

別離 そして陽はまた昇る②

 <スペースインパルス>の目前に“暗黒星”が迫る。

「スーパーノヴァボンバー準備!」

「!!」

 流艦長のその言葉に緊張するクルーたち。

「何それ?」ピンニョがつぶやく。

 勿論美理たちには解らない。だがクルーたちの異様な緊張感は解る。 

 第一砲塔。グレイがリックに尋ねる。

「何ですか?そのプロレス技みたいなのは?」

「この船の必殺兵器だ。まだ使った事ないから、俺も詳しくは分からないが」

 再びメインブリッジ。

 サライが「艦長、まだテストが・・」

「そんなん言うとる場合とちゃう」ニコライは軽くあしらう。

「確かに奴の吸収できる限界以上のエネルギーを当てれば破壊できるかもしれません」

「副長。あれは恒星を喰いつくしたんですよ」

「スーパーノヴァボンバーは言わば人工の超新星爆発です。そのエネルギーは恒星のそれを遥かに凌駕します。現在勝てる可能性のある手段はこれしかありません。ですが発射には銀河連合本部の許可が要ります」

 皆がアランを見る。

 異星人である彼には監査の役目もある。だが許可を待っていては間に合わない。

 流艦長が静かに言う。

「発射準備に入れ!私がすべての責任をとる」

 ロイが頷き「エネルギー充填開始」 

 ニコライが「エンジン出力最弱へ。エネルギーをまわします」

「牽制しつつ後退!時間をかせげ!」

 インパルスは主砲とミサイルを発射しつつ後退する。

「重力震多数!」クリスが報告する。

 インパルスの周りに地球連邦艦隊がワープアウトする。

『<スペースインパルス>を援護する!全艦撃ち方始めー!!』

 艦隊は直ちに攻撃を開始する。

 流艦長は無言で敬礼をする。 

 千を越えるビームとミサイルの束が”暗黒星”に向かう。

 それらはすべて吸収されて消滅する。


 マーチンが叫ぶ。

「いっけー!」

 <フロンティア号>は再度プロトン砲を発射する。今度は巨大アンテナを破壊した最大出力だ。

 光の束は巨大植物へ。

 明たちの頭上で眩い閃光。

 跳ね返され、効果はない。

 プロトン砲から火花が散る。続けて煙。

 連射のツケで回線がショートした。自動消火が働くがもう使えない。

「マーチン!反重力ミサイルだ!」

 明の提案にマーチンは躊躇する。明たちを巻き込むリスクが高い。

「エリア最小で根元を狙え!」

 それだと明たちのいる所に影響がない上に10倍の威力が出る。

「わかった!」

 マーチンはホーミングレーザーを発射。牽制だ。

 光線は”植物”の左右後ろに回り込む。敵が気を取られているうちにスイッチを押す。

 <フロンティア号>から大型ミサイルが飛び出す。

 1000mある”植物”の根元に命中。

 重力は10倍の反重力に変わる。

 大地が裂ける。土砂が竜巻のように舞い上がる。

 “植物”も浮き上がるが、強靭な太い“根”がそれを阻む。<ガイア>に絡んでいたものとは太さが違う。

 それを見ていたデコラスは視線を明たちに戻し、

「残念だったな。」笑いながらゆっくりと近づく。

 明はヨキを抱えながら銃を撃つ。

 バリアーに阻まれる。

 何度も何度も銃撃を叩き込む。

「無駄だ。」デコラスは手をかざす。

「む?(明がヨキを背負っている。あの馬はどこだ?)」

 死角からボッケンが斬りかかる。刃はデコラスの首を捉える。

 パキン。「!」

 刃が折れる。地面に突き刺さる。

 ボッケンも地面に叩きつけられる。

「ボッケン!」

 ボッケンはすぐに起き上がり、デコラスの衝撃波をかわす。

 明はほっとする。銃を構え直す。ふと思いついたことを口にする。

「<ガイア>だけじゃなく、お前も操られているのか?」

 デコラスの歩みが止まる。何も答えない。

「そのため俺たちを執拗に攻めた?助けてくれというメッセージじゃないのか?」

 デコラスの唇が微かに動いた。

 声は発していない。だが明には「殺してくれ。」と聞こえた。

 マーチンが叫ぶ。

「逃げろ!明!」 

 <フロンティア号>は上昇し、エンジン噴射!

 バリアー全開で“植物”へ突撃する!

 赤い“植物”の目が見開かれる。

「!」

 忘れようがない。間違いない。あの“恐怖の大王”の目だ。 

 バチッ! 

 跳ね返され、<フロンティア号>は真っ逆さまに墜落する。

「マーチーン!!」


 ”暗黒星”が迫る。

 <スペースインパルス>の両翼下にある昔の旅客機のエンジンのようなメカ。これこそスーパーノヴァボンバーの発射装置だ。先端は穴が開き発射孔となっている。

「エネルギー充填完了」

「万一に備え、各惑星にバリアーを張るよう要請しろ」

 味方艦隊を後方に下がらせインパルスは突出する。

「総員耐衝撃。発射10秒前、9,8,7・・!!」

「!」

 ブリッジが突然宇宙空間へ。 

「きゃあ!」

 美理の隣に怪物!麗子の隣にも!  

 まわりは怪物だらけ。 

 ロイが銃を抜く。 

「だめっ!」

 ピンニョが羽根手裏剣で銃を制す。 

 ロイが銃を向けていたのは、隣のサライ。「え?」 

 流艦長はマイクを取り叫ぶ。

「幻だ!総員、発砲するな!」

「テレパシーの一種のようです」アランが分析結果を口にする。

「対ESPシールドの出力を最大まで上げろ」

 医務室。

 泣きじゃくる子供たち。ぱんぱんとドクターQは自分の頬を叩く。

 機関室。

 我に返るクルーたち。

 第一主砲のリックとグレイもお互いに向けていた銃をおろす。

 動きの止まったインパルスの横を“暗黒星”が悠々と通過して行く。


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