別離 そして陽はまた昇る①
第6章 別離そして陽はまた昇る
ワープアウトした<スペースインパルス>は火星を背に進む。
「緊急発進だったから装甲兵を収容する時間がなかった。陸戦隊の連中は大丈夫でしょうか?」
ロイの問いにアランが答える。
「ワープ前にシンクロ解除したから問題ないだろう」
ここから地球の装甲兵を操縦することは距離的には可能だが、ワープを行うとシンクロが強制解除される(パイロットはかなりのダメージを受ける)。
「<スペースコンドル>も置いて来てしまった。引き続きデコラスの捜索を続けるよう伝えてくれ」
「了解しました」
「目標を捕捉。メインパネルに転映します」
「・・見えないな」
「レーダーには映っています」
そう言うクリスの表情はなぜか暗い。
宇宙の彼方から接近する“それ”はまさに闇。その球体は周りの星を隠しながら迫る。
「直径12700㎞、地球とほぼ同じ大きさです。質量不明。組成・分析できません」
メインブリッジにはそのまま美理たちもいる。第一級戦闘態勢のため外に出られなくなったのだ。
あっけにとられ動けない彼女らにシャーロットが補助席をすすめる。
「何処から現れたんだ?」
ロイの問いにクリスが答える。
「特定できません。発見は木星軌道付近。こちらは地球圏で戦闘中でした。・・間違いなく太陽に向かっています」
「太陽を・喰いに来た?」
「そんな・・」美理と麗子は顔を見合わせる。
流艦長は立ち上がり、命令する。
「目標を“暗黒星”と仮称する。全砲門開け!」
主砲が動き出す。狙いを定める。
「やっと会えたな」
第一砲塔のリックはターゲットスコープを覗きながらそうつぶやく。
「出力100%。直接標準。測的完了。自動追尾中」
「艦首ミサイル発射準備完了」
「ホーミングアロー連続発射準備よろし」
流艦長は静かに命令する。
「撃て」
8基24門の主砲を含め一斉発射されるビーム、ミサイル・・
目標へ
命中・・・それらは“暗黒星”の中に消えて行く。
「!!」
第一砲塔。リックは愕然とする。
それはメインブリッジも同じ。
「貫通した?いや吸収された?」
「効果ありません!」
興奮するロイに対しアランは冷静だ。
「ラミルコンのようなエネルギー吸収特性があると仮定して、現状の武器では破壊できません」
“暗黒星“が目前に迫る。
地球。旧北極海に浮かぶミラージュ島。
<フロンティア号>を降りた明たちはデコラスと対峙する。
「デコラス!」
「ようやく到着か。思ったより時間が掛かったな。」
「お前には聞きたいことが山ほどある」
「何でもどうぞ。」
「え?・いや・・・じゃ彼らを、彼らのクローンを四天王にしたのはなぜだ?」
「奴らもお前たちに復讐したいかなと思ってな。それとも流美理のクローンが見たかったか?」
明は黙ってデコラスを睨みつける。
「聞きたいことはそれだけか。」
ボッケンが「お前のしたかった事は何だ?本気で銀河征服を考えたのか?」
デコラスは肩をすくめ、「知能の高い馬だな。」話を続ける。
「人類が宇宙に進出して五百余年。科学は発展した。だが人類そのものの進化は止まったままだ。新人類と考えられたエスパーは増えない。このままでは近い将来人類は滅びる。新しい進化のヒントを私はパンゲア星で見つけた。群体ではなく単体、素晴らしい。人類は一つにならなければいけない。」
「何を言っている?」
「あったまおかしいんじゃない?」ヨキがささやく。
デコラスは明たちを一瞥し、明らかに見下したあと、話を続ける。
「残念ながら全ての意識を一つにするシステムを作り出せなかった。だが進化のヒントは他にあった。昆虫だ。蜂や蟻のように頭脳とも言うべき王と手足のごとく動く兵隊たち。」
「なんでそ~なるの」
「単に自分の欲望を満たしたいだけだ」
明にそう言われたデコラスは明らかに不機嫌な顔で、
「・・貴様たちに話をしたのが間違いだった。」
デコラスは微笑みながら「これが何か分かるか?」後方の“巨大植物”を指差す。
十字星雲のアスク星で見た球根のような物体。違うのはその巨大さだ。
「昔“恐怖の大王”と呼ばれた存在だ。地球に氷河期をもたらし、弓月明、お前の運命を変えたモノだ。地球の地熱を奪いここまで成長した。」
「まさか<ガイア>に絡みついていた“根”って?」
「原始的なコンピューターを操るのは簡単だった。そして、その正体は・・“あれ”を呼ぶためのものだ!」天を指差す。
明たちは空を見上げる。今は昼。霧が晴れて青空が広がる。空しか見えない。
「あれって何?」ヨキが小声で尋ねる。
「さあ?」
明たちは”暗黒星”のことを知らない。
「何を知っている?・・デコラス、お前は一体・・・?」
デコラスはニヤリとする。殺気!
衝撃波!
ヨキがESPバリアーを張る。
さらに衝撃波!! 強さが増している。防ぎきれない。
明たちはバリアーごと飛ばされる。以前とは比べようもないパワーだ。
空中で明は銃を構える。デコラスを狙う。最大パワーで 撃つ。
渾身のエネルギー弾だがバリアーに阻まれる。
着地(落下)の瞬間、ボッケンが明をキャッチ。その背に乗せる。
そのままデコラスの周りを駆けながら明は何度も銃撃を繰り返す。
しかしデコラスのバリアーは破れない。
「くそっ!」ヨキは空中に浮きながらサイコキネシスで反撃。
デコラスの頭上に巨大な岩をテレポート。押しつぶす。
しかし岩はバリアーで砕かれる。以前と違い頭上にもバリアーがある。
「馬鹿め。同じような手が何度も通用すると思うな。」
「だと思った」ヨキはひょいと手首を上げる。
ゴヴァ!デコラスの足元の地面が大爆発を起こす。
空中に逃れたデコラスを明の銃弾が襲う。
「くらえ!」
ヨキのESP稲妻がデコラスを直撃する。
それでもバリアーは破れない。
デコラスは宙に浮いたまま笑いながら手を振り下ろす。
ダウンバースト。
ヨキは地面に叩きつけられる。
「きゅ~」気絶する。
「ヨキー!!」
ボッケンがヨキの元に走る。明は途中でボッケンから飛び降り、走りながら何度も銃を撃つがデコラスには届かない。
ボッケンがヨキを咥えて乱暴に自分の背に乗せる。
<フロンティア号>コクピットのマーチンだけは通信で”暗黒星”の出現を知っていた。インパルスの主砲が効かないことも。
「奴が”あれ”を呼んでいるとしたら・・」計器を操作する。
マーチンが叫ぶ。「明!ふせろー!!」
プロトン砲発射!
マーチンが狙ったのは巨大植物だ。だがバリアーに阻まれる。
「!!」プロトン砲が効かない!
明の頬を一筋の汗が流れていく。
「こいつがデコラスのESPを増幅させている?」
デコラスは不気味に微笑む。
「貴様らでは私には勝てない。」
<スペースインパルス>の目前に“暗黒星”が迫る。
流艦長が命令する。
「スーパーノヴァボンバー準備!」




