決戦④
<スペースインパルス>主砲発射!
エネルギー弾は弾道を曲げられ<真王星>のある一点に命中。表面を削っただけで吸収、一部は反射される。
「!?」驚くロイ。
<真王星>の一部表面(デコに当たる箇所)はエネルギーを吸収する謎の金属に覆われていた。
「・・・」
エスザレーヌは銀河連合旗艦の中でその映像を見つめる。
彼女の部下がつぶやく。
「あれは・・わが銀河連合最高機密の超金属ラミルコン!」
再び<スペースインパルス>。流艦長が命令する。
「ミサイルメインに切り替えろ!」
「てえっ!」
発射されるミサイル。
<真王星>に数多の爆発が生じる。
ジェラードが微笑む。
「警告を無視したな。光子砲発射!」
ドグァッ!<真王星>より地球へ向け巨大光子砲が発射される。
破壊力は<ネオ=マルス>と同等だ。デコラス宮殿は地球の裏側のため影響ないと判断したのだろう。
「当てろ!」
インパルスの主砲群が火を噴く。
相殺。一斉発射された主砲は光子砲から地球を守った。
「敵要塞接近!」
<真王星>の攻撃は止まない。
「何としても落とせ!押しつぶせ!」ジェラードは必死だ。
巨大な要塞がインパルスに迫る。
「主砲連続発射!」
主砲エネルギー弾は弾道を変えられラミルコンで覆われた部位へ着弾。吸収・反射される。
「ミサイル攻撃をあの一点に集中!」
「了解!」
連続でミサイルがピンポイントに命中。
ラミルコンにひびが入る。通常装甲より弱い。
その時<真王星>の裏側に爆発が起こる。ここはラミルコンに覆われていない。
「!」
我に返った地球連邦艦隊が攻撃を開始していた。
集中砲火が<真王星>を赤く染める。
流艦長から笑みが漏れる。すかさず命令する。
「ウィングサーベル展開!」
インパルスの主翼が輝く。翼が刀と化す。
「ぶった斬れ!」
ガキッツ! 光の刃が<真王星>のひびの部分に突き刺さる。
「機関全速!」ニコライが機関室に命令。
ドヴァ―ン・・・ エンジンが吠える。
ズズズズズズズズ・・・ 片翼を突き刺したままインパルスが進む。
ひびが広がる。
「!・・・」
”フィードバック”(”シンクロ”の副作用)を受けてジェラードは気絶する。
インパルスは<真王星>を真っ二つに切断する。
「<スペースコンドル>第一陣を収容後、地球へ降下する」
流艦長は青い地球を睨む。
「負傷者救護のため救命艇発進準備!陸戦隊も同行しろ!」
「了解」
啓作はメインブリッジを出て格納庫に向かう。
晴れ渡った空で二羽の鳥が舞っていた。青と黄。
朱雀ことガルーダとピンニョ。
近づいては遠のき、また近づく。まるで踊っているように見える。
それは小さな戦闘機のドッグファイト。
ガルーダのくちばし先端からビームバルカンが発射される。
ピンニョは急速回避。Gに耐える。
DNAはじめ生体改造を施されたとはいえピンニョは生身だ。
それに対しガルーダの身体は機械化されていた。飛行速度はピンニョのそれを凌駕する。
「ルリウスで敗れたのを忘れたのか?お前では俺に勝てない」
ガルーダは速度を上げ、羽根に仕込まれたナイフによるヒットアンドアウェイ攻撃を繰り返す。
ピンニョは紙一重で回避。その一瞬の間に羽根手裏剣をたたき込む。
当たってもガルーダの装甲は破れない。
「死ね!」
ガルーダの鋭い爪。それは空を切る。ピンニョは”木の葉落とし”で難を逃れる。
「逃がすか!」ピンニョを追う。
ふわふわと漂うピンニョの羽毛。だだの羽毛なのだが、ガルーダは何か仕掛けがあると思い、回避する。
「!」ガルーダの身体が一気に数キロ持ち上がる。
巨大アンテナ爆発で生まれたキノコ雲。その上昇気流に巻き込まれた。勿論故意だ。
「姑息な」ガルーダが気流より脱出。
その途端下から羽根手裏剣の洗礼。一つがガルーダの目に命中する。
ひるまずガルーダが急降下して来る。
くちばしから発射されたビームバルカンがピンニョの尾を掠る。
さらに爪がミサイルと化し発射される。
ピンニョは避けるが、爪ミサイルは急速ターン、自動追尾して来る。
Gに耐えながらピンニョが叫ぶ。
「やっぱり・・お前はガルーダじゃない!ボクたちは自分の身体を傷つけることはしない!」
爪ミサイルが爆発する。
「!?」不思議がるピンニョ。
「ようやく気付いたか」天空より声。
「!」
太陽を背に小さな影が急降下。
もう一羽の青い鳥がふたりの間に割って入る。
羽根手裏剣がガルーダに命中。爆発。爆薬入りだ。
ガルーダが二羽。
「女はさがってろ。どちらが本物か、決着をつけようぜ」
「オリジナルか」
朱雀を名乗るガルーダは他の四天王同様クローンだった。
ふたりのガルーダは離れる。
大空でターン。再び接近。
空中で交差する。
決着は一瞬でついた。
片脚を失ったガルーダは、落ちていくもうひとりの自分を見つめる。
「ガルーダ!」ピンニョが駆け寄る。
<エンゼル=ヘア>で別れてから数か月ぶりの再会だった。
「偽物が許せなかっただけだ。ビジネスでもあるしな。俺のクライアントはデコラスじゃない。マッケンジーとかいう地球のお偉いさんさ」
「・・・」
「安心しろ。今のところ人類への復讐をする気はない」
「・・ありがとう」
「じゃあな。だが次に会うときは敵かもしれない」
離れていくふたりの上空から巨大な艦が降下してくる。
<スペースインパルス>から数機の救命艇が発艦する。その一つに啓作はいた。
メインブリッジで流艦長が叫ぶ。
「デコラス!貴様の負けだ!降伏しろ!!




