決戦③
「バ、バカな・・。」デコラスは焦燥する。
動きの止まる大銀河帝国艦隊。沈黙する地上基地。
それらの中の人々は気絶していた。
それは他の恒星系でも同じだ。
「む・ん・・」流啓三が目を覚ます。
「おとうさん!」
美理が駆け寄る。
「て敵は? ESP波は?」
美理はメインパネルを指さす。そこには巨大な爆発が映し出されていた。
「おお・・」
流啓三はしばらく映像を見ていたが、視線を啓作たちに移す。
啓作は黙って親指を立てて合図。麗子とシャーロットは顔を見合わせ、敬礼。
流啓三は四人に頭を下げてひと言、
「ありがとう」
美理は無言で父を見つめる。涙が光る。
アランが目を覚ます。続いてロイがサライが・・
「やった」 「やったのか」 「<フロンティア号>?あの船が?」
皆の顔にも笑みが漏れる。
啓作と麗子は席を持ち主に譲る。
艦橋を出ていこうとする三人に、流啓三はここに留まるよう言う。
一方、銀河連合艦隊。
旗艦のエスザレーヌが微笑む。
「やったのですね、流。流石です」
勝利の余韻は爆発で消された。
インパルスにビームが命中する。
<真王星>が迫る。
『スペースインパルスに告ぐ。降伏しろ。降伏せぬ場合この要塞で地球を攻撃する』
ジェラードが叫ぶ。その頭部は機械と繋がっている。“シンクロ”だ。
<真王星>の全砲門が発射態勢に入る。
インパルスは地球を背に立ち塞がる格好で対峙している。
その周り、守るように<スペースコンドル>第一陣が展開するが、そのエネルギーは尽きかけていた。よく見ると異星の船もいる。
流啓三は目を見開き命令する。
「ここを死守する!もう遠慮はいらん。全砲門を要塞に向けろ!」
残るは<真王星>と地球デコラス宮殿だけだ。
<真王星>よりビームとミサイル! 避けたり撃ち洩らしたら地球に被害が出る。
ロイが叫ぶ。「主砲一斉発射!」
前方を狙える8基24門の主砲が一斉に火を噴く。ミサイルとホーミングアローが続く。
両者の攻撃は相殺される。
「艦載機第三陣、発進!」
<スペースコンドル>と装甲兵を搭載した輸送機が発艦する。
地球を覆うバリアーは既に消失しており、編隊は何の邪魔もされず地球へ。
デコラス宮殿は首都<ラ・ムー>の街を見下ろすなだらかな丘の上にある。昔の日本の城をモチーフにした現代建築だ。海に面した空には巨大なキノコ雲がゆっくりと動く。
<フロンティア号>とリュウ達<スペースコンドル>第二陣はその上空を旋回していた。<フロンティア号>には遠隔操縦式の装甲兵20体が積まれている。インパルス内にいる陸戦隊隊員の回復を待って、一足早く装甲兵の降下準備に入る。
アンテナを破壊されたとはいえ、まだ基地は健在だ。地球連邦の兵士は気絶しているが、パラドックス兵が基地を支配していた。敵の攻撃が来るが、明らかに数は少ない。
<スペースコンドル>がビームバルカンで応戦。ミサイルは威力がありすぎて使えない。
「じゃあ兄き、ボクも行くよ」
「気をつけて行けよ!」
ボッケンがコクピットを後にする。彼だけは遠隔操縦ではなく生身で挑む。
下部ハッチが開く。
装甲兵が降下を開始。目標はデコラス宮殿(地球連邦本部)の制圧だ。
落下途中でスラスターを噴射して減速する。
ボッケンは反重力サーフボードに乗って飛び出す。装甲兵を追う。
ビシッ! 装甲兵が被弾。スラスターを撃ち抜かれ、落下する。
別の一体も。
「鳥だ!」
ボッケンの目は高速で飛ぶ小さな“鳥“の姿を捉えていた。
ピンニョがぴくっと反応する。
「ガルーダ!」
デコラス四天王のひとり朱雀の本体でもあるガルーダ。ピンニョと同じ元実験動物だ。
鳥は空中を旋回し、降下中の装甲兵に迫る。羽根手裏剣を放つ。
反重力ボードを駆ってボッケンが割って入る。くわえた刀が羽根手裏剣を切断する。
ガガガガガガ・・・鳥に向けて装甲兵が発砲する。
ビームマシンガンは追いつけない。ミサイルは羽根手裏剣で撃ち落とされる。
小さすぎて<フロンティア号>のホーミングレーザーでも撃墜は難しいだろう。
そして再びガルーダは装甲兵に襲いかかる。
その襲撃はもう一羽の乱入で阻止される。
ピンニョ!
「人手不足だよ」ヨキがわめく。
ピンニョが出撃して<フロンティア号>コクピットには明とヨキしかいない。明は操縦とレーダーと機関制御、ヨキは全武器と通信を担当している。
上空から大気圏突破してきた<スペースコンドル>第三陣と輸送機が接近。
輸送機から装甲兵が次々と降下を開始する。
先発の<フロンティア号>からの装甲兵はデコラス宮殿敷地内の庭園に着地し宮殿に近づいていた。
制圧目標は旧地球連邦司令部とハイパーコンピューター<ガイア>。
予定では天守閣に隣接する屋上ヘリポートにも着地するはずだったが、パラドックス兵の攻撃に阻まれて着地出来なかった。
「進撃!」陸戦隊副隊長が命令する。
一斉に18体の装甲兵が前進。宮殿の正面入り口を目指す。
その数体が弾を受け爆発する。
行く手に数十体のパワードスーツ。装甲兵の数倍の数だ。二足歩行の人型が半数、残りは六足歩行の昆虫型。これらは宮殿内にいるパラドックス党員による遠隔操縦だ。
先頭は巨大な四本足のケンタウルス型。腕も四本、ビームマシンガンを装備している。この機体のみパイロットが搭乗していた。
「ここは通さん」コクピットで玄武が不敵な笑みを浮かべる。
「正面突破!」
装甲兵らはビームマシンガンとミサイルで応戦する。
攻撃はことごとく外れる。何らかの力で弾道を変えられている。遠距離攻撃は通じない。
四本の腕から銃撃。先発装甲兵の半数がやられる。
警報。上から刀をくわえたボッケンが急降下。玄武はビームマシンガンを発射する。
反重力ボードが砕ける。
既にボッケンは着地。すぐに走り出す。ケンタウルスの腕一本が地面に落ちる。
走るボッケンは水平斬りで昆虫型数体を切断。
「ふん。ちょこまかとうるさい馬め」
玄武はビームマシンガンを連射する。
ボッケンはその弾よりも速く駆ける。避けつつ次第に間合いを詰める。
玄武はスラスターを噴射しジャンプ。
「!」元の場所に置き土産の爆弾。
ボッケンは飛び退く。直後に爆発。
玄武は上からボッケンを狙い撃つ。
ボッケンは銃撃を避けつつ前脚を蹴る動作をする。
馬蹄が飛び出す。狙いすましたように一直線にケンタウルスへ飛ぶ。
当たる寸前、同極の磁石のように弾かれる。見えないシールドだ。
だが馬蹄は弧を描き、再度目標へ飛ぶ。
マーチン作の馬蹄型脳波誘導ブーメラン。原理はヨキの使うものと同じだ。
メインカメラに命中。ボッケンはここのシールドが薄いことを見抜いていた。
馬蹄はブーメランのようにボッケンの許へ戻る。
自動でサブカメラに切り替わるが、玄武が気づいた時には、ボッケンは至近距離まで接近していた。
空中で交差。
ケンタウルスの左前脚を切断。ボッケンは着地しそのまま走り抜ける。
「うおおおおおお・・・・・」
空に浮かぶケンタウルスは残る三本の腕でビームマシンガンを乱射する。
数体の敵スーツが弾に当たり爆発する。
ボッケンはさらに速度を上げ、ビーム弾を避けつつ再接近。
敵の真下へ。懐へ。そして垂直にジャンプ。真下から斬りかかる。
ドビッ! 下から上へ。ケンタウルスは真っ二つに。
脱出した玄武は拳銃を抜く。ボッケンを探す。
「化け物め!奴らが我らの配下になっていたなら・・」
次の瞬間。玄武の身体は銃撃を受けて崩れる。他の敵スーツ数体も爆発する。
撃ったのはデコラスの”呪縛”から解放された地球連邦兵士たちだ。
口々に「デコラスを倒せ」「自由万歳」「地球のために」叫ぶ。
上空から装甲兵本隊が降下。次々と着地する。
ガルム陸戦隊隊長(の装甲兵)が叫ぶ。
「宮殿に突入する!」
ボッケンは玄武の死体を一瞥し、装甲兵たちの後を追う。




