決戦②
先に地球に向かったリュウ達の前にも敵艦隊が立ち塞がる。無人艦載機が先行。
無数の攻撃が来る。避けつつ、攻撃を前方に集中、前進。
艦隊が迫る。
スイッチを押す。”対ESP波”を照射!
敵艦隊の乗員は一瞬行動不能に。
その隙に<スペースコンドル>編隊は艦隊を突破。
ビッ。リュウの横の機が被弾。爆発する。
斜め上方から<デスウィング>が接近する。さらに一機を撃墜。
「野郎!」リュウは直感で“危険”と判断する。
「先に行け!」
操縦桿を引く。急上昇。単機で戦いを挑む。
“対ESP波”は連続して使えない。ビームバルカン発射!
リュウの初弾を<デスウィング>はかわす。
両者はすれ違う。
急旋回。Gに耐える。
その最中に<デスウィング>の小型砲塔が旋回、発射。自動追尾だ。
リュウは後方へ囮光子弾を発射、操縦桿を素早く細かく何度も動かす。
リュウの機体は回転しながらホーミングレーザーをかわす。
回避成功。
だが<デス=ウィング>に後ろにつかれる。警告音が鳴り止まない。
フルブースト。リュウはエンジンを全力噴射。
たまらず<デスウィング>は下へ逃れる。
今度はリュウが追う。トリガーに指がかかる。
ビームバルカン発射!
<デスウィング>のエンジンを直撃。機体は爆発。
リュウは機を戻す。
次の瞬間、下から攻撃を受ける。
「!」間一髪、避ける。
下から<イエローバッカス>が迫る。「!!」
次弾発射直前<イエローバッカス>にブラスターが命中する。
右翼に命中。バランスを失い駆逐艦に接触、彼方に飛ばされて行く。
ブラスターを撃ったのは<フロンティア号>だ。
「・・・」驚くリュウ。「サンクス」
二機は先行する<スペースコンドル>編隊に追いつく。
「フフフ・・やはり出て来たか。」
モニターを見ながらデコラスは微笑む。
地球の周囲はバリアーで守られていた。
その源は赤道上に3つ造られた軌道エレベーターの頂上にある宇宙ステーション(出入国管理センター)だ。それらもバリアー内にある。インパルスの主砲ならステーションの破壊は可能だが、多大な被害が出るため攻撃は見送られた。
作戦前の解析で北極と南極*の二カ所にバリアーの無い“死角”が存在するのが確認されていた。
<スペースコンドル>は二手に分かれて両極を目指す。<フロンティア号>はリュウと同じ北極方面だ。(*勿論宇宙暦498年現在の北極南極である。北極=日本)
当然大銀河帝国は死角の存在に気付いており、防御の艦隊を配備していた。
地表から宇宙高射砲が来る。一機が犠牲になる。
次々と狙い撃ちされる。続けてミサイル。艦隊からも砲撃が来る。
リュウが「足手まといになるなよ」
明が答える。「了解」
<フロンティア号>は攻撃を掻い潜り一番乗りで北極上宙へ。
「嘘だろ?」
<フロンティア号>の全長全幅は<スペースコンドル>の5倍以上だ。最高速も小回りも劣る。
北極上宙に展開する敵艦隊が迫る。
ピンニョがスイッチを踏む。
先頭を行く<フロンティア号>は反重力ミサイルを発射!
針路を塞いでいた戦艦に命中。
反重力場が発生。艦隊の隊列が乱れる。
秘かに仕掛けられていた敵のステルス機雷も反重力場で吹き飛ばされる。
その隙間を“重力遮断シールド”をONにした<フロンティア号>と<スペースコンドル>隊が擦り抜けていく。通過時に“対ESP波”照射。
南極に向かった<スペースコンドル>は囮だ。到達前に回頭し北極組を援護する。
大気圏突入。
ロミは“対ESP波”とビームバルカンで<ハードセブン>を行動不能にしたが、<ブラックスワン>に後ろにつかれていた。再び“対ESP波”を使えるまであと4分かかる。仲間の機体は敵との交戦で手一杯だ。
ビームバルカン、ミサイル、<ブラックスワン>の執拗な攻撃がつづく。
ロミは必死に避けるが、相手もエースパイロットだ。振り切れない。
「やられる」ロミが覚悟を決めた時、<ブラックスワン>が被弾する。
見た事もない機体が後方から接近し、横に並ぶ。
コクピットにいるのは・・猫のような異星人だ。かわいい。
『$*&&¥!“るるーる#-%*』ちょっと何を言ってるのか分からない。
ハレーGPに参加していたペルセウス腕のキキイ星のパイロット・ハット&ラー。
ペルセウス腕から大銀河帝国が一部撤退した際、一番乗りで乗り込んで来た。猫型なのに明たちに助けられた恩を忘れていない。ちなみに機体は<ルルール>ではなくキキイ軍の新鋭機だ。
<真王星>の巨大光子砲が<スペースインパルス>に標準を合わせる。
「発射しろ!」ジェラードが命じる。
【お待ちください。目標の周囲にはまだ友軍が】コンピューターが返答。
この<真王星>にいる人間はジェラード一人だ。
「構わん」
<スペースインパルス>メインブリッジ。
「前方の要塞に高エネルギー反応!」美理が叫ぶ。
そのパワーは<ネオ=マルス>に匹敵する。
「垂直下降!弾幕!」
マーチンがエンジン出力を上げる。グレイは主砲を発射。
光子砲の直撃は免れるが、掠る。装甲板が溶ける。
啓作は自問自答する。
「(どうする?あのデカブツを相手にこの人数でどうやって戦う?)」
<真王星>が迫る。
「通信が入っています・・デコラスです!」
「繋げ」啓作が即答。
麗子が操作、メインパネルにデコラスが映る。
美理は目をそむけたいのを我慢してデコラスを睨む。←大嫌い
『やはり君たちか、おじゃま虫共め。人体実験で“耐性”の事は予測できていた。まあいい・・<スペースインパルス>に告ぐ。降伏しろ。降伏せぬ場合・・・』
映像が切り替わる。
「!」
映ったのは大銀河帝国の兵士達。皆銃を自分の頭に突き付けている。
『君達の返答次第で彼らは死ぬ。』
操り人形の彼らは命令に逆らえない。
「ゲス野郎め」
啓作はデコラスを睨む。
『まずは、バリアーを解いてもらおうか。それからその船を明け渡してもらう。』
バリアーには対ESPシールドも含まれている。無くなれば乗員たちはデコラスに操られてしまう。
啓作は立ったままピクリとも動かない。静かに思考をめぐらす。
「(バリアーを解けば終わりだ。だが解かなければ目の前の命は確実に失われる。どうする?)」
美理も麗子もシャーロットも啓作を見つめる。
啓作は息を吸い込み、ゆっくり吐く。そして、
「バリアーを解除する。その際一時的に電波障害が生じる。一分程だ」
驚いて麗子は啓作を見る。啓作と目が合う。
これは嘘だ。時間稼ぎだ。電波障害をピンガーで作れということか。
ピンガーでもESP波を防御できるが、そう長くは使えない。確かに一分が限度だ。
『艦載機は大気圏突入したばかり、あと一分では攻撃などできまい。よかろう。通信が回復したら奴らも降伏させろ。さあ、バリアーを切れ!』
啓作はシャーロットと麗子に目で合図する。
「バリアー・・オフ」
「(ピンガー!)」
インパルスよりレーダー攪乱波放射。勝負は一分間。
美理は目を閉じて祈る。
「明くん。お願い・・」
オレンジの炎が数本、北から南へ降りていく。
大気圏に突入した<フロンティア号>と<スペースコンドル>に向けて敵の対空砲火が始まる。敵の本丸だけにその数は半端ない。回避は困難、運に任せるしかない。
「急いで高度を下げろ!狙い撃ちされるぞ!」
大気圏突入角度は深すぎると高熱で危険、浅過ぎると大気圏外へ弾かれてしまう。
『隊長!目標にロックオン出来ません』
「バリアーか」
『座標は分かっている。入力して撃ちますか?』
「いや直接狙った方がいい(しかしまだ水平線の彼方だ)・・・!」
リュウははるか前上方を行く<フロンティア号>に驚く。背面飛行をしている!
「フロンティア号!速度が速すぎる!進入角度も浅すぎだ!」
明は操縦桿を固定しながら「大丈夫だ」エンジン出力をさらに上げる。
後続機との距離がさらに開く。
機体は小刻みに震動し、コクピットに警報音が鳴り続ける。
「プロトン砲エネルギー充填完了。出力最大。安全装置解除。発射態勢に入る」
ヨキはターゲットスコープを覗いたまま。指は発射スイッチにそえられている。
ESP波を放射している攻撃目標は赤道上の首都<ラ・ムー>近辺にある。
直径60kmの巨大なパラボラアンテナは巨大な花かクレーターのようだ。
「あと10秒。最終誤差修正」
アンテナ周辺にはバリアーだけでなく狙いを逸らす光学迷彩も張り巡らされている。
ボッケンはレーダーと前方とターゲットスコープ像(他の席でも確認可能)を交互に見比べ、ヨキに発射のタイミングを教える。
ターゲットスコープ・最大望遠。水平線の彼方に“白い花“が見えた!
「・2・1・今だ!」
「いっけー!!」ヨキはスイッチを押す。
ボヴヴーーーンン。背面飛行でプロトン砲発射!
反動で機体は一瞬減速する。
明は進入角度を修正。減速。垂直上昇ノズルも噴射、下降する。
間一髪、ビームが<フロンティア号>のいた位置を通過する。
放たれた一本の光の矢は一直線に地表へ。
迎撃の砲火を蹴散らし、雲を蒸発させ突き進む。
そびえる巨大アンテナへ。
バリアーを貫通。
命中。
本来プロトン砲は二門だが、修理が間に合わず一門しか使えない。それを逆手に取り二門分のエネルギーを一門に集中させた。そのためインパルスの三連装主砲の一門に匹敵する威力がある。もちろん砲や船への負担は増す。
光。炎。音。煙。
大爆発!
巨大アンテナは木っ端微塵に粉砕される。
「!!」
「やった!やった~!」 「よっしゃー!」
明たちは喜びあう。
長かった。
太陽系からの逃亡。ルリウス星での救出。ブラッドとの別れ。バウンティハンターの攻撃。謎の敵トスーゴ。インパルス乗艦。シェプーラ星の攻防。そして再び地球へ。
感無量。ESP波は止んだ。長い闘いが報われた瞬間。
リュウはトリガーから指を離す。
「・・・すごい。大気圏突入中に?あの距離で?あの速度で?進入角度を浅くしたのは高度をとるためだったのか。その方がより早くより遠くから狙える。背面飛行してまで・・それに俺たちの武器ではバリアーを破れたかどうかわからない」
赤道を通過。編隊は左右に分かれ旋回する。
敵の攻撃はなかった。




