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地球決戦 ースペースマン5-  作者: 本山なお
20/33

太陽系絶対防衛線突破④

 モニターを見ていたデコラスがぽつりと言う。

「まあ奴(白虎)にしてはよくやった方か・・。」

『ワープトンネルオールグリーン。正常に稼働中』

『<ネオ=マルス>一号基から七号基・エネルギー200%チャージ完了』

『目標ワープトンネル。発射準備すべて完了しました』

 部下の報告を聞いたデコラスは静かに命令する。

「よし、発射しろ。」

 ラグランジュポイントに存在する七つの<ネオ=マルス>。直径2kmの光子砲でもある。

 一斉に光子砲が発射される。黄道面より垂直方向へ。

 地球近辺に展開する艦隊も一斉に砲撃を行う。その数4000隻。

 巨大な光の束はさらに巨大なワープトンネルゲートに吸い込まれて行く。

 

「これで幻王星は終わりだ。本艦は第一級戦闘配備のまま地球へ向かう」

 流艦長の命令にサライとアランが答える。

「了解。幻王星を出ます」

「ワーププログラミング!コンドル隊第二陣発進準備!」

「はい」シャーロットが作業を始める。

 呆然と立ち尽くす白虎の目の前、<スペースインパルス>は入って来た格納庫の扉へ向かう。

「!」クリスが驚く。「重力震!・・高エネルギー接近!」

「全速離脱!」

 サライが操縦桿を引く。ニコライが非常用ブースターを点火。

 <スペースインパルス>は全速力で幻王星内部から脱出を図る。 

 ワープトンネルを抜けた無数の光の束が幻王星に突き刺さる。

 信じられぬ表情の白虎。光に包まれる。

 幻王星に亀裂が走る。

 ・・・・・

 大爆発。

 幻王星は木っ端微塵に砕け散った。

 その業火の中から<スペースインパルス>が悠然と姿を現す。

 サライが額の汗を拭きながら「・・バリアー回復が間に合わなければ危なかった」

 流艦長は無言でメインパネルを睨む。

 砕け散った幻王星が映っている。

「敵の攻撃は8時方向上方65°、距離25万㎞の人工物からです」

「拡大投影しろ」

 映像が切り替わる。

「ワープトンネルゲートだ!」

 第二格納庫。

 <フロンティア号>で待機中の明たちはその光景をモニターで見ていた。

 ヨキが「プ・は~」息を止めていたらしい。「な、何?何が起きた?」

「<ネオ=マルス>だ。巨大光子砲・・それだけじゃない、艦隊の一斉射撃」

 明はモニターを睨む。激しい怒りでその手は震えている。

 敵味方に犠牲者が少なくなるよう進言したのに・・

「<ネオ=マルス>って地球の近くだろ?ここまで光速でも数時間かかるんじゃ?」

 ヨキの問いにマーチンが答える。

「ワープトンネルを造ってあったみたいだ。地球近辺からここまで」

 長さはともかく(恒星間のワープトンネルも存在する)ハレーGPのものとは比べものにならない大きさだ。

 医務室。

 Qはヒマそう。モニターには艦内外の様子が映し出されている。 

 奥の美理や子供たちのいる所は戦闘の情報が入らない。モニターにはアニメが流れていて、子供たちはそれに夢中だ。

「すごい衝撃だったね」麗子が小声で言う。

「うん」

 美理は気が気でない。だが負傷者が運ばれて来ていないため、艦のダメージは少ないのだろう。

 メインブリッジ。

「再び重力震と高エネルギーをキャッチ!」クリスが叫ぶ。「第二波来ます!」

「主砲!直接標準!」

 インパルスは主砲を発射。

 ワープトンネルゲートを破壊する。敵の攻撃は届かない。


 火星の近くの宇宙空間。

 ロミの<スペースコンドル>がワープアウトする。二機の僚機が続く。

 目の前に火星。宇宙艦隊が展開している。

 カチ。ロミは“対ESP波”のスイッチを入れる。リーダー機のみ装備されている。

 ブウウーーン。軽い機械の唸り。

 戦闘態勢に入ったはずの艦隊から攻撃が来ない。成功だ。

 編隊は艦隊を突破、ミサイルを発射。

 火星に築かれた巨大アンテナが吹っ飛ぶ。

 同様の攻撃でガニメデ、タイタン、トリトン、冥王星のアンテナが破壊された。

 残るは地球と月だけだ。


「<スペースコンドル>第二陣発進!」

 リュウを先頭に次々と戦闘機が発艦して行く。

 その間にも敵のワープミサイルが次々とワープアウトして来る。

 インパルスは迎撃を繰り返しつつ、次元衝撃砲の準備を行う。

 メインブリッジではクリスが地球近辺の最新分析を終えた。

「報告します。地球圏に集結している艦隊は約4000隻。<ネオ=マルス>七基も再度臨戦態勢に入っているものと推測されます」

「4000か、予想より多いな。どうだ?ロイ、これでも正面切って戦うか?」

 サライが顎を触りながら皮肉っぽく言う。ロイは黙ったまま。

 流艦長は静かに命令する。

「次元衝撃砲で<ネオ=マルス>をたたく!」

 12基の主砲のうち7基が次元衝撃砲に換装、発射態勢に入る。

「撃て!」

 緑の光が放たれる。それらはかき消すように消えて行く。

 地球圏。

 現れた7つの光が<ネオ=マルス>に突き刺さる。

 巨大な光の輪が七つ現れて、消える。

 <スペースコンドル>達はインパルスを囲んで飛行。

「ワープ準備完了」シャーロットが報告。

 流艦長は前を見据え、「よし、行こう! 地球へ!」

「重力震多数!ワープしてきます」

「構わん」

 ドバアアアーーーーンンン

 ミサイルではなく、大銀河帝国艦隊がワープアウトする。

 それと入れ違いに<スペースインパルス>と<スペースコンドル隊>はワープする。


 その光景はデコラス宮殿の司令部のモニターに映し出されていた。

「いよいよか」朱雀がつぶやく。

 司令部には人はデコラス、朱雀、ローザの三人しかいない。

 急にドクタージェラードが現れる。ホログラフィだ。実はこれまで彼は一度も司令部にいなかった。人見知りと言うより対人恐怖症なのだ。

『デコラス様。最終テスト終了しました。完成です』

 微笑むデコラス「でかした。」

『この“新型”は先行催眠暗示なしで、生物を意のままにコントロール出来ます』

 デコラスは黙って聞いている。笑みが漏れる。

『しかも奴らの“対ESP波”の影響を受けません。無効化できます』

「素晴らしい。」 (注:“対ESPシールド”で防御できるのは変わらない)     

『ですがこれまでの様な個人への細かい指示はできません。部隊単位での指示になり、交代で休息するといった事ができず、全員戦闘か休息かになります』

「構わん。死ぬまで戦わせてやる。・・いや銀河連合の連中を全て我が手中におさめれば戦いは終わるではないか。」

『それと・以前報告した”耐性”の問題はあります』

「問題ないだろ?」

『そうです。彼ら以外は』

「ふ・・」デコラスは笑みを浮かべながらモニターを見つめる。「もうすぐ手に入る」

『重力震!来ます!』


 リュウたち<スペースコンドル>第二陣がワープアウトする。

 目前に月。月の裏側だ。敵の本隊は月の反対側にあり、迎撃は少ない。

 遠くに<ネオ=マルス>の残骸が見える。

 続けてロミたち<スペースコンドル>第一陣がワープアウトして来る。

「アタック!!」

 一斉にミサイルを放つ。

 ミサイルは吸い込まれるように月面基地のアンテナへ・・・

 バリアーを貫き、命中。

 巨大なアンテナは粉々に吹き飛ぶ。

 リュウは月の向こう・地球を望む。

「あとは本丸だけだ」

 びりびりと機体が震える。重力震だ。

 月と地球の間に展開している大銀河帝国艦隊の真っただ中に<スペースインパルス>がワープアウトする。リュウたちとはかなり距離がある。

 一瞬の静寂の後、艦隊から無数の攻撃が放たれる。

 ビームがインパルスに集中する。

 流艦長が命令。

「バリアー出力最大!つづけてバリアーアタックをかける!」

 ビームはインパルスの周りの光に阻まれる。

 さらにその光が広がっていく。

 広がった光は艦隊を飲み込む。さらに広がり、消える。

 沈黙。兵士たちは倒れ、艦隊は機能を停止する。

 だがインパルスも一時的にバリアーを張れない。勿論”対ESPシールド”もだ。

「やはりその武器を使ったか。」

 デコラスは微笑む。

「今だ。やれ!」


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