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地球決戦 ースペースマン5-  作者: 本山なお
11/33

シェプーラの星にて⑤

 <スペースインパルス>上甲板にロミ機が着艦する。

「世話になった。ありがとう」アランが後席から降りる。

 ロミは管制官に尋ねる。「隊長は?」

『重力震は探知されていません』

 ロミは厳しい表情で「新しいワープブースターを準備しろ!戻る!」 

 メインブリッジ。ロイが命令する。

「<スペースコンドル>5機にワープブースターを装着。準備完了次第発艦しろ!」

 シャーロットがその光景を心配そうに眺めている。

 そこへリュウから通信が入る。

『こちらリュウ。トスーゴ艦A-1に追跡されたためワープアウトポイントを変更した。現在交戦中。座標を送る。至急応援を乞う』

「銀河垂直方向、距離15光年」クリスが報告する。

「リュウ隊長、流啓作さんとマサ隊員は?」ショーンが尋ねる。

『三号機は流啓作が操縦。ワープアウトを変更したのも彼の判断だ』

 シャーロットが驚く。

 報告を聞いたロイが「15光年ならブースターなしでも行けます。発艦急げ!」

「まて」

 流艦長が命じる。

「第一砲塔を次元衝撃砲に換装、発射用意!」


 明は走る。第二格納庫に飛び込む。

 ニコライとマーチンが<フロンティア号>で修理作業をしている。

「ニコライ機関長!この船を出させてください!」

「ばか言うな。応急修理が終わったばかりだぞ」マーチンが反論する。

「まあ待て。次元衝撃砲を使うかもしれん」

「次元衝撃砲?」

 明とマーチンは顔を見合わす。


「一言でいえばワープビームだ。エネルギーを空間転位させる」

 第一主砲塔。てきぱきと作業をしながらリックが説明する。

「そんなことができるんですか?」研修中のグレイが尋ねる。

「まだ実験段階だがな。これまでの最大射程距離は10光年。ルリウス星で見たろ?」

「あ・・」

 突然現れてルリウス星の月ナルシーを一撃で破壊したビーム。あれだ。


 二機の<スペースコンドル>は敵の攻撃を回避する。

「あれは<インパルス>の武器だったのか」啓作が感心する。

「小さな目標に正確に当てるには、目標に誘導ビームを照射し続けなければいけない」リュウが説明する。

 ナルシーの時はリュウがステルス状態の<スペースコンドル>で誘導していた。

「左下の緑のボタンが分かるか?俺が奴を引きつけるから、ボタンを押して誘導ビームを敵に照射してくれないか?」

 啓作は息をのむ。少し考えたあと答える。

「了解した。俺が囮になる」

 啓作は操縦桿を引き、敵艦の前に躍り込む。

「おいっ!」驚くリュウ。「ちいっ!」方向転換して後を追う。

 敵艦発砲。

 啓作は難なく避ける。

 敵艦は三号機を追う。

 リュウはその後を追う。ボタンを押して誘導ビームを照射する。


 メインブリッジに美理が駆け込んで来る。

「はあはあはあ」

 流艦長に睨まれるが無視してシャーロットのもとへ。

 シャーロットは手短く状況を説明する。

「・・・」美理は無言でメインパネルを見上げる。

 ロイが「第一砲塔・次元衝撃砲発射準備完了!」

 流艦長が怒鳴る。

「撃て!」

 第一砲塔が震える。

 砲身から緑の光が放たれる。リックとグレイは衝撃に耐える。

 光はまっすぐ数十キロ進んだあと、かき消すように見えなくなる。


 逃げる三号機。

 追うトスーゴ艦。

 さらに後ろから誘導ビームを照射するリュウ機。

 トスーゴ艦は前方だけでなく後方にもブラスターを発射する。

 リュウはその攻撃を避けつつ誘導ビームを外さない。

 計器が重力震をキャッチする。

 突如現れた緑の光の矢がトスーゴ艦を貫く。

「退避!」リュウが叫び、操縦桿を引く。

 啓作も操縦桿を引く。

 トスーゴ艦が粉々に消し飛ぶ。

「帰るぞ。オートリターンボタンを」

 二機の<スペースコンドル>はワープし、<スペースインパルス>に帰還する。

 機体を降りたリュウは啓作のもとへ走る。

「部下を助けてくれたことに感謝する。ありがとう」頭を下げる。

「医者が患者を助けるのは当然だ。それに礼はまだ早い」

 そう言うと啓作は反重力ストレッチャーで運ばれて行くマサを追いかける。

 リュウは敬礼で見送る。


 医務室に向かった啓作だが、呼ばれたため診療をQに任せてメインブリッジへ。

 すでに明たちが到着していた。スペースマンメンバー全員集合だ。

 アランが説明する。

「ナカトミ第二惑星施設のデータ解析が終わりました。メインパネルに映します」

 映像が流れる。

 空に浮かぶ原始恒星。まだ幼い太陽だ。

「あ!」

 太陽に何かが接近する。

 真っ黒い球体。

「!」”恐怖の大王”に似ているがはるかに大きい。

「計測では直径9000kmです」火星より大きく金星より小さい。

 球体から触手が出て形が変わる。

「何だ?これは!」

「星?」「ガス?」「雲?」 

「ここからは1000倍速です」アランが説明する。

 それは太陽にとりつく。

「!!」  

 太陽に黒い染みが生じる。黒点?・・ちがう、暗黒。“闇”そのものだ。

 雨の波紋のように、次々とその数は増えていく。

 それに伴い太陽はその輝きを失っていく。

「・・・」美理は声が出ない。

「まるでブラックホールだ」啓作がつぶやく。

「星が・・喰われている?」明は息をのむ。

 ・・・そして太陽は黒い球体と化し消滅する。

「クリス!」ショーンが叫ぶ。

 クリスは気を失っていた。

「これが“恒星消滅”の真相?」サライの顔色は悪い。

 ロイが「移動性ブラックホール?いや、生き物の様にも見えた」

 アランが付け加える。

「異常な次元波動反応がありました。ブラックホールは超重力ですが、あれは次元の裂け目の様なものです。エネルギーが転送されています」

「・・・」

 これには流石の流艦長も動揺しているようだ。

「解析結果を銀河連合へ送れ。・・星はその最後に(次の)星の元になる星間物質を残す。だが、消えてしまっては何も残らない。これが続けば、銀河は消滅する」


 艦橋からの帰り。

 ショックを受けた明たちの足どりは重い。

 皆無言だ。

 展望室を通る。

「あ、ボクちょっと星見てから帰るよ」

「おお」明は上の空で「また後でな」

 ボッケンはひとり展望室に残る。

 嬉しそうに窓の外を見る。

 帰れないにしても故郷の近くにいるのだ。

 医務室。

 クリスの目が覚める。

 リックが心配そうに「大丈夫?姉ちゃん」

「うん。もう平気」

「映像見たよ。間違いない・”あいつ”だ」

 メインブリッジ。

「大銀河帝国艦隊が動きます。シェプーラ星に向かっています」

 クリスに代わってメインレーダーを担当しているカレン索敵情報副長が報告する。

「艦長。どうしますか?」

 ロイの質問に、流啓三は静かに答える。

「侵攻を阻止する。シェプーラ族の戦闘力は高い。彼らを敵にまわしたくない」

 <スペースインパルス>はシェプーラ星へ向かう。

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