シェプーラの星にて④
朝。
ヨキはボッケンのくれた果実を食べて「こりゃ、うめえや」←泊まった。
「あれ?小鳥さんは?」シャーロットに尋ねる。
「気になる事があって、密猟者のテントを調べに行ってもらってるの」
「あの兄ちゃんは?」
啓作は窓の外を指さす。
草原を走るボッケン。
それを反重力サーフボードに乗る明が追う。
「速い。なんてスピードだ」追いつけない。「シェプーラか・・」
「!」
ズズーン。 遠くで爆発が起こる。
明とボッケンは身構える。
鳥たちが飛び立つ。ジャングルの向こうに煙が上がっている。
<フロンティア号>コクピットに明が駆けこんで来る。
啓作が振り向き説明する。
「奴らただの密猟者じゃない」明の撮った写真を見せ「これは惑星改造用プラントだ」
「惑星改造?移民?そもそもこの星は地球の植民星じゃないんだろ?」
「生物のいる惑星の改造には厳しい審査が必要だ。高等生物のいるこの星がそれに合格するとは思えない」
そのときピンニョから通信が入る。
『奴らこの星を改造して、生物を絶滅させて星の権利を取得するんだって。星は金持ちに売り、絶滅危惧種になったこの星の生物を高く取引するそうよ』
『何だお前は!』
『やばっ!』
『捕まえろ!』
通信が切れる。
「ピンニョ!」
明はあせりと怒りを隠せない。
「自分たちの利益のためにこの星の生命を奪うのか!」
シャーロットが「酸素濃度がわずかだけど低下。急がないと!」
「銀河パトロールに任せるか?」既に通報はした。
「それじゃあ間に合わない。<フロンティア号>の修理は?」明が尋ねる。
「応急修理は完了。第一装甲板は自己再生中」
「よし、行こう」
「<フロンティア号>発進!」
主操縦席の啓作が操縦桿を引く。
ドギャーン。宇宙船は垂直上昇する。
それを明はヨキの小型宇宙船(WC-001)の操縦席から見送る。
「どう?操縦できそう?」助手席のヨキが尋ねる。
「任せろ」
こちらも発進する。
「デザインはともかく、扱いやすいな。ん?」
ボッケンがこちらを見ているのに気付く。
【あきら!】ボッケンはジャンプし、
「わ!」
驚く明を尻目にボッケンはWC-001に飛び乗る。
「何やってんだ!?」
キャノピーを開ける。ボッケンはコクピット後席へ滑り込む。
「よ!」
ヨキがハイタッチをしようとするが、ボッケンは知らん顔(ハイタッチを知らない)。
「(こいつ、俺たちが何をしようとしているのか分かっているのか)」
「新種か?しゃべる鳥とは珍しい。これも高く売れるぜ」
密猟者達に捕まり、籠に入れられたピンニョはふくれっ面。
「ん?」警報が鳴る。
「敵か」
宇宙高射砲が動き出す。
接近する<フロンティア号>に狙いを定める。だがそれは囮だった。
WC-001が低空で侵入。
明は引き金を引く。ビームバルカンを発射!
高射砲に命中。爆発する。
【!】
ボッケンはその威力に驚愕する。
「じゃ!」そう言うとヨキは精神集中する。
密猟者達が気をとられている隙に、ヨキはピンニョの側へテレポート。
「え?」驚くピンニョ。
気づいた密猟者が銃を構えるが、次の瞬間ふたりは消え失せていた。
ヨキとピンニョは<フロンティア号>のコクピットへテレポート。
「エスパーだったの?」ピンニョが訊く。
「ちょっとワケありだけどね」3分しか超能力を使えない。
啓作が「仕上げと行こう。ヨキ、射撃は得意か?」
「おいらが撃っていいの?・・まかされて」
ヨキは主戦闘席に着く。
啓作は操縦桿を倒し、急旋回。
<フロンティア号>は低空飛行で基地に接近する。
対空砲火が来る。
「撃て!」啓作の合図で、
ヨキはスイッチを押す。
船首ミサイル発射!
ミサイルは一直線に惑星改造プラントへ。
命中!これを破壊する。
「やったー」ヨキが歓喜する。
【!!】
WC-001でその光景を見ていたボッケンは終始無言。
【(この星がこれまで平和だったのは幸運だっただけだ。このまま国を閉ざしていては、この星に未来はない。・・いや、そんなことよりもボクは・外の世界を見たい!)】
「おのれ~」
密猟団のボスは何やら通信をする。
「高エネルギー接近!」シャーロットが警告。
上空より攻撃が来る。
<フロンティア号>には当たらず、ビームは地表へ命中する。
「黒幕か」啓作がつぶやく。
「衛星軌道上に地球連邦の巡洋艦を改造した海賊船」
海賊船の主砲が旋回、ブラスター発射。
遠くの山が吹き飛ぶ。
「<フロンティア号>に当てるつもりは無いようだ。報復か?いや、何が何でもこの星を滅ぼしたいようだな」
ジャングルが燃え上がる。
その光景を見るボッケンは怒りと悲しみで声が出せない。
「野郎!」明はいたたまれなくなり、「啓作、収容してくれ」
<フロンティア号>はWC-001を収容、そして上昇して行く。
明とボッケンがコクピットに来る。
「適当に座って・・無理か」明は啓作と交代で主操縦席へ。
シャーロットがちょっと怖がりつつ「ようこそ」
【・・・]
ボッケンは空いてるレーダー席へ。椅子に座れないので立っている。
「そこで踏ん張れ」
ボッケンは黙ってうなずく。
<フロンティア号>は大気圏を突破、宇宙へ。
【空の上に夜が広がっている!】
初めて見る光景にボッケンは目を輝かせる。
レーダーパネルを見て【(これって何だろ?)】
ピキーン。突然の反応音。驚いてボッケンは飛び上がる。
「敵艦発砲!」今はピンニョが専用席(籠)でレーダーを担当している。
海賊船はブラスターを発射。
明は操縦桿を倒す。
<フロンティア号>は避けつつ進む。みるみる海賊船が近づく。
明は前を見据えて叫ぶ。
「一撃で決める。ヨキはミサイルでエンジンを狙え!啓作はレーザーで艦載機射出孔を頼む!全砲門一斉発射!」
「了解」 「オッケー」
「発射!」
<フロンティア号>からビームとミサイルの束が放たれる。
あるものは一直線に、あるものは放物線を描き、目標である海賊船に向かう。
すれ違いざまに海賊船のエンジンと主砲と艦載機格納庫を破壊。航行不能に。
【・・・・・】
「重力震キャッチ」
「銀河パトロールのお出ましだ」
「ねえ」ヨキが明に言う。「おいら、この船に乗っていい?」
<フロンティア号>はシェプーラ星に着陸し、ボッケンを降ろす。
「じゃあな。ボッケン、元気で」明が寂しそうに言う。
【・・・】
明たちは知らないが、ボッケンは掟を破ったため仲間の所には帰れない。その後悔以上に未知への好奇心が強かった。
扉が閉まる前に、ボッケンは<フロンティア号>へ飛び乗る。
「お前?」
「あきら・と・い・く」
明は微笑んで、「わかった。歓迎する」
ドギャーン。
新しい仲間・ボッケンとヨキを乗せ<フロンティア号>はシェプーラ星から離れて行く。
鳴り出した警報が回想を終わらせる。
「表情が穏やかになった」明を見ながら麗子がつぶやく。
「今日はこれまでにしよう」
Qはそう言うと明の額に手を当てる。
「ふ~」ボッケンは深く息を吐く。
「お疲れさま」麗子が飲み物を渡す。
明が目を覚ます。
瞬きをしながら、「ど、どうなった?あれ?ボッケンお前何やってんだ?」
Qは拘束を解きながら、「何度か治療しないと難しいようだ。副長の言う通り、集団催眠を解くよりも操っている疑似ESP波を妨害するやり方の方が手っ取り早いのは事実だ」
がっかりする明に、「でも少しは効果あったってことですよ」麗子が励ます。
その時、艦内放送が流れる。
『<スペースコンドル>帰還。敵と遭遇した模様、敵の追撃に警戒せよ!』
明が立ち上がる。
「啓作は?無事なのか?」




