恋の悩みは流行り病よりヤバイ
今思えば僕は人生において恋文を通してしか好きな異性に想いを伝えることが出来ていなかった。
それは男仲間の前で女に興味ないふりをしていた頃の名残だったのかも知れない。
子供の頃の自分に別れを告げる日がやって来た。
あなたへの罪な愛を貫き通すために。
家族からの罪な愛を許すために。
2度と見ぬかも知れぬ勉強机の匂いを嗅ぐ。乾いた木の温もりがした。
昔いたずらで削ったところを触る。そこを嗅いでみる。
つんっと酸っぱい匂いがした。
机の引き出しを空けて、自分の家に必要な物を取り出す作業を始めた。
メモ帳、神からの手紙、コンドーム、マリファナ、LSD
メモ帳の表紙の裏側にはその時好きだった女の名前が書いてあった。
その女の記憶は悲しいことに全くなかった。試しにその字をノートの下に書いてみることにした。
永瀬結。何度かその文字を書いてみて思い出した。
そうだ。この子にも手紙を渡したんだった。
でもこの子からは返事が来て何度かデートして、確かそれっきりだったような。
そんなことを考えている時に携帯が鳴った。
「ジョンミ?今どこ?早くお家へ来てちょうだい。私たち付き合ってるのよね?」
彼女からだった。