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真実から見る世界日記  作者: 不明
2/5

1. 2回目の邂逅

 

 リエリーの朝は早い。

 

 毎日5時半に起床し、母、父、弟の順に起こしていく。両親はあっさり起きるのだが、弟は寝起きが悪く5分ほど格闘した後、放置する。朝は忙しいのでいつまでも構っていられないし、朝ごはんの用意をしなければならない。



「お母さん、朝ごはん作ろ!」

「そうねー、リエリー。ところで昨日買った塩はどこだったか分かるー?」

「右の棚の一番上!」

「ああ、そうだったー」



 リエリーの母はいつもどこか抜けており、娘のサポートがなければまともに朝食すら作れない。仮にできたとしても塩と砂糖を間違えた、とてもではないが食べることができない料理が出てくる。父も料理はできないので、自分が生まれる前は食事をどのようにしていたのか時々本気で気になるわけだが。

 そんなこんなで朝ごはんを作り、父も加えた3人で食べていると、



「ちょ、ねーちゃん!!起こせっていっただろ!?」

「起こしに行きました!んで、起きてこなかったから放置したの!朝の部活に遅れるのはあんたの自業自得!」



 リエリーが起こしに行ってから、きっちり30分後に弟は起きてきた。不思議なことだが、弟は必ず起こしに行ってから30分後に目を覚ます。本人曰く、起こされてから30分後には一気に眠気が飛ぶそう。一度弟がそれを利用しようとして、リエリーにいつもより30分前に起こしてほしいと頼んできた事があるのだが、5時半起きでもきついので却下し、自分で目覚ましかけて起きろと言った。結果は、目覚ましに全く気づかずに大遅刻した。



「ああ、また顧問に叱られる…朝から最悪だ…

 ……いってきます……」

「いってらっしゃいー、気をつけてねー」



 弟は朝ごはんも食べずに出て行き、母が呑気に返事をする。実は毎日これなので、最近は弟の分は用意してなかったりする。弟は全く気付かない。



「なんであんな奴が魔法を完璧に使うんだろ。部活でも大活躍らしいし。ねぇ父さん?」

「それ、父さんの遺伝だなぁ。父さんも昔はよく遅刻して、睡眠という貴重な時間を確保してだなーーー」



 父の話はいつも長ったらしい。全部聞けた試しがない。しかも、質問と関係あるのだかないのだか、微妙な返答が返ってくる。全部聞いたら恐らく完璧な答えになるんだろうが、何せ結論までの話が長すぎた。

 朝に聞くべきではなかったと後悔しつつ(いつ聞いても後悔する)、朝ごはんを片付け自分の準備を整えて、バイトに出かける。



「行ってきますー!」

「いってらっしゃいー、気をつけてねー」



 母の呑気な返事を聞いて外に出る。

 これがリエリーの朝の日常。なんて事はない普通の日。そしてリエリーが住むこの街もなんて事はない普通の街。リエリーはこの日常が続く事を疑っていなかった。






















 今は8月で真夏の太陽に目が眩みそうになる。だがそれも一瞬。バイト先が家のすぐ隣なので、日焼け止めも塗らない。くるりと体を向けバイト先に目をやる。

 建物自体に目立った特徴はないのだが、この扉だけは別だ。どこにでもある普通の茶色の扉で真ん中には窓を取り付けた形。そして開けるとカランと音が鳴る。それだけなら特に問題ないのだが、この扉、鈴をつけてない。扉自信がカランと鳴るのだ。普通はギィィ、とかそんな感じだろう。だが、誰も気にしていない。

 その例の扉をカランと開けて、少しだけ息継ぎをして大きな声を出す。



「おはよーございます!店長!」

「おはよぅ、リエリーちゃん、朝から元気でいいねぇ」

「元気が取り柄なんで!今日は何人案内すればいいですか?」

「一人だよぉ」



 リエリーの挨拶に間延びした返答を返すのは初老の男性である。そしてリエリーのバイト先ーー観光案内所ーーの店長であった。

 そう、リエリーのバイトとは街に訪れた人に、観光案内をするものであった。


 その店長が、少し顔を困らせて言う。



「ついさっきこの街に着いたらしくてねぇ、私が街を案内をしようと思ったんだが、きみの名前がでてきてねぇ、君がいいと強く言うんだよぉ。まだ、子供で両親もいないようなんだがねぇ」



 そう言って、よっこらどっこいさと少女のところへ案内してくれた。



 ーーその少女は腰まで伸びる長い髪は明るい緑に輝き、その瞳は見え方によって色を変えている。そして左目には眼帯。服も白のワンピース1着。身長は145センチ程度だが、それにしても特徴的な姿。

 そしてリエリーが一番驚いたのはーー




「え??店長、この子昨日も来てくれたじゃないですか!それで私案内しましたよ!」

「そうかねぇ、わしは初めて会ったんだがねぇ」




 店長がその少女の事を全く覚えていないことだった。これだけ特徴のありすぎる子だ。忘れるなんていくら初老の店長でもあり得ないと思うのだが。何か昨日変なものでも食べたーーはないか。朝昼晩、決まった食事しか食べないわけだし。

 そんな風に悩んでいると、カランと扉が鳴って



「リエリー、弁当忘れてたわよー」



 母の呑気な声が聞こえた。そして、スルっと弁当を差し出してきた。

 え?弁当?

 ……あ、忘れた。うっかりしていた。というか、今来たんだ。いつもならテレビ見てるだろうに。

 母は極度のマイペースだから、私の事を優先するのは結構珍しい。しかもその用事が弁当と来た。

 ー私が作った弁当に何かした可能性大ー



「ありがとう、お母さん!」

「いいえー、それじゃあバイト、頑張ってねー」


 

 お礼を言うと、母はあっさり帰っていく。やっぱなんかありそう。

 もし母が私の弁当に何かするとしたらなんだろう。

弁当は朝のうちに自分で作ったし…

 あれこれ考えたが、ひとまず追求するのは辞めた。母の顔を見てると考えるのは馬鹿らしく思うし、あっさり帰るのは母の十八番だし。

……あ、そうだ。この少女について母なら知っている筈だ。昨日、一緒に晩ご飯を食べたのだから。それで、私の記憶の正しさも証明しよう。

 そう思いついて、母を呼び止め質問。



「ねぇお母さん、この子覚えてるよね?昨日一緒に晩ご飯食べたんだけど…」

「んー?………あらー?この子だぁれ?凄く可愛いわねー」



 なんて、呑気な返事が来た。

 

 

 ………は?どういう事?

 昨日、一緒に晩ご飯食べたではないか。なんだったらこの少女が来て一番はしゃいでいた。娘が2人に増えたみたいー♪と言って。

 …もしかしたら、店長といい、母といい二人揃って私をからかってるのだろうか。そうか。母の返事がなんとなく遅いのもそのせいだろう。うん、そうだ。

ならやる事は一つ。

少々単純すぎる方法が、天然には遠回りに挑まないほうがいいと直感していた。確実な方法を使おう。

 店長と母を問い詰める!!

 弁当の件はどうでもいいが、少女の事を覚えていないというのは失礼すぎる。母に至っては晩ご飯を少女と一緒に食べたのだ。流石に覚えていなければおかしい。

 衝撃発言に動揺しすぎて行動が遅れていた私が、店長と母を問い詰めようとした時、誰かの笑い声が聞こえた。



「………ふふ、ふふふ、ふふふふ、

 あっはははははー!!」



 ……なになになに!びっくりした!!!!

 今まで一言も喋っていなかった少女がいきなり笑い出したのだ。びっくりもする。というか、笑い方がなんか怖い。なんだよ、ふふふって。しかもあははって。漫画みたいな笑い方、初めて見た。ああ、びっくりした!もしかしたら1年の中で一番かも。というか、この子のおかげで問い詰めるタイミング逃したんだけどー!!

 

 

 とまぁ、こんな風に考えていた。

 至って普通の反応だろう。


 


















「ふふふ、お姉さんはどうして私の事をおぼえているんだろうね?」


















 ーーこれが私と少女の"2回目"の出会い

  そして私が少女と"初めて"会ってから"街"の真実を知る二日前の話ーーー


 

 









今日の分はここまでという事で。




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