表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と僕の捕縛世界  作者: 宝来來
試練編
9/78

小さな救済者

「で、妹ちゃんが不服にも勝ってしまった事が分かったわけだか………………………あの超絶美人さん、見たことあるか?オリンピアのパーティーで会ってそうなのにな。あんな美人さん見逃すわけないからな」


レミエルの元へと戻る。あのままずっと腕を組んだまま試合を観戦していたようだ。物好きなもんだ。


カマエルちゃんは巨人男の攻撃を避け続けていた。隙を伺い、俺と同じように傷を少しでもつけようと思っているのだろう。


(ありゃあ、バケモンだったからな……………見てても避けれねぇよ。未来が見えても、な)


おっと、レミエルに話を無視されていた。


どうにもならジョフィエル=オフィエルが気に入らないみたいだ。特にこいつは自身の色気の無さを気にしているようだしな。


「失礼なこと考えたでしょ、今」


「いやぁ、まさか」


怖い怖い。妹ちゃんもこいつも、タイプが似てるわけか心まで読まれちまうぜ。女の勘って奴か?


レミエルはまたもや不機嫌そうな顔をして、苦言を吐く。


「私も、その阿婆擦れは見たことないわ。オフィエルってことは参加しててもおかしくはないけど…………………まあ、色々あるんじゃないの」


「そうゆうもんかね…………」


さりげなく、レミエルの隣を確保。多分気づかれてるけど、何もしてこなかったので安心した。


「そういえば、ラグはどこ行ったんだ?さっきから姿が見えねぇんだよ。反抗魔法を広げてもいない見てぇだし」


「今更だわ。それに、反抗魔法ごときでラグエルが見えるはずないもの。それにラグエルは外よ、多分もうすぐ戻ってくると思うけど」


反抗魔法は魔法解除の希少なものである。でも、それはフル――――――――――――ラグの家庭が得意とする魔法のひとつなのだ。昔、ラグから教えてもらったことがある。


(まあそれでも、俺は誰かいるなーとか大雑把にしかわかんねーけど)


でもラグはなんで外に?もうすぐ帰ってくるというのは、レミの試合があるからだろうけど…………。


「絶対に離さないって言ったばっかなのになぁ。啖呵切っといて早速破ってんじゃねぇか」


あの時、離してしまった手を。


とても後悔した。あのまま、ずっと会えなくてやっと会えた。だから離さないと決めたのだが……


「仕方ないじゃない。一人になりたい時だってあるわよ……………………それに、ラグエル体調悪そうだったし」


「なんで早く言わねぇんだよ!」


「だって、言って欲しくないって顔に書いてあったんだもん!」


獣の喧嘩のごとく睨み合う。すると、制裁の声が上がる。


「やめろ、二人とも」


そこにはレミエルとザドキエルの大事な親友がいた。二人の仲介として真ん中にたっていて、数秒が驚きのあまり声も出せず固まっていた。


「ラグ!?」

「ラグエル!?」


やっと声が出た。


「うるさい。今試験中なんだろ?迷惑かけちゃだめだ」


「そうっすよ、また喧嘩してるっすか?」


またもや真打登場。ガブリエルさんが僕の隣へと立ちずさんでいた。またもや2人はキョトンとする。


「あれっ?どうしたっすか?」


「なんで………ガブリエル様がここに?試合はいいんですか?」


「それは決着がついたからっす」


ガブリエルさんは結界内を指さす。2人がその先を見るに、勝者は―――――大斧少女だった。巨人男は悔しそにその場に大剣を叩きつけていた。ドゴンドゴンと騒音が煩く響く。今までなんで気づかなかったんだろうな、レミエルとザドキエルは。


「勝った!勝った!カシエル、勝ったよ!!」


大斧少女はすぐさま妹である真面目少女の元へ抱きつきに行く。なんとも微笑ましい光景だろう。

羨ましい。僕は家族にあんなふうに抱きしめてもらったことは無いから。


すると、空いた両手に再び温もりを感じた。方からもだ。レミエルとザドキエルの仕業だった。レミエルは両手を贅沢に強く握り、ザドキエルは肩を組んで来ていた。


「大丈夫?顔色悪いわよ?」


「少しは休めたか?まあ、お前の試合は最後の方だしな!」


少しもどかしく、久しく再会した親友にこうも何度も助けられるとは。僕はまだ、気持ちが悪いままここに来てしまった。まだ吐き気もするし、頭は釘で打たれているかのようにガンガンと痛む。正直たってるだけでも精一杯だ。

でも、この二人には心配かけたくないから、強がってるだけだ。


僕は我慢するのは得意だ。


「大丈夫だから。ほら、レミエルは試合でしょ。勝てよ」


少し名残惜しそうにレミエルは手を離し、ガブリエルについて行く。そして振り返って、自信満々に言葉を放った。


「ふんっ、ザドキエルのように無様を晒したりはしないわよ」


一呼吸おいて、


「見てなさい」


その背中は小さくも、たくましくも見えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ