幕間 幼女の指南
【天界】 の大都市<神牢>にて。
幼女は一人、歩いていた。天使が沢山賑わい愉快な場所から離れて、途方もなく歩き続けていた。
「あー、面白くないわ。ここは気分が悪いのじゃ、やはりわしは悪魔なのじゃろうか」
わしの独自の情報網として、ここは神統べる天使の為の【天界】という場所らしく、わしが住んでいるはずの【魔界】とは仲が悪いとのことじゃ。それに、この【天界】には悪魔が侵入すれば警報が鳴るとのことじゃが、三日滞在するワシには体の気だるさしか感じぬ。
「わしの姿が見えぬようじゃし、こやつら弱すぎるじゃ。ひと握りじゃ、わしの手にかかれば」
じゃがそう言うことは問題では無いのじゃ。
わしは自らの名が思い出せぬし、なぜここにいるのか分からぬのじゃ。
ここ三日歩き回っても成果はなし。ここから出ようとしても出れぬ。
後先もない、め先の未来さえ見えぬ。
ここにいればいるほど、つまらないし疲れるし、わしがここにいるのには意味があるはずなのじゃ。じゃがそれが分からぬのだから、おもしろくないわ。
「ああ、そういえば一際つまらぬやつを今朝見つけたな。白髪の少年じゃったが、あやつには封印魔法が施されておったな」
それを解いてやったのがわしなのじゃ。今ではちょうど鍵の解読が終わった頃かのう……………。あの封印は厳重で固く閉ざされとったが、問題は無いのじゃ。
「『反抗』しなければ、さほど時間はかからん」
じゃが、あの少年。なんだか相性が良さげに感じてしもうたな。目が合ってから、その真紅の目に吸い込まれた。この美貌を持つわしがじゃよ?
まあ、少年もわしの美貌に見惚れとったがの。
わしは少し考えたのじゃ。このまま意味無く、あるきつづけるだけじゃつまらぬからな。あの少年のところで暇を潰すのもよかろう、とな。
「まあそっちの方が面白そうじゃからな」
わしは少年の心臓に埋め込んだ魔力と術式から位置を探し出したのじゃ。かなり上に行くようじゃが、わしには関係の無いこと。
無邪気に笑い、一人の幼女はある少年との再会を果たすべくうごきだしたのだった。