嫌なヒカリ
ラグエルは自身の目を疑う。
たしかに、教室に囚われたはずの危機に貧したはずの大事な宝物はそこにいた。背を向け、ファングの口を障壁により守って。
真っ赤な瞳に映るのは希望と絶望。
揺れる心には矛盾が生じる。
心強い英雄ようにヒーローのような、羨望の親友。
来て、くれて嬉しい。
だが同時に、死んでも守りたい宝物のような、浸水する幼馴染。
来てほしく、無かった。
「な…んで…?」
少し体を動かしただけだが、全身へと痛みが伝導する。それでも、レミエルをザドキエルに伝えないといけない。
満身創痍、全身ボロボロの痛たわしいラグエルを瞬時に目をやる。
「ボロボロじゃない!大丈夫なの!?」
「今すぐ治癒魔法をしねぇとな」
障壁を食い破るファングを背後に飛び回避。すぐさま、慌てた様子で構築する。が、魔法式を破壊……戻したのは決死な趣のファトだ。
ファトはラグエルを受け止め墜落した為、同等の体躯のラグエルを背後から抱きしめている状態なのだ。それ故か、ラグエルしか目になかったレミエルとザドキエルからは驚愕と落胆、血走った目をした。
この緋と蒼の濁った結界では天使は弱体化、悪魔は強化される。悪魔であろうファトの姿は今では目視されて当然なのだから。
「ラララ、ラグエルっ!?その子は誰よ!私と同類のロ……じゃなくてちっさくて可愛い子じゃない!浮気!?」
「お前やっぱり貧乳、ちびの幼女好きだったんだなぁ!?」
ファトがいくら体を直しているとはいえ、後も肩を捕まれ揺らされると流石に気分が悪い。
「言いたいことは沢山ある……それにレミエル、浮気ってたってレミエルは結婚してるんじゃあるまいし。ザドキエルも早とちりは良くない」
「なら違うのね!?」
「どうゆう理屈!?」
「なら浮気じゃない!この子は一体何なの!」
未だにラグエルを抱きしめ時を戻し治療するファトを指差すにぎやかな二人。戦闘中なのに……ファトへの負担が増えてしまう。
現在、ファトはラグエルの治療と三人の防御の為『掌空』も発動している。一刻も早くここを乗り切りたい。
「治療終了じゃ、主人よ!解除まで三、」
ラグエルはすぐに立ち上がり、万全な状態で第3ラウンドに挑む。迷いなく、四の翼を広げ魔法を構築する。
「この子はファト」
「ニ」
レミエルとザドキエルの戸惑いの瞳。
見ることはできないけど多分そう。
なんで二人はあの砂地獄のような教室から脱出したのかは分かる。ザドキエルの魔法だ。ザドキエルの強さは計り知れない。友のためならという絶対的な限界を持っていない。
それは、僕もそうだ。
「それ以下でもそれ以上でもない」
「一」
レミエルにザドキエルに、ファトに。
命を懸けられる。
「大切な愛らしい相棒さ」
「ゼロじゃ!!!」
月光魔法、出現『蛍火之社』。
真っ白に。
ちかちか。
ぴかぴ。
地上に
【世界】に生息した蛍は、
眩く小さな美しき光を灯すと聞く。
塵も積もれば山となる、
その言葉のように、
小さな光も集合体となれば、
神々しいヒカリへと変化する。
更にもっと、
もっと、もっと、
ヒカリが集まれば、
闇をも飲み込む
栄光の
何者にも負けないヒカリのカイブツになる。
変化、変貌。
嫌悪してきた苦手な月光は神化する。
宇宙に爛々、
嘘槻の暴噴、
暗黒を穿つ怪物と成れ。
神化 『 月 廻 爛 創 』
次の瞬間、β=ファングは『月廻爛創』により飲み込まれた。
何が起こったのかは理解ができなかった。
思考が追いつかなかった。
眼の前が真っ白になって、目を瞑り開けばそこには何も無かった。あの、黒のバケモノもラグエルも幼女も。跡形もなく、何事も無かったかのように。
見えぬ視界の中、ただ感じたのは膨大な魔力。オリンピアでもかなり上位の、それこそ上級天使をもの魔力を。
しかもそれが見知った者のだったらならば尚更驚かざる得ない。確かに、ラグエルの魔力量はオリンピアの中では下の下だが、通常天使よりは高い。だが、今のは爆発的に我慢していたものが腫れ物となり、溢れ出したように感じた。が、第三者の介入により魔力は構築され、魔法となり穿たれた。
それが一体誰なのか。
そもそもあの幼女は、ラグエル=フルという天使に疑問をいだかざる得なくなった。
信じると、逃さないと決めた。
たが、疑ってしまう。
アレはザドキエルやレミエルがしるラグエル=フルでは無かった。同じはずなのにどこか違う。違和感を、感じる。
親友を信じて揺らがない心。
きしりきしりと亀裂が、入った。




