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君と僕の捕縛世界  作者: 宝来來
試練編
63/78

γ=ヘンプ

「おい待てよ、ワイト!オレの愛言葉に照れんなって」


「ウザイ、ヤメロ。気持ち悪い」


「はっはー、またまた」


「………………」


 私の罵倒になびかない揺るがないこいつはおかしい。変人だ。が、そんな変人にかまけている暇などない、急がなければ。


 私の足はますます早くなる。本来なら翼を出したほうが早いのだが、ちょうど下校時間に当たり人も多い。私の羽は……………異質だから。


「なんでそんなに急いでんだよぉ」


 早歩きで並んできたラック。ラックの羽もある意味で異質。異質同士似たもの同士だからいつも一緒にいると思われたくないけど皮肉である。実際、隣に長年いるのはラックは私に恩を返すためだし、犬のように忠実で猫のように気まぐれではじめは嫌がっていた。付きまとわれて、嫌味ばかり。でもそんなことにも慣れて、当たり前になって。


 そうゆう異質はなれてしまうのだ。長年も経つと。


「急がないと、<神牢>の商売区の林檎が売れきれる」 


 あそこは人混みが多くて嫌い。けど、店の新婚夫婦が幸せそうに経営し、いつも私にサービスしてくれるのだ。いつも話しかけて鬱陶しいだとか少しだけ思っている。幸せそうにして幸せを分けてくれるのも正直うんざりだけど。


 それでも、幸せな人を見るのは好きだ。


 それが<神牢>に来てもずっと通い続けている理由の一つだと思う(第一は林檎の旨さだけど)。


「そうやあいってたな、お前林檎本当好きだよな」


「…………好きじゃないっ。こともないけど」


 やはり見破られてる?それとも私がわかりやすいだけ?自身のプライベートを明かされた気がして少し意地になってしまった。まだ、ラックだから許せているけど。


「どっちだよ」


 くすりと笑みをこぼすラック。私はますます早足に学園正面前の魔法陣の場所へ。しかしここで異変が起きた。異変だが、問題にはならない。ただ、帰りの魔法陣がなくなっただけ。


「いやいやいや、大問題だぜこれ」


「帰れることには問題ない」


 私は下を指差す。魔法陣なんかなくても飛翔し行けばよいだけ。時間はかかっても、ここでグダグダしているよりはマシである。


「………………お前オレが高所恐怖症なの知っている上か?」 


「ラック置いてけば」


「置いてくなっ!」


面倒くさい。本当に、男なんだから細かいこと気にしないでほしい。


「なら……私と手繋ぐ?担ぐ?」


「男としてプライドが立たねぇっ!」


「高所恐怖症だからって理由つけてダダこねてるやつがよく言う」


「うるせぇ!」


 ギャーギャー騒ぐラックはよそに、柄になく真面目に考えることにする。


 どうやら魔法を解除したわけではなく、根本ごと消失しているようだった。サリエル=プルゥドはラグエル=フルの魔法に干渉し分解することで防いでいたが、今回のはあまり例がない。魔法を根本ごと消失させるなんて、魔獣と呼ばれる人外の化け物にしか不可能なのだからら。


「あっ、魔法陣を設置したのはウリエル=アラトロンなんだろ?報告しに行って直してもらうのはどう…………………気をつけろよ、ワイト」


「あんたに言われたくない」


 そんなこと考える暇もなかった。この状況とタイミング、犯人はこいつだ。私とラックの目線の先、白天楼の並木道。そのうちの一本の木からひょこりと顔を出した影がいた。こちらが気づいたことにより、トコトコと歩いてきた。ラックと私は警戒を怠らない。相手がたとえ、可愛らしい容姿をした幼女だとしても。


 刈安色の髪は目を覆い隠し、左右で前に結ばれている。そこに鎖がくるくると巻かれている。深緑のダウンコートに、頭にはかぶりをものを中途半端にかぶっていた。赤やら青やら黃が混じった不思議な瞳がじっと見つめてくる。


 にしても何だ、この違和感。人間じゃない?気配が魂がバラバラ。私の目には多種多様な魂の形が見えるけど、初めて見る。こんなグチャグチャな不明確な魂の形を。


「よぉよぉよぉ、がんま様の相手はてめぇらか!2対1でかかってこいよ、雑魚が!!」


 プラス、口調もひどく悪い。柄悪いヤンキーみたい。右手の親指を立て、首を空で切り下へ振りかざす。愛らしい見た目と幼い声で、態度悪く言い放った。


「がんま様はγ=ヘンプ。ヘンプと呼ばねぇとぶっ殺す。が、今から殺すやつに行っても仕方ねぇか!!!」

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