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君と僕の捕縛世界  作者: 宝来來
試練編
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先生の講義

 そういえばこんな道通ったなぁと思いながら、ファトの後ろを僕はついて行く。禁書庫を訪れるのは入学初日以来かもしれない。大概僕の行き先は裏庭、教室、食堂、屋上、それと秘密基地。


 秘密基地はガブリエルさんが勝手に呼称しているだけで、ただの職員寮の部屋を指す。ガブリエルさんには愚痴を聞かされ連行されるだけといった、なんともくだらない要件でよく行くのだ。


 ともかく、禁書庫なんてかの双子の件以来の訪れである。特に意味もないが周囲を見回してみた。授業中だから当然か人気が全くない。


「なあ、ファト。さっき言ってたまだ間に合うってのはどうゆうことなんだ?」


 授業終了してなくて、人気がなくて良い。なら発言した意図もわからない。とっくにわかりきっていることだ。間に合うってのは時間……?前は急げとは言うけど………


「見れば分かるかの。ほれ、ついたぞ。開けるのじゃ」


「……………わかった?」


 そうして僕は扉を押し開ける。早速にぎやかな声が聞こえてきた。妙に耳に残る心地の良い天真爛漫な声。それに呆れた様子の特徴的な語尾。


「ねぇー、かまってほしいっす…………ウリっち!ウリっち!ねーえー、暇なんっす。退屈すぎて死ぬっす」


「五月蝿いのです、ガブさん。私にはお仕事があるのです。神様より与えられた役職が………ってよだれつけないでくださいなのです!服もシワが付きますなのです!」


 禁書庫の司書であるウリエルさんがいるのはわかる。けども、なぜガブリエルさんがいる?授業のはずでは…………?


 扉の前で棒立ちする僕が認識されたのは数十秒ほどかかってしまった。その間ずっと、じゃあっていた二人。ガブリエルさんが自分より小柄なウリエルさんにしがみつきねだり、ウリエルさんが必死に引き剥がそうとする。僕は空気だった。


「あれぇ?あれれれれ?そこにいるのはラグっちっすか?」


「授業中にくるとはサボりなのですか。駄目なのですよ、でなければこのガブさんみたいになっちゃうのです」


 ウリエルさんはあっという間にすっとぼけ力の入っていないガブリエルさんを引き剥がした。ガブリエルさんは背中からずっこけてたが。


「ちょっと気になることがあるんです。ウリエル先生、知恵をお借りしたいのですが……………………いいですか?」


 怪訝な顔をしていたウリエルさんは、ウリエル先生に反応し照れたように言った。


「了解なのですよ。授業サボってまで大事な情報なのでしょう?任せろ、なのです」


なんてチョロいんだろう………ガブリエルさん同様に、か。まさに類は友を呼ぶだ。ならご遠慮なく……頼らせてもらおう。上級天使様の知恵を拝借させてもらいたい。


「えーと、僕もよくわからないですけど………こう……空の色を変えられる魔法とかあるんですか?結界魔法とかでちらっと聞いた程度なんですけど詳細は知らないんです」


「グレゴリ内を覆う結界の管理はこの私に一任されているなのです。結界魔法は専門分野なのですから教えますなのです」


 ガブリエルさんを放置し、僕とウリエルさんは向かい合って座る。その際、3冊の本をともに持っていっていた。本は重ねて机の横に置かれ、見届けると同時にわざとらしい咳払いをした。


「ええー、ごほん。結界は目視不能な透明な壁で、結界内の景色及び気象は自由に変えられるのです」


「だから気候が安定して、過ごしやすいんですね。魔力の消耗も激しいだろうし…………流石です」


 素直に感心すると、照れますなのですと頭をかいていた。


「……………例えば、緋と蒼の濁った色とか出来ますか?」


「!?」「!?いてぇっす……」


 僕の発言にガブリエルさん、ウリエルさんともに体をピクリと動かした(一人は驚いた衝撃で近くの本に躓き再び転んでいた)。ウリエルさんの表情は曇っており、心当たりがあるようだった。


「えーと、とりあえずなのです。ラグさん、まず質問に答えるのなら可能なのですよ。けどそれをすると色々誤解を生んでしまうのです」


「誤解?」


 普段見慣れないから生徒が異常事態だと動揺してしまうとかだろうか?


「先駆者ーーーーーーいわゆる私やガブさん、ラフさんなどの長寿な天使を指すのですが、その人たちから苦情やら怨嗟やら救援やらが飛んできて、混乱を招いちゃうなのです」


 苦情に怨嗟、それに救援。えらく物騒だな………最悪の大災害とかか?それにしても、怨嗟は少し違う気がする。プラス混乱すると、ますますわからない。歴史に詳しくないとはいえ、事前知識としてレミエルあたりに聞いとけば良かったかな……


「……どうゆうことなんですか?どんなことでもいいんです。とにかく情報がほしいんです」


 言葉をためらうウリエルさんに真剣な眼差しを向けて気持ちを表す。ファトと僕が死ぬ未来を見て、こわくなった。僕が死んでその後は?二人はどうなった?みんなは? 


 不安で不安でたまらない。分からないということが未知という事が、全身を支配して探求したがっている。


「…緋と蒼の濁った空は1900年前に休戦となった大戦争で魔力が混じり合った結果の汚染されたものなのです」


 …………ならば、あの現象は大戦争の再来ということなのだろうか?けど<白天楼>は黒くなっていなかったし、悪魔以外の異常生命体………は僕とファとを殺したあの魔獣の手を持ったやつなのか?


 思案し押黙る僕にウリエルさんは冷静に補足の説明をしてくれた。


「正しくは大戦時に悪魔が天使対抗に貼った結界の色なのです。天使の結界の緋と悪魔の蒼を混ぜることにより混乱させようという趣だったと言われてるのです」


 ならばあれは悪魔の結界なのか。白天楼は悪魔の魔法自体には反応しないのか。新たな発見である。


「ちなみにこんな感じなのです。私やガブさんも参戦していたので今でも鮮明に覚えていますなのです」


 近くに積み重ねた本の一冊を開き写真を見せてくれた。僕が見たものとは色が全体的に濃い気がする。


「あ………その、結界というからには天使に対して何らかの効力があったのでしょう?弱体化だとかの。ガブリエルさんやウリエル先生には影響はなかったんですか?」


 僕やファトには効力はなかった。ただ情報が少ないだけで実際には聞いてて気づかなかったりもするものだから。


「効いたのは効いたっす!昔は魔法が2段階までしか出せなかったっすよ」


手を大きく上げ、ウリエルさんに後ろから抱きつくガブリエルさん。先程転び売ったおでこが赤く晴れていた。ウリエルさんは慣れたようにスルーし、補足した。


「上級天使の場合は、なのです。ラグさん達、生徒だと魔法の発動すら難しいはずなのです。魔力が少ない天使は特に、なのですよ」


 魔力の減少を促す結界なのかも。それならば、上級


「でも僕のクラスはオリンピアの血を引くものが多いですし、魔力量の関係なら………それに破壊すればいいだけじゃないんですか?」


「………ラグさんは結界魔法の発動条件を知っていますなのです?」


「確か、術者本人かその依代を中心にしてるんですよね?」


 結構前に授業にやって、寝てた僕にレミエルが熱血に教えてくれたのをよく覚えていた為自然と口に出た。


「その結界魔術、堕落『侵魔』は術者本人がトリガーなのです。そして破壊すれば」


 真剣な面差しで見つめてくるウリエルさんは低い声音だった。思わず息を呑んでしまう。

それほどの重大な情報なのだろうか。


「君臨『終焉の業』が発生してしまうなのです」

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