一度目
緋と蒼が混ざり濁り合う空。
緋の空には天使が舞い、魔法を連発。蒼の空には悪魔が呪術を唱え放つ。緋が光れば、蒼も光る。遅れて鳴る悲鳴、怨嗟、絶叫。残酷で悲惨な小競り合い。
一つ二つと屍が、敵の屍を消し味方の屍を踏んでまで血を流し続ける。その中でよく見知った屍が形を残して、目の前にあった。
それはーーーーー家族のものだった。
突然懐かしい感触が痛みが蘇った。ファトと出会う前、本物だと思わしき記憶の断片。最近はあまり体感しないことだったので、歩き出そうとした足が止まってしまう。頭を抑えはしなかったものの。表情には出なかったと思う。
「主よ、大丈夫か?」
「………ああ、平気だ」
数多くに浮かぶ疑問、それを一つ一つでないと対処しきれない。今は今だ。今ぶち当たる試練に向き合わなければ。そう強く思い、一歩を踏み出した。
「まだ二人は、教室にいるはずだ」
「む?お主を探して学園内を探してるのではないのか?」
「お前知ってていってるだろ。最近僕が飛行系の実技サボることを知った二人はな、探すよりも探させるっていう対策をとったんだよ」
「ふぅむ………一体、なんの意味があるのじゃ?」
「僕結構、一人は好きなんだよ。他人と一緒に行動するってことは耐えかねないことなんだ。だけどレミエルやザドキエルと一緒にいるのは落ち着く。それを互いに決定事項として捉えてるんだ」
こんな会話を交わしながらも全速力で教室へと向かっている。息は上がりはしない。羽で飛んでいるというのもあるけれど…………もちろん周囲に人気はない。
「だから、互いに踏み込んではいけないっているラインが分かるんだよ。それで距離があるっていうのがわかるだろ?」
ファトも薄々察していたはずだ。心の深いところに潜ったり探ったりしない。実際、二人は僕の私情や過去、不可思議な言動を見逃してくれている。その優しさにいつかボロを出して甘えてしまいそうになるけれどそうはいかないのだ。
甘えてばかりではいけない。僕は助けられているのだから、二人を助けなければ。孤独に耐えられる強さを持たなければ。
「……………………口だけではないか、お主」
「勝手に思って決意して、それでも戸惑う自分がいるだけだ。大丈夫だ、いつかは絶対に手にいれる」
目の前で右の拳を握りしめ、改めて思う。が、その視界にファトの顔が急接近する。それに驚くことなく、足をすすめる。不敵に笑った悪魔の顔を僕は深く印象に残った。
「そんな事できない癖に」
耳元で囁かれたその言葉。二度目だが、再び思い知らされたといった感じだ。溜まったつばをのみ、教室へと到着。教室の中から二人の気配がする。どうやら二人で話し合っている……というよりは口論しているようだった。
「無事なようじゃな。他の地点にも今のところは異変はないのじゃ」
「喧嘩の仲裁しなくちゃな」
そう扉に手をかけたーーーーーーが、開かなかった。横に引くタイプの扉なのだがびくともしない。鉄製というわけではなく木製の細かな装飾が描かれているもので、普段から開け慣れたはずの扉。突っかかってるわけでもなく力が弱いだけでもなく、微動だにもしないのだ。何度やっても、だ。
「………おい、ファトなにかお、かしいぞ?……………ファト?」
隣に浮くファトの心核部。革ベルトを貫く牙がファトからはえていた。その背後ファトよりは少し低い空色の髪をした少年がいた。顔はよく見えないが、その異様な手だけが印象に残った。
黒に染まり、獰猛な刃を持った獣のような手。その刃には猛獣の放つ威圧感と緊迫感がある。そして放つオーラは魔力をまとっていた。まさに、魔獣である。
「!!………………………………」
そして僕、ラグエル=フルは心臓をもう片手で一突きにされ死亡した。サリエルの場合とは違い、この生命の終焉を終わらせることは出来ないのだ。
かくして、ラグエル=フルは遊戯終了となった。
NEXT.second world




