失ってから気づく宝物
空を仰ぎ見て、そよ風に当たる。相変わらず、ちょうど心地の良い風が通るものである。授業をサボってまで転がってみた価値があるものだ。そんなことを思いながら、ラグエル=フルことこの僕は大の字に転がり屋上にてぼーっとするのが日課となっていた。大体、飛行授業のときだけだが…………
「相変わらずのサボりか、ラグエル=フル」
視界の蒼天が人影に遮られた。チャラ男ことサンダルフォン=ラックだ。こいつが来たということはもう授業は終わったのか。
「別にいいだろ。君の大好きな相棒もだろ?」
「相棒じゃねぇーよ、オレの恩人だ」
「大好きなのところは否定しないんだね」
「当たり前だ。でも大好きじゃなくて愛してる、だ。オレはメタトロンを愛してるぜ。な?」
そう自信満々にメタトロンへと振り向く。だが、折角僕を起こす時間を待っていてくれていたのにこの行動で先に屋上から去ってしまった。
「照れてんのかー、メタトロンは」
「……………………いいのか、追いかけなくて?」
「まあな、アイツ足早いからな。追いつけねーし、今日はメタトロンは一人になりたい気分みたいだ」
「わかるのか?表情筋ないのに??」
「それはお前だ。だが、長年一緒にいるだけで雰囲気でわかるもんだぜ」
なるほどなぁと頷きつつ、上半身を起こしてすぐ隣で眠っていたファトへと目を移す。珍しく今回は空中でなく地べたで寝ている。こちらはまだ深く寝入ってるようだ。相手が自分のことをよく知っているから、本性を晒すことができ相手はそれを受け止めることができる、か。
まぁこうゆう関係なのだろうとこの短い付き合いで察したけども。ちゃらそうなサンダルフォンがふざけ、メタトロンがあしらう。なんだか凸凹なようで型にはまっている。
「そうゆうもん。なのか…」
「そうゆうもんだろ……………………………??」
ニシシっと笑う顔が突然疑問に埋められた。
「何だいきなり黙って?」
「いや、お前にも愛するべき友人がいるんじゃねぇか?それでわからないって鈍感だぞ?」
レミエルやザドキエルのことを言っているのだろうか……?たしかに僕の大切な宝物で愛すべき……親友だけれども。
「……………でもそう簡単にわかるもんではないだろ?」
以前も言ったが、自分の他のことで手一杯な僕なのに周りに気を回している暇はあるのか?まあなんとなくこいつはこういうやつだとか、あんなときあれをするんだろうかーとか思ったたりするけども。
「そうだけどよぉ。気づいたときには遅いってもんだぜ?」
「…………なんで遅いんだ?」
何の意味もないがひと呼吸おき、質問に質問で返した。サンダルフォンは上を見上げ、光の眩しさに目を閉じて僕止めを合わせた。チャラ男らしい、不敵な笑みで。
「だってよぉ。人が大切なものに気づくのはそのものを失ってからっていうもんだからな」
はてさて、ジョフィエルとの不思議な邂逅をとげて1週間間だって、僕はさっきまでサンダルフォンと話していた。そして適当な魔で区切り別れを告げ屋上にとどまり続けていた。午後の実技授業も終わって二人の合流したいところだったけれど。すぐに帰ればよかったもののそうもかなかったのだ。
「……………おい、ファト。ファト、ファト」
「んん…んぁ、なん……じゃ、ぬしよ?そんなに名前を呼ばれるとは嬉しい限りなのじゃ………じゃ、おやすみなのじゃ」
「寝るんじゃない。緊急事態だ」
「なんじゃぁぁ、ふぁぁ?」
背伸びと欠伸をしながら体を浮かせた。そして半開きの眠たげな蒼天の蒼の瞳を向かせる。それに対して僕は序盤と同様空を仰いでいる、だけでなく唖然としていた。目の前の現実を夢のように思えていて、俄然とした恐怖がある。
これは何なのだ、一体何が起こっているのかと。ファトも僕の目線の矛先に気づき、つられてみる。
「なんじゃ、主人よ。あれはなんじゃ?」
「僕が知りたいよ……」
僕とファトの目線の先の空。深かったり鮮やかだったりの広大な雲一つない蒼ーーーーーーのはずだが、視界を埋めたのは緋だった。
血液のように真っ赤な緋。その一色のみに染められた空はまだ知らぬ【魔界】を創造するものだった。ここに漆黒の烏や蝙蝠が舞えば、完璧なのだが……………て、そうゆう問題ではなく。なぜこのような現象が起きているのか、だ。とりあえず嫌な予感がする。この緋はきっと危険だ。
「合流するかの、宝物共と」
「そうだな。急ぐぞ、ファト…………??」
ぶつんーーーーーーーーー




